51話 君は何を望む?
巨大なゾンビを撃破すると、敵はすべて消滅したようだ。僕達は死体を片付け、埋葬した。
「ありがとう。君たちは……?」
そう聞くエルフの剣士。
「お会いしとうございました。私はアドリアンと申します。龍人族です」
そう名乗るアドリアンさん。
「そうでしたか。龍人族とは、何とも懐かしい響きだ……」
そう言うエルフ。目はやはり見えてないらしい。お供に引かれ、椅子に座った。
「セラ様。私はダークエルフのドロテアです」
ドロテアはそう言った。
「そうか、南の……。会えて嬉しいよ」
そう言ってうっすらと笑顔になった。この人が剣聖、セラさんなのだろう。
よく見ると女性のようだ。エルフはみんな美しいからイマイチ男女の見分けがつかない。
金色の長髪と長身、スマートだ。珍しい飾りの服を着ている。
「セラ様、私は錬金術師のフェイと申します」
僕は恭しくそう言った。
「ほう? 錬金術師とはな。珍しい響きだ……。そしてもっと懐かしくもある」
セラさんはそう言った。
「懐かしい?」
僕はそう聞いた。
「昔、世界を救ったエルフが居てな。彼女もまた、錬金術師だった。ずいぶん昔のことになるが……。あの頃はまだ、私も目が見えていたし、エルフもたくさんいたものだ……」
セラさんはそう言った。本当に気が遠くなるほど昔の事なのだろう。
「素晴らしい剣術でした。よろしければ、私に指南してくださらんか」
そういうアドリアンさん。
「ふふ、そう言われても、私では指南などできませんよ。自分なりの剣術を模索してください」
そう言うセラさん。
「そうですか……」
残念そうにするアドリアンさん。
「今このファーランドは危機にあります。今こそその剣で、私達に力を貸していただけませんか?」
僕はそう言った。
「見ての通り、私は目が見えない。役になど立てんよ」
そう言うセラさん。
「……そんなことはありません。あなたの知識も、力も、そして失礼ながら名前も、必ず役に立ちます。お願いです。どうか私達に力を貸していただけませんか?」
僕は重ねてそう言った。
「……フェイ君だったかな」
そういうセラさん。
「はい」
僕はそう答えた。
「君は何を望む?」
そう聞くセラさん。
何を望むか、か……。大事な問いだ。そして難しい問いでもある。僕は、どうしたいんだろう?
「多くは望みません。ただ、僕は、平和が欲しい。みんなが安心して暮らせる世界が欲しいんです」
僕はそう言った。
「……まるで子供の頃の私みたいな答ね。……、気に入ったわ。あなたに力を貸しましょう」
セラさんはそう言った。