28話 奇襲攻撃
僕達は要塞を出て、北東へと向かった。
恐らく、敵はその方向に居るはずだ。警戒しなければならないが、急がなくてはならない。馬を走らせ、僕達は疾駆した。
途中、農家の男性が居た。農地は略奪され、荒れ果てている。
「こんにちは、大丈夫ですか?」
僕は聞いた。
「ああ、国の人かい。ダークエルフが、ウチの畑を荒らしていきやがったんだ」
そういうおじさん。
「ダークエルフ? 確かなのか?」
シギスは聞いた。
「間違いねえ。ありゃどっからどう見てもダークエルフだった。でもおかしいな。あいつら南方に住んでるはずなんだが……」
そういう農民のおじさん。
ダークエルフは、南のエルティアという森の中に住んでいる。コーネリアとは敵対しているが、南方要塞を抜けなければこちらには来れないはずだ。
「まずいな隊長。こりゃファーランドの連中が絡んでるんじゃねえか」
シギスはそう考えた。確かに、ダークエルフはファーランドの領内を通って来たに違いない。ファーランドはコーネリアを裏切ったのだろうか? 十分にあり得ることだが、断言はできない。
「まあ、こういうこともあるだろう。それより敵を追おう、シギス」
僕は言った。
「おう」
シギスは答え、手を上げた。騎馬隊をまた走らせる。
僕達は走った。いよいよ、敵に追いついた。敵集団はそれほど多くなさそうだ。浅黒い肌の長身、ダークエルフの一団だろう。
「どうします、隊長」
そう聞くシギス。
「悩むことなんて無い。突撃だ!」
僕は命じた。
騎馬の勢いに任せ、一気に突撃する。敵が気付いた時にはもう遅かった。ヒヒーン! と馬が敵を蹴飛ばし、蹂躙していく。
「うわあああああ!」
「きゃあああああああああ!」
大混乱に陥る敵。せいぜい10人ぐらい、こちらは100人の騎馬隊だ。負けはありえないだろう。
容赦なく敵を切り刻んで行くコーネリア兵。あっという間に敵は一人になった。少女のようだ。
「ひい、た、助けて……」
泣き出す少女。ちょっと可哀想だが……。
「隊長、容赦は必要ねえぜ」
そういうシギス。
「いや、捕虜にしよう。できるな?」
僕は聞いた。
「そうですな」
そう言って縄をぶんなげるシギス。
「きゃああああ!」
縄に絡まれ、動けなくなる少女。やっぱりちょっと可哀想かも。