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不遇の錬金術師  作者: 秀一
第二章 湖の国 コーネリア王国編
24/146

24話 トカゲと香辛料


 湖の国の朝は涼しい。

 

 爽やかな風が吹く。まあ、ちょっと湿気が多いので体調を崩す人も居るらしいけど、僕は大丈夫だ。

 

 その日も僕は湖を眺めていたのだが、よく見るとたくさんのトカゲ男が泳いでいた。

 

 ……まあ別に、珍しい事ではない。ここで暮らしているリザードマンは少なくないし、湖の上にある島にはリザードマンしか住んでないらしい。

 

 とはいえ、そういう風でもなく、たくさんの荷物を岸辺に置いて泳いでいるようだ。楽しそうである。

 

 僕は邪魔しちゃ悪いと思い、店に戻った。

 

 太陽が高くなってくると開店する。この店も評判になったし、ファーランド共和国との和平も成立して、国の兵力や経済力にも余裕が出てきたようだ。当然、この店も異様に発展している。ありがたいことだ。

 

「やあ店主さん。良かったら、これどうぞ」

 そう言って常連のおばちゃんが腸詰をくれた。

「いつもありがとうございます」

 僕は受け取った。しかし普通の腸詰とはちょっと違うようだ。赤いし、ちょっとグロい。

「これは?」

 僕は聞いた。

 

「内臓と血の入ったソーセージですよ。このあたりでは昔からよく作るんです。お気に召しませんでしたか?」

 そう聞くおばちゃん。

「いや、とんでもない。ありがとうございます。ただ、見たのは初めてだったので、つい」

 僕はそう言った。

「ファーランドとの交易が途絶えて、塩の輸入が止まってましたからね。保存食も作れないんじゃあ、戦争なんてできないと思うんだけどねえ」

 そういうおばちゃん。おっしゃる通りだ。

 

「おばちゃんも戦争には反対なので?」

 僕は聞いてみた。

「そりゃそうだよ。冗談じゃないね。私の夫も兵士だしさ。まあ、今の姫様はあんまり戦争が好きではないみたいだけど、前の王様は酷かったからね。あ、今も王様ではあるんだっけ?」

 そう言うおばちゃん。

 

「まあそうですよね。ファーランドとの和平が成立して良かったですね」

 僕はそう言った。

「ほんとだよ。でもどうして成立したんだろうね? お偉いさんの考えることはわからないよ」

 おばちゃんはそう言った。

 

「グランテイル帝国のせいやで」

 緑のトカゲ男がいきなり店に入ってきて言った。ドミニクではないようだ。まあトカゲ男の違いなんてあんまりないからよくわかんないけど。

「グランテイル帝国? そうなのかい?」

 おばちゃんは聞いた。

「せやで。帝国の連中がファーランドを攻撃しとるらしい。それでファーランドの連中も慌ててコーネリアと和平したっちゅう話や」

 そういうリザードマン。商人だろうか。

「へえ、そうなんだね。さすがリザードマン、物知りだねえ」

 感心するおばちゃん。確かに物知りだな。

 

「ワイはカンタンっちゅう商人や。ドミニクとはまあ友達やな。店主さん、良かったらそのソーセージをくれんか。ワイの好物なんや」

 そういうカンタンさん。

「いいですよ。おばちゃんの作ったものなので、渡しちゃうのはちょっと気が引けますけどね」

 僕はそう言った。

「私は構わないわよ。面白い話も聞けたしね」

 そういうおばちゃん。僕はソーセージを渡した。

 

 むしゃむしゃと食べるカンタンさん。凄く美味しそうだ。

 

「あー、美味いなあ。コーネリアの飯は味がしっかりしてて好きなんや」

 そういうカンタンさん。

「良い食べっぷりだね。作った甲斐があるってもんだよ」

 そういうおばちゃん。

 

「ま、本来は商売に来たんやけどな。何か欲しいもんでもあるか? 色々あるで」

 そういうカンタンさん。

 

 その袋には様々なものがあるようだ。目立つのはスパイス。このあたりでは決して手に入らない極上品の数々だ。

 

「スパイスが多いですね。それを扱ってるのですか?」

 僕は聞いた。

「お、お目が高いな。そうなんや。格安で譲ったるで。銀貨一枚で胡椒一瓶、どや?」

 そう聞くカンタンさん。

 

「あり得ない安さですね。本当によろしいので?」

 僕は聞いた。

「ああ。ま、本音を言うと、ファーランドの状況をあんさんに伝えるのがメインの役目なんやけどな」

 そういうカンタンさん。そういうことだったのか……。

 

「つまりカンタンさんはこの国の人なんですか?」

 僕はそう聞いた。

「いや? ファーランドの商人やで。情報屋はおまけや。それで胡椒は買わんのか?」

 そう聞くカンタンさん。

「もちろん買いますよ。良かったらこちらのシナモンも売っていただけませんか」

 僕は言った。

「お、ええで。そっちも銀貨一枚な」

 そんなわけで、僕はカンタンさんからスパイスを購入した。

 


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