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不遇の錬金術師  作者: 秀一
第二章 湖の国 コーネリア王国編
21/146

21話 尻拭い


 湖の国は、小さい。

 

 端的に言えば、湖が一つあって、その周りが湖の国だ。山を挟んで外に出れば他の国になる。まさに小国だ。

 

 これと言った産物もない。まあ、湖の恵みによって魚は取れるし、米や小麦もたくさん取れるのは事実だが、それぐらいだった。

 

 僕達は東へと向かう。この国の東は大国、ファーランド共和国。

 

 この大陸でも最大最強の国家だ。ベルクランド王国ほどの軍事力こそ持たないが、経済力や人口では圧倒する。人類の国では恐らく世界最強の国家の一つだろう。

 

 共和国だが、王も存在はする。というか、元々王国だったのが平和的に共和国になったらしい。また、商人の力が非常に強く、様々な共同体が融合した複雑な国家だ。諸外国とも海の交易で繋がっていて、技術力も極めて高い。

 

 言うまでもなく、コーネリア王国とは比べ物にならない超大国だ。比べ物にすること自体おかしいだろう。普通月とスッポンを比べない。どっちが上とか下とかいう話ではない。

 

「姫様、お聞きしたい事があるのですが」

 僕は馬上から聞いた。

「なんでしょうか」

 姫様は白馬の上から答えた。

 

「ファーランドはまさに超大国。何故このような国と戦争が始まったのでしょうか」

 僕は聞いた。

「私のクソ親父のせいです」

 断言する姫様。まあそうなんだろうけど。

 

「国王陛下でしたっけ? ていうか、その、答えられないなら別にいいですけど、その国王陛下自体はどうなってるんですか?」

 僕は聞いた。

「ああ、ベルクランド王国に捕まりましたよ。戦争に敗れてね。んで、金貨100枚の身代金を提示されたんで、『煮るなり焼くなり好きにしてください』って言ってやりましたよ」

 そんなことを言う姫様。

 

 ……やはりこの国は何かを間違えている気がする。まあ、ファーランド共和国にせよベルクランド王国にせよ、絶対戦争しちゃダメな相手だろうし、そこと戦っちゃったら自業自得ではあるな。

 

「……ちなみに、王は何の為に戦争を?」

 僕は聞いてみた。

「知りませんよ。まあ若い女の子を捕まえてイチャイチャするんだー、とかほざいてましたけど」

 そんなことを言う姫様。やっぱり自業自得なのかな……。

 

「断言できますが、あれは絶対に王をやってはいけない類の人物でしたな」

 そういうミカエルさん。

「せやな。正直あれはあかんわ」

 そういうドミニク。

 

「まあそういうわけなんで、その尻拭いをする必要があるんですよ。申し訳ありませんね。こんなくだらないことに巻き込んでしまって……」

 そういう姫様。

「いやいや。戦争は駄目かもしれませんけど、和平交渉は大事ですからね。僕も微力を尽くしますよ」

 僕はそう言った。

 

 丘を越え、山に登る。谷には堅牢な城塞。そこには、たくさんの兵士が詰めていた。殺気立った兵士たちが見回りしている。

 

 姫様が門に差し掛かった。当然、門は開かれた。

 

「姫様、ご到着です!」

 叫ぶ兵士たち。歓声が上がる。

 

「ご苦労様。すぐさま隊長を呼びなさい」

 姫様は言った。

「はっ!」

 兵士たちは叫び、隊長が呼ばれる。勲章を付けた壮年の兵士がやってきた。

 

「姫様。よくぞ来られましたな」

 そう言う隊長。落ち着いている。

「和平交渉に参ります。精兵を10人程用意していただけます?」

 そう聞く姫様。

 

「10人? 少なすぎませんか?」

 驚く隊長。

「和平交渉ですよ。戦争に行くのではないのですから」

 そういう姫様。

「わかりました。精兵を用意しましょう」

 隊長はすぐさま、兵士たちの中に戻って行った。

 

 僕は周りを見渡した。かなりの数の兵士だ。コーネリア城にも親衛隊が居たが、これほどの人数では無かった。本城よりも、国境線の警備を重視しているのだろう。

 

「ドミニク、ここにはどれくらいの兵士が居るのかな?」

 僕は聞いてみた。

「んー、確か300人ぐらいやったかな? どこの城塞もそんなもんやと思うで。まあ、平時やともっと少ないけどな」

 そう言うドミニク。

「ファーランドとの国境線は多いので、少なくとも1000の兵士は張り付いてますな。この和平交渉が上手く行かないと、我が国は傾きますぞ」

 そういうミカエルさん。やっぱりこの国危なすぎるんじゃ……。

 

「姫様、集合いたしました」

 そういう隊長。完全武装の屈強な男10人が集まった。

「ご苦労。では参りましょうか」

 姫様はそう言った。東の国境線へと進んでいく。僕達と兵士たちが続く。

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