47話 ドワーフの親子
一日休息し、僕達コーネリア王国軍は、北へと向かった。
海の沿岸を進軍していく。街道が整備されているので、移動は速く、スムーズだ。
進んでいくと、城壁が見えてきた。
「あれは?」
僕は聞いた。
「あれはイリスの街や。ファーランドでも最も豊かな街やで」
そういうカンタンさん。
聞けば、ファーランドで最も重要な街らしい。強力な海軍があって、今回も敵の攻撃を跳ね返したとか。ただ、独立心が強く今回の危機にもあまり動いてはくれなかったらしい。
「ひとまず、あそこで休んで行こか」
そういうカンタンさん。
「大丈夫ですかい? 攻撃されるんじゃ」
シギスが言った。
「心配ないわ。あそこにはワシの顔が利くからな」
カンタンさんはそう言った。
カンタンさんは悠々と門へと歩いていった。門番と話し合っている。そして手招きした。
僕は馬を降り、門に歩いていった。
「大丈夫やで。ただ問題は起こさぬようにとのことや」
そう言うカンタンさん。
「そうですか。みんな! この街で休んで行こう!」
僕は叫んだ。
僕達はぞろぞろと街の中に入った。住民たちからはかなり怪訝な顔をされたが、まあ仕方ないだろう。
兵たちは解散し、思い思いの場所に散って行った。
「フェイ、あんたはちょっと責任者に挨拶してもらうで」
そういうカンタンさん。
「わかりました」
僕はそう言った。
大きな屋敷が、街の中央に立っている。僕とカンタンさん、ドロテア、アドリアンさんの4人は、そこへと入った。
そうするとドワーフが一人来て、いきなりカンタンさんに掴みかかった。
「おいカンタン! どういうことだ! 敵兵をこの街に入れるなど!」
怒るドワーフ。
「待て待て待てや。敵ちゃうで。味方やんか」
そういうカンタンさん。
「そうですよ。離してください」
僕は割って入り、何とか離させた。
「ふん! わかるものか。問題が起こったらどうするつもりだ!」
叫ぶドワーフ。
「相変わらずケツの穴の小さいやっちゃな。大体、このままファーランド城が落ちてたらこの街も危なかったやろ。感謝すべきやで」
そういうカンタンさん。
ドワーフは憤然やるかたないという感じで、ソファーに座った。頭を掻き、やれやれと言う感じだ。
「……まあ、全責任をお前が取ると言うなら別に構わんがね……。少なくとも、明日には出て行ってくれよ」
そう言うドワーフ。
「まあ、長居はしませんよ」
僕はそう言った。
「そうあってほしいもんだがね。それでお前ら、これからの予定は?」
そう聞くドワーフ。
そういえば、予定はどうなってるのか。僕にはよくわからない。僕がわからないとダメな気もするけど。
「北部にあるハイランドの救援や。お前らは力を貸してくれんのか?」
そう言うカンタンさん。
「冗談じゃない。この街に滞在させるだけで十分だろ。……まあ、ハイランドの救援には行かないといけないだろうがな。あそこはゾンビ共が多くて近づけんぞ」
そう言うドワーフ。
「お父様、一体何事ですの?」
そう言って、螺旋階段を降りてきた少女。彼女もドワーフなんだろうけど、ドワーフの女性は人間とあまり見分けは付かない。背は小さいけど。しかも白い綺麗な服装を着ている。
「カンデか。今は商談中だ」
そう言うドワーフ。
「商談? 軍人ではないのですか?」
カンデと呼ばれた少女はそう聞いた。
「軍人だぞ。そうだな? ええと……、お前の名前は?」
そう聞くドワーフ。
「フェイと申します。錬金術師です」
僕はそう名乗った。
「まあ、錬金術師! 素晴らしいですわ。私錬金術師の方と会いたいと思っていましたの。よろしければ、私のサロンにいらしてくださいな」
そういうカンデさん。
「フェイ殿。ここに滞在することは一応許可してやるから、娘の相手をしてやってくれ」
呆れたように言うドワーフ。
「そういうことなら、構いませんが」
僕はそう言った。
「嬉しいですわ。ささ、こちらにどうぞ、フェイ様」
そう言ってカンデさんは手招きした。