20話 和平交渉
それから、一カ月が過ぎた。
姫様からは、剣の代金として銀貨30枚を頂いた。これだけあれば当面の資金としては十分だ。
僕は店を訪れる人たちの要望に応え、食堂を開設した。冒険者の酒場と言う感じだろうか。美味しい料理やお酒はもちろんのこと、武具や道具、ポーションも売っているから、とても便利というわけで、相当に繁盛しはじめた。アルバイトの人も増え、経営は軌道に乗ってきた。
そんな折、ドミニクがやってきた。一瞬客がびっくりするが、彼は顔が利くので、すぐにみんな平静に戻った。
「よう。店主居る?」
そう聞くドミニク。
「やあ、ドミニク。よく来たね」
僕は出て行って答えた。
「よう。ずいぶん繁盛しとるやないか。……何か方向性がおかしい気はするけどな。ま、それはええわ。また姫様から呼び出しやで」
そういうドミニク。
「わかった。しかしドミニクも大変だね。メッセンジャーなわけ?」
そう聞く僕。
「まあな。下っ端やさかいな」
そう言いながらも笑うドミニク。トカゲのいい笑顔だ。
僕達は城へと向かった。門番が挨拶する。
「ご苦労様です」
「お疲れ様」
もう大分顔パスだ。
城内も大分覚えて来た。とはいえ、この城を陥落させるのは無理だと思う。堅牢な城だ。
玉座の間には、姫様が居た。甲冑を着ている。
「来ましたか、フェイ」
そう言う姫様。いつになく真面目だ。
「はい。どうかされましたか?」
あまりただ事では無いような気がする。
「実は、東のファーランド共和国から和平交渉のお誘いがありましてね。今からちょっと行って和平結んで来ようと思ってるんですが、フェイにも護衛をお願いしたいと思いましてね」
そう言う姫様。
「それは構いませんが、私は戦力としてはあまり役に立たないかと」
僕は言った。
「ふふ、そうでもないと思いますけどね。でもまあ、こういう事は腕力だけではどうにもなりませんし、フェイ様の知恵も拝借できればいいかなと思いまして」
そう言う姫様。
「店も繁盛しておるようだし、お前もこの国の一員としての自覚を持って欲しいものだ」
そういうミカエルさん。
「左様ですか。まあ、そういうことなら構いませんよ」
僕は言った。
「ありがとうございます。では早速参りましょうか」
姫様はそう言った。
「姫様の御出陣! 御出陣!」
そう言う兵士たち。今回は和平交渉なので、出陣ではないと思うんだけど。
僕達は馬に乗り、東へと進んでいった。




