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20.5話 死人の現場

ここで行間モドキを投稿。



董卓軍の兵士が塀の外側に立ち並び、道行く人は何が起こったのかと互いに顔を合わせる。兵士は門の外で中に誰も入れぬ様憮然と立っている。

李儒が住んでいた私邸。

人々が集まっているのはその門外である。当然中の様子は窺う事は出来ず、無理に覗きこむものなら斬られるのは明白である。それを理解している為、遠巻きにしか見れないが。


その私邸の中に居るのは互いに武装した張遼と樊調。

目の前には先刻軟禁されたばかりの男、李儒。ただし死体で、という形である。


「……どゆことやねん」

「分かりませぬ。李儒殿の邸宅が何やら騒がしいと報告を受け、駆け付けると既に……」


張遼が片膝をつき死体となった李儒を観察する。

うつ伏せに倒れ右手には三尺余りの剣。首から血を流している事から自害したのは明らかである。

明らか、であるのだが。


「幾らなんでも不自然やな」

「ええ。嫌疑が掛けられ自宅にて軟禁の旨を受けたとはいえ、李儒殿がこうも早まった事をするとはとても」

「いやそこやない」


は?と樊調は思わず聞き返す。


「そらこいつが簡単に自決するタマやないこともそうやけど。剣、見てみい」

「剣、ですか」


言われて剣を見る。右手で握られた剣には血が付着しておりそれ以外に不自然な点は無い。

樊調はそう思った。が、


「自分で首斬った奴の剣が何で、外側に血が付いてんねん」

「……!」


そこで初めて気が付いた。剣に血が付着したのは確か。だがこの態勢を見る限り自分で首を斬ったのなら、外側ではなく内側に血が付いていないと不自然である。場合によっては外側に血が付く様首を斬れる事もあるが、張遼と樊調は李儒にそんな複雑な死に方をする意味は無いと断定する。


「しかも見てみぃ。首の後ろ、刃が届かん所まで斬られとるわ」

「と言う事は李儒殿は自害では無く殺害され、殺された相手により自決の様に見せ掛ける為……」

「大方そんなとこやろ。ま、殺した奴は阿呆な失敗しとるけどな」

「しかしそうなると何故、蘇胤殿は自害に見せ掛けなかったのでしょうか」

「そこまではウチも知らん。それは見に言った薺か詠にでも考えさせた方がエエやろ。……で、コイツの腰巾着の馬扁は逃げたのは知っとるけど、武官の方は誰が逃げてん」

「……牛補、殿です」

「あンの陰気男か」


張遼は鼻で笑うと居なくなった武官を思い出す。

牛補は腕はそこそこ立ち、何より気配を絶つのが人より巧かった。普段では人が訪ねて来た際は必ず占いを行い、良い結果が出る意外では人とは合わないといった警戒心の強い男であった。


「まあどの道、李儒は自害ってことで収まるやろうな」

「殺害された事を触れ回ると豪族たちに要らぬ勘繰りをされますからな」

「……ホンマ。面倒な事になったもんや」


そうぼやくと張遼と樊調は外へと出て行く。

振り返る事無く出て行く張遼の頭には、あの男の言葉が浮かぶ。



『あの李儒が。あの女一人の躓きさえ無ければ暴君を天上天下のままにしていた謀臣が。こんな容易く攻略される訳が無い』



もしそれが本当なら、アイツの言う事が本当なら。

また何時か"李儒"が目の前に現れるかもしれない。

あの馬扁と言う男が、神坂の言う通り本物の李儒ならば、己の認識以上、且つこの上なく厄介な相手になると張遼は感じ取っていた。


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