53話 シギスの故郷
城壁の修復は思ったよりも長引いた。完全に一日がかりだ。大幅に破壊されていたから仕方ない。
修復を終えると、完全に夜になっていた。一応の警戒は立てつつ、兵士たちに休息を与えることにした。もちろん、僕も休まねばならない。
「素敵な場所ですわね」
そう言って、紙に絵を描くカンデさん。
「その絵、どうするんです?」
僕は聞いた。
「もちろんサロンの皆様に見ていただきますわ。ふふ、楽しみ!」
そう言うカンデさん。
見回りをしていると、シギスが僕を見つけたようで、近づいて来た。
「隊長。良いワインが手に入ったので、飲みませんか」
そう言うシギス。
「僕はあまりお酒は……、まあ、少しなら良いけど」
僕はそう言った。
「じゃあ、そこの小屋で」
そう言うシギス。
その小屋は誰も住んでいないようだ。
ワインを入れ、水で薄めるシギス。基本的にファーランドではそういう飲み方をする。
「シギスはどこ生まれなの?」
僕は聞いた。
「私はファーランド南部の、ジャムルという街ですね」
そういうシギス。
「これから行くところというわけか。しかし何故コーネリアに?」
僕は聞いた。
「俺の家は貧しくてね。遊牧してたら軍に誘われたのさ。隊長こそ、何故コーネリアに?」
そう聞くシギス。
「まあ僕も似たようなものだけどね。エリクサーの材料を集めるという目的はあったけど」
僕はそう言った。
「エリクサーねえ。そんなもんできるんですかい?」
そう聞くシギス。
「どうかな……。まあ今は、ファーランドを助けないといけないけどね」
僕はそう言った。
「ここはなかなかいい国だぜ。ま、ちょっと軍隊が頼りない気はするけどな……。この戦いが終わったら引っ越そうかな」
そう言うシギス。
「ファーランドで暮らしたいの?」
僕は聞いた。
「元々こっちが故郷ですからね。隊長はずっとコーネリアで?」
そう聞くシギス。
「いや、そうもいかないね。材料を集めないといけないし……。ファーランドは豊かだから、商売をするには良いかもね」
僕は言った。
「へえ。だったらさ、この戦いが終わったら、こっちで商売したらどうですか。そんで俺を雇ってくれたら完璧だ」
そんなことを言うシギス。
「はは、良いかもね。でも姫様が怒るんじゃないかな」
僕は言った。
「そうかもしれませんね……。それじゃあ、そろそろ陣に戻ります。隊長も、酒はほどほどにね」
そう言ってシギスは出て行った。まあ僕は、そんなにお酒は飲んでないけど。