表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇の錬金術師  作者: 秀一
第三章 海の国 ファーランド共和国編
46/146

46話 深窓の令嬢(後編)


「失礼します」


 僕はバレンティナさんの部屋に入った。レフさんから、そうするように頼まれたのだ。何か話でもしてやって欲しいと。

 

 僕は紅茶を持って入った。二人分だ。

 

 彼女はつまらなそうに窓の外の海を見ていたが、紅茶の香りに気づいてこちらに振り返った。

 

「まあ、良い香り。頂いても?」

 そう聞くバレンティナさん。

「ええ、どうぞ」

 僕は渡した。

 

 紅茶を飲んだ。これはコーネリア産の紅茶だ。お茶は温暖であればどこでも育つが、元々は山岳地帯のものだったらしい。現在のアルパ大陸ではどこでも作られている。

 

「良いお茶ですわ。ありがとうございます」

 そう言うバレンティナさん。

「いえ。大したことはできなくて、申し訳ないですが」

 僕はそう言った。

 

「あなたは?」

 そう聞く彼女。

「アルパ生まれのフェイと申します。錬金術師です」

 僕はそう言った。

 

「まあ、錬金術師? 珍しいですわね」

 そう言うバレンティナさん。

「良く言われます。色んなものを作るのは楽しいですよ」

 僕はそう言った。

「どのような物を作られるのですか?」

 そう聞く彼女。


「ん、そうですね。食べ物、日用品はもとより、薬や武器、鉱石の生成、後は魔道具の類を作ることもありますが」

 僕は言った。

 

「薬ですか……。私の病気も治らないものかしら」

 そう言うバレンティナさん。諦め顔だが。

「モノによっては、役に立てるかもしれませんが……」

 僕は言った。

 

「私は生まれつき心の臓が弱く、問題があるようで。お医者様も、生まれつきだからどうしようもないって。どこまで生きられるかわからないのですわ……」

 そういうバレンティナさん。

 

 心臓病か……。僕は師匠に貰った、病気の本を調べ始めた。

 

「それは?」

 バレンティナさんが見つめる。

「病気の本ですよ」

 僕は言った。

「まあ。本をお持ちなのですか?」

 そう聞くバレンティナさん。

「ええ。と言っても、あまり面白い本では無いですけどね」

 僕は言った。

「とんでもない! 見た事のない本を読むのは何よりの楽しみですわ。どうか、一つ読ませてくださいませ」

 そう言うバレンティナさん。

「それでしたら、食べ物の本でもどうでしょうか」

 僕は渡してみた。

「喜んで!」

 本当に喜んでくれるバレンティナさん。

 

 僕は病気の本を読んだ。はっきり言って、心臓病を治す薬は存在しないようだ。症状を和らげる薬を作ることはできるが、摂り過ぎると逆効果になる。

 僕は壺を取り出し、素材の草を入れた。魔力をともし、薬を作った。

 

「まあ、それが錬金術? まさに魔法ですね」

 そういうバレンティナさん。

「まあ魔法ではありますね」

 僕はそう言って、青い薬を取り出し、瓶に入れた。

 

「一日一回、小さじ一杯まで……、症状を抑えることができます。ただ摂りすぎると、心臓の動きを弱めすぎ危険です。こんな薬しか出せないのは申し訳ないですが……」

 僕はそう言った。

「まあ、そんな薬が!? 素晴らしいじゃないですか」

 そういうバレンティナさん。

「量もそんなに無いですから、大事に飲んで頂きたいです」

 僕は言った。

「ええ、大事にします。ありがとうございます。あなたはまるで天使様ですね」

 そういうバレンティナさん。

「そんな、とんでもないです。僕なんて、あまりお役に立てず……」

 僕は言った。

 

「自信を持ってください。私に希望をくださったのですから……。あなたはきっと、色んな方の役に立つ素晴らしい方ですわ。少なくとも、私はあなたに感謝しますし。自信を持って下さらないと、私が情けないじゃないですか」

 そういうバレンティナさん。

 

「そうですね。すいません」

 謝る僕。

「ふふ、謝らなくて良いのですよ。私からも、何かお礼をできると良いのですが……。あ、そうだ」

 そう言ってバレンティナさんは本を取り出した。

 

「世界の様々な産物を書いた本ですわ。良かったら、使ってください」

 そういうバレンティナさん。

「よろしいのですか? あなたの大事な本では」

 僕は言った。

「私が読んでも時間つぶしにしかなりませんわ。あなたがお役に立ててください。私のようなものでも、役に立てるなら嬉しいですわ」

 そういうバレンティナさん。謙虚になられると心苦しいな。僕も、もっと自信を持つべき、か……。

 

「ありがとうございます。必ず役に立てますよ」

 僕は自信を持ってそう言った。

「ふふ、頑張ってくださいね」

 そう言って彼女は、静かに笑っていた。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ