90話 入学試験・振り返り
入学試験は終わった。僕達は合格者に合格通知を、不合格者には不合格通知を送った。
「ふう……」
何とか落ち着き、コーヒーを飲んでいた。すると、ヴァンダがやってきた。
「お疲れ様でした。いかがでしたか?」
そう聞くヴァンダ。
「いや、何と言うか、刺激的な試験だったよ。集まった種族が多いからね」
僕は言った。
「そうですね。まるでお祭りみたいでしたね」
ヴァンダはそう言った。イマイチ表情が掴めないが、楽しかったのだろうか。
「さて、振り返りと行こうでは無いか」
そう言って、シルヴィアさんがやってきた。アーダちゃんとブランカ師匠もだ。ドロテアとアドリアンさんもやってきた。
「結構色んな連中が居たね。それでさ、結局誰が一位だったわけ?」
そう聞くドロテア。
「ん、まあそれは文句なしに、エルメという子だな」
僕は言った。
筆記試験91点。実技99点。これに魔術、飛行で20点を加点し、210点。そもそも200点を超えたのは彼女一人だし、ぶっちぎりの一位だ。
「まあ吸血鬼は能力が高いからな。当然だと言えるだろう」
シルヴィアさんは胸を張った。
「ん? しかし吸血鬼は太陽に弱いのではなかったか?」
そう聞くドロテア。
「太陽避けのローブを着ていたのだろう。貴重だが、そういうものもある」
シルヴィアさんはそう言った。
確かにエルメは、黒いローブを来ていたようだ。顔も良く解らなかった。とはいえ、実力は確かだろう。
「他にはどんな者が居た?」
そう聞くブランカ。
「2位はゴブリンのユリアナさんですね」
僕は言った。
「ゴブリン? 本当か? 考えられないが……」
驚くアドリアンさん。
「だよねえ。ゴブリンなんだよね? 常識的に考えて、高得点が出せるとは思えないんだけど……」
そういうドロテア。
「まあ僕もゴブリンが2位と言うのは意外だったけどね。筆記試験は100点満点、実技も70点で、魔術も使えるみたいだし、文句なしの2位だね」
僕は言った。
「ゴブリンを侮るものではないぞ。稀にだが、とても頭のいい奴や、力の強い奴が生まれることはあるのだ。数が多いしな」
シルヴィアさんはそう言った。
「ユリアナさんなら聞いたことはありますよ。天才的なゴブリンだとか」
アーダちゃんはそう言った。
「それで三位は?」
ヴァンダが聞いた。
「三位はヤコポというダークエルフの男だね」
僕は言った。筆記80点、実技86点に魔力加点10が付いた。
「げっ……、あいつか……」
ドロテアがそんな反応をした。
「知っているのか?」
そう聞くアドリアンさん。
「そりゃ知ってるよ。ヤコポって言えば、そこいらじゅうの女の子に声をかけまくる変態男だしね。あー、今からでも不合格にできない? フェイ」
無茶を言うドロテア。
「冗談じゃないよ。素晴らしい逸材だしね。多少の素行の悪さは気にしないさ」
僕は言った。
「ちなみに人間の合格者はいないのか?」
ブランカ師匠が聞いた。
「もちろんいますけど、大分下位になってしまいますね。異種族ばかりですよ」
僕は言った。
「そうか。アルパの連中が聞いたら卒倒しそうだな」
師匠はそう言って微笑んでいた。