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不遇の錬金術師  作者: 秀一
第三章 海の国 ファーランド共和国編
52/146

52話 魔剣


 ハイランドは後方の城壁が壊されていた。あのゾンビがやったのだろう。

 

 兵士たちを動かし、城壁を修復する。少し時間がかかるだろう。僕も煉瓦を運んだりして働いていた。

 

「少し、よろしいですか?」

 そう聞く少女のエルフ。セラさんのお供だ。

「何か?」

 僕は聞いた。

「セラ様が用があるという事です。急ぎはしないそうですが」

 そういう少女。

「わかりました。ではしばらく待つように」

 僕は言った。

「はい」

 そう答えて少女は去って行った。

 

 僕達は城壁を直していった。そう言う仕事はあまり得意ではないコーネリア兵だが、まあそういうこともあるだろう。兵士たちも悪態をつきながらもやってはくれる。

 

「やれやれ、大工の真似事とはな」

「仕方ねえだろ。ほら動け」

「へいへい……」


 兵士たちも難敵と戦って疲れているし、休ませたい。欲を言えば、酒でも飲んでのんびりして欲しい所だが、それも少々危険だと思う。いつ敵に襲われるかわからないからだ。

 

「隊長、こちらはほぼ終了です。セラ殿が用があるようですし、行ってあげたらどうです」

 シギスがそう言った。

「わかった。後は任せるよ」

 僕はそう言った。

「了解です」

 シギスはそう答えた。

 

 僕はハイランドを歩いていく。山奥の寒村と言う趣だ。木造の家が多い。エルフは森に住むことが多いが、ここのエルフや人間たちは家に住んでいるようだ。

 

 僕はセラさんの屋敷に行った。質素だ。飾り気は無い。その奥の部屋の中央に、セラさんが座っていた。横に二人のお供、少年と少女が居る。

 

「セラさん、僕に用事とか」

 僕はそう言った。

「フェイ君、よく来てくれた。これから共に旅をすることになるだろうが、その前に君に見てもらいたいものがあってね。サビン、例のものを」

 そう言うセラさん。

「はい」

 少女が答えた。彼女はサビンと言うのか……。サビンは、奥に入り、黒く飾りのついた箱を取り出した。その箱をテーブルに置いた。

 

 サビンが箱を開けると、中には古いボロボロの剣があった。

 

「これは?」

 僕は聞いた。

「私の剣だ。しかし今はもはや力を失っている。錬金術師君、この剣の力を取り戻すことができるかね」

 そう言うセラさん。

 

 僕はその剣を見た。

 

 ボロボロだ。刃はこぼれ、ホコリまみれだ。中には、黒い宝石が埋まっているようだが、それも輝きは失われている。僕は埃を払い、剣の素材を探る。

 

 ……わからない。僕の知識外だ。

 

 僕は本を取り出した。鉱石素材についての本がある。僕はそれを読み、探る。

 

 世界中のあらゆる鉱石を網羅した本。だがそれをいくら調べても、見つからない。

 

「ううむ、この素材は一体?」

 僕は聞いた。

「私も詳しくは知らん。古代エルフの錬金術師が作り出した魔剣だということしかな」

 そう言うセラさん。

 

 ――魔剣。

 

 かつて、神だった存在を封印したとも、魔王を封印したとも言われるが、その剣を手にしたものは世界を滅ぼすとまで言われる、究極の武器。

 

 かつて古代エルフの錬金術師は、それを作り出し、破滅をもたらしたと言われている。 錬金術師にとっては憧れであり、そして最大の禁忌でもある。

 

「まさか魔剣とは……。私の師匠は、魔剣にだけは絶対に関わるなと言っていましたが」

 僕はそう言った。

「君の師匠は正しいかもしれんが、この剣は危険な剣では無いよ。私としては、力を取り戻してほしいものだが」

 そう言うセラさん。

 

 僕は再度、その剣を見た。中にある宝石は美しいようだが、まわりの金属はもう傷んでいて、取替が必要だろう。

 

「もしこの剣を使うなら、大々的な修復が必要ですね。やってみましょうか」

 僕はそう言った。

「ありがたい。材料は用意してある。トーマ」

 セラさんがそう言った。

「はい」

 少年が答えた。彼はトーマのようだ。奥に行き、金属の塊を持ってきた。

 

「あまり良い素材では無いが、まあ仕方ない。やってみてくれませんか」

 そういうセラさん。

「わかりました」

 僕は答えた。

 

 本来、魔剣ともなれば魔法伝導率の良い素材を使いたい。とはいえ、それは難しい。今回使うのは普通の鋼ようだ。とはいえ、質は良さそうだ。

 

 奥にあった炉を使い、温度を上げて行く。まずは、魔剣の掃除から。不明な金属を溶かし、排除していく。もったいないが、仕方ない。

 だが、その時だった。魔剣の宝石が光ったかと思うと、突然僕の手から血が噴き出した。

「うわあああああ!?」

 混乱する僕。凄まじい痛みが手に広がる。

 

「! 静まれ! ジェイク!」

 叫ぶセラさん。魔剣は力を失い、静かになったようだ。

 

「すまない、フェイ君。この魔剣は凶暴でね……。君の行動を攻撃と見てしまったようだ」

 そう言うセラさん。

「うぐ……、そうですか……」

 僕はひとまず、応急処置をする。アルコールで消毒し、包帯を巻いた。

 

 さて、どうしたものか……。

 

「困りましたね。これじゃあちょっと、手に負えませんよ」

 僕は白旗を上げた。

「さすがに無理だったか……。すまないな……」

 謝るセラさん。

 

「いや、これで諦めたら面白くないですし、もう少し、優しくやってみます」

 僕はそう言った。

「無理はしなくていいのだが……」

 セラさんはそう言うが。

「いえ、大丈夫です。今のは少々乱暴すぎたと思うので」

 僕はそう言った。

 

 僕は再び魔剣を見つめた。以前と変化は無いが、禍々しさを感じてしまう。

 

 僕は魔剣の金属の排除は諦め、鋼によるコーティングをかけることにした。剣を鋼でカバーし、修復する。

 

 真っ赤になった鋼を乗せ、塗っていく。剣は別に嫌がっては居ないようだ。僕は成型し、叩いていく。水で冷やし、また焼きを入れ、剣を修復する。

 

 ……何というか、正直かなりいびつな感じになってしまったが、まあ仕方ないだろう。

 

「一応、出来ました。少々不格好ですが……」

 僕は剣を渡した。

「ふふ、本当に不格好」「そうだね」

 笑うサビンちゃんとトーマ君。

 

「構わんよ。剣が暴れなかったという事は、君の仕事が間違っていないという事だろうからね」

 そう言ってセラさんは剣を受け取った。

「ちなみにその剣、ジェイクと言うのですか?」

 僕は聞いた。

「それは真名。仮の名前はミスティコと言う。もっとも、君が新たに名付けてくれても構わんがね」

 そう言って剣を振り、具合を確かめるセラさん。気に入ってくれたようだ。

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