●過去④●
過去編ラストでした
目覚めてまず目に入ったのは、真っ白な天井だった。何が起こったのかわからない。何で自分はここにいるのか。よく見れば、自分はベッドの上にいた。ベッドの傍らには何やらわからない機材がたくさん。腕にも数本チューブが刺さっている。全身には包帯が巻かれていた。
「病院…か?」
呟くように言った煉は、目覚める前のことを思い出した。
「親子…お袋…兄貴」
煉はチューブを乱暴に引き抜き、ベッドから下りようとすると、全身に激痛がはしり硬い床に倒れてしまった。
「っ……!痛ぇ……!」
「当たり前よ。重傷なんだから」
顔を上げると、呆れた表情のシンディが立っていた。手に持っているカゴからは果物が顔を出している。
「ばあさん……」
「無茶しないことね」
シンディは煉を抱えてベッドに座らせる。
「本来なら死んでおかしくない重傷なのに、本当、頑丈さだけが取り柄よね」
「なあ、ばあさん」
「ん?」
「兄貴達は?」
シンディの表情が一気に曇りを見せた。話すべきか、話さないべきかを迷っているようなものだった。
やがて決心したのか、静かな口調で、残酷な現実を煉に告げた。
「紅太朗と華火は、死んだわ。胸を貫かれて即死」
「そう……か。夢じゃ、無かったんだな…」
改めて、両親が死んだと実感した煉は、涙を流す。
「爛は、意識不明よ。原因がわからない。このまま、一生起きないかも…」
「兄貴まで……」
「今回の件の首謀者は行方不明。地球界とアスタニア界で次元指名手配中よ。そう簡単に見つかるかどうかだけど…」
シンディは申し訳なさそうに顔を伏せる。
「なあ、ばあさん…」
煉は窓の外を眺めながらシンディに言った。
「俺が強けりゃ、親父とお袋は死なずに済んだのかな?」
「……」
「兄貴が、あんなことにならずに済んだのかな?」
「………煉…」
「俺が、弱かったから……なのかな……」
涙を堪えながらも、大粒の涙を瞳からこぼし、煉はシンディにうったえた。
「なあ……ばあさん。俺、強くなりてぇよ」
煉の声は、しゃっくり混じりの声は、シンディの胸を打った。
「俺に、修行をつけてくれ、ばあさん」
「修行を?」
「あの野郎を、殺せるだけの力を。俺を強くしてくれ…頼む」
煉の本気の懇願に、シンディは頷いた。
「いいわよ。ただし、退院してからね」
「ああ」
その後、煉はわずか5日で退院した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
煉は退院してからすぐに、紅太朗と華火の遺骨を墓に修めた。今回の件により死者が多数出ており、まともな葬儀が出来ないのだ。
煉とシンディは火葬だけを済ませ、家があった場所に2人の墓を立てたのだ。
線香に火を着け、静かに手を合わせ、目を閉じる。
「心の準備は出来た?」
喪服姿のシンディが、煉に尋ねる。
「ああ、大丈夫だ。ばあさん、修行はどうやるんだ?」
「簡単よ。ただひたすら、実戦。戦いの中で自分のやり方を見つけなさい」
「期限は?」
「爛がだいたい1年かしらね。だから今回も…」
「2年だ!」
煉がシンディの言葉を遮り、指を2本立てる。
「…地獄を見るわよ」
「覚悟の上だ。勉強も含めてな」
「わかったわ」
それから始まった地獄の日々。毎日が戦闘だった。怪物、魔獣など、化け物は当たり前。時折シンディともやりあった。砕けなかった骨は無い。内臓もいくつ潰れたかわからない。精神も破壊されそうななった。
それでも諦めなかった。
諦めたくなかった。
唯一残っている家族、爛のために。絶対助ける。
煉が固くこころに誓ったことだ。月日はあっという間に流れ、2年が経っていた。
当時14歳だった煉も16歳になり、顔つき、体つきはすっかり大人になっていた。現在4月。煉は高校入学を控えていた。進むのは普通の高校だ。シンディは煉を鍛え終わった後、自分の学園に戻ると言って勝手にどこかへ行ってしまった。
煉は今はマンションに一人暮らしである。家事は全般できるので困ることは無かった。そこから何気無く過ごし、楽しい高校生活を送っていた。
そして煉が高校2年に進級する頃に、シンディからの呼び出しがあったのだ。
内容は極簡単。
エレメント学園に転校しろというものだった。どうやら手続きは済んでいたらしくすぐにでも受け入れ可能らしい。1年ぶりの連絡でここまで勝手なのにはさすがにイラッとしたがしょうがない。クラスメイトとの別れを惜しみつつエレメント学園に転校し、最初に戻るわけだ。
次回、謎の人物襲来!?




