45話 深窓の令嬢(前編)
ファーランド城は、ちょっとしたお祭り騒ぎになった。
と言うのも、海の魚を焼いたからだ。ドロテアの魔法もあって、ファーランド城の前は魚にあふれていた。それを捕獲したのだ。
「うめえ! うめえぞ!」
「湖の魚やコーネルディップも良いけど、やっぱ海の魚は最高だな!」
「これで酒がありゃ文句ねえんだがなあ」
お酒は持ってきていない。任務中だしね……。本当はちょっと悩んだのだが、酔って城が陥落したら大変だから仕方ない。
「皆様、よくぞいらっしゃいました」
見ると、すごい美女が現れた。見たこともないほどの美しさだ。ブロンドの長髪に黒い瞳。宝石で飾り、贅を凝らしたドレスを着ている。
静まる会場。みんな見とれている。
「バレンティナ様。このような所においでとは」
レフさんが言った。
「私もここで守られているだけではつまらないですわ。せめて、皆さまを応援したいと思いまして……」
バレンティナと言う女性は、そう言った。
「レフさん、この方は?」
僕は聞いた。
「バレンティナ嬢は、この城の姫様ということになるかな。しかし生まれつき病弱で、この城から出ることはかなわんのだ」
レフさんはそう言った。
確かに、美しいとは言っても儚い美しさと言う感じで、健康とは無縁そうだ。弱弱しい体つきをしている。無理をしてここに来ているのだろう。
「お嬢様、部屋にお戻りください」
メイドの女性が走ってきてそう言った。
「もう少し、良いではないですか」
バレンティナはそう言った。
「いけませんわ。お体に障ります」
メイドさんはそう言った。
「ちなみにどのような病気です?」
僕は聞いた。
「ワシも詳しくはない。おそらく、君が治せる類では無かろう」
そういうレフさん。
確かに、錬金術師は医者ではない。この豊かな国の主城で治せないのだから、僕にはちょっと難しいのだろう。
結局、バレンティナさんは部屋に戻って行った。