66話 出航
僕達は、いよいよグランテイルへと向かうことになった。
グランテイルは、ファーランドから船に乗り、行くことになる。端的に言えば島だ。とは言え、かなり大きい地域で、たくさんの魔族が住んでいるらしい。
「気を付けてな、フェイ殿」
「気を付けてください、フェイ様」
レフさんとバレンティナさんが見送りに来てくれた。
「ええ、行ってまいります」
僕はそう言った。何が待ち受けているのかはわからない。というわけで、期待と不安が半々だ。
「では、参りましょうか。錨を上げよ!」
オスカルさんが命じた。
錨が上げられ、帆が開かれ、風に乗って船は進み始める。僕にとっては初めての船旅だ。アルパでも船は良く見たけど、遠くまで船で行ったことはない。
船はぐんぐんスピードを上げ、大海原に漕ぎ出した。
「速いね! これは凄い!」
興奮しているドロテア。
「ふむ、船は初めてだが、良いものだな」
そういうアドリアンさん。二人とも船に乗るのは初めてらしい。
「やあドロテア嬢。楽しんで頂けているかな」
オスカルさんがやってきた。相変わらずでかい。
「あ、魔王さんだ。やっほー。それでさ、グランテイルってどんなところなの?」
そう聞くドロテア。
「……ふむ。あらためてそう聞かれると、何と答えて良いのやら」
悩む魔王様。
「私の記憶が確かなら、かなり貧しい土地と聞いておりましたが」
アドリアンさんはそう言った。
「まあ、貧しい土地ではあるな。食料があまり育たず、争いの多い土地ではあるから。しかし最近では、色々な産業が発達しては居るのだがな……」
そういう魔王様。