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最終章 ユクレシア 完結

*****



それから十年。


セルジュ達が<ユクレシア>に戻ってきた。本来は歓迎されるべきところを遅すぎる!!と家臣達に怒られたセルジュ。それに驚きつつも泣きながら出迎えてくれる家臣達に苦笑。王の準備を待ち、謁見の間に入れば……玉座にラヴィーネだけだった。


「良く戻りましたね、セルジュ」

「ただいま戻りました。父上」


ラヴィーネは我が子の帰還を喜び優しい笑みを浮かべる。


「大きくなったセルジュを見れて私は嬉しいです。立派になりましたね」

「ありがとうございます。これも全て母上のお陰です。……あの……母上は……?」


しかし、セルジュはそこにいるべき母親が居ないことを悲しんだ。セルジュと問いに誰もが沈黙した。


「……ユースティス様は……十年前に亡くなられました」

「「「!?」」」


ユースティスが死んだことに動揺を隠せないセルジュ達。


「どうしてですか!?」

「私も詳しい理由を知りません。ユースティス様は話してくださいませんでした」

「……母上……」


厳しくも優しい母が死んでいたことにセルジュは泣いた。その死に目に会えなかったことも。


「セルジュ、貴方が呼び戻されなかったのはユースティス様の遺志なんですよ」

「え?」


死に目に会えなかったセルジュは悲しんだ。だけど、それがユースティスの遺志であると聞いたセルジュは驚いた。


「ユースティス様はセルジュに世界を巡り、自らの目で見て、自らの足で歩き、満足したときに戻ってくると言っていました。それを達成せずに戻し、玉座に縛り付けるのをユースティス様が嫌ったのです。ですから、ユースティス様の死は国民にも知らされていません。噂に国境は無い、いつかセルジュの耳に入る、と言って隠すよう命じられたのです」

「…………父は……父はどこにいるんですか」

「《ユウラスティア》は既に<エリシュオン>へと帰還している」

ユースティスの命令で動いていた事を告げられ、セルジュは《ユウラスティア》を問い詰めようとする。しかし、《ユウラスティア》はどこにもいない。それを聞けばシューナッツがやってきた。


「!?シュー父!?」

「久しぶりだな、セルジュ」


シューナッツの登場にセルジュは驚いた。


「母上が亡くなったとはどう言うことなんですか!!!」

「………」

「答えてください!!」


シューナッツに詰め寄るセルジュにシューナッツは答えない。


「……ユースティスを殺したのは俺だ」

「!!!……どういう意味ですか」

「事の始まりはユースティスが生まれたときに遡る。全てはユースティスを即位させる為の茶番が周りを巻き込み誇大化させた。その結果がユースティスの死だ。恨むなら俺を恨め」


シューナッツが初めて自分の口から語った。それに全員が驚いた。


「!!!………母上はそれを許さないでしょう。例え、母上が本当の母親でなくても母親はあの方だけです。あの方以外の母親なんて………認めません。あの方を殺した母親なんて……」

「!!……セルジュ……お前……」


恨めと言うシューナッツにセルジュはユースティスを思い出す。ユースティスはそんな事を許すとは思わない。


「知っていますよ。産みの母親が母上を嫌っていたのも殺そうとしていたのも……私に呪いをかけたのも……」

「「「!!!!」」」


セルジュから突き付けられた現実に誰もが戸惑った。話を聞かされて居ない家臣達は特に。


「母上が持つ膨大な魔力を餌に母上を蝕んでいたのも知っています。あの女は母上が解呪するのをわかった上でやったのですから……私に恨まれて当然でしょう」

「………セルジュ………シャーリーは……お前の母親はお前を愛していたんだ」

「愛していた?何を馬鹿な事を言っているんですか?あれは魔法を使った私をバケモノ呼ばわりしたんですよ!!」

「!!」


ユースティスは全てを知っていたに違いない。それでも救いたかったのだ。セルジュは全てを覚えていた。それがユースティスを母と慕うことにも繋がっていた。


「母親ならそんなこと言いませんよ。例え、他国から嫁いで来たとしてもそれが嫁いだ国の象徴なら受け入れるでしょう!!あの女は国を乗っとる為に来たんですから、私を育てるわけないでしょう」

「「「……………」」」


シューナッツも薄々理解していたのだ。シャーリーがセルジュの部屋に来ることが少ないのを。シューナッツはそれから目を背けていた自分を責めた。


「……すまない、セルジュ……」

「貴方に頭を下げられても母上は帰ってきません」


セルジュの突き放す言葉にシューナッツは泣きそうになった。それが事実だとしても厳しいものがある。


「父上、母上はれいびょ………父上?父上!!!」

「………」

「父上!!父上!!」


玉座でラヴィーネが項垂れていた。セルジュの声に反応しない。それを見てセルジュが様子がおかしいのに気が付いた。


「退きなさい、セルジュ」

「父上…」

「……解離を起こしていますね」

「良くここまで生きましたね。寿命はとうに迎えているのに」

「ユースティス様の呪いでしょうか?」

「…ラヴィーネ様の気力でしょう。神に呪いは効きません。失敗作にしては…良く生きました。眠らせてあげましょう」


それにミストとアクアが駆け付けて容態を診る。しかし、ラヴィーネの体が光を帯び解離していく。その姿を見て絶望的な顔をするセルジュ。親の死に直面するのは二回目。しかし、前回とは訳が違う。育ての親の死だ。感情が無いわけではない。セルジュは解離していく姿を見て涙を流す。ミストやアクア、家臣達に見守られラヴィーネは粒子となり消えた。


「父上!!!!」


泣き叫ぶセルジュの声だけが謁見の間に響き渡る。空になった二つの玉座。これを意味するのは……セルジュの即位。










ベルモット達の全面的なバックアップのお陰で落ち込んでいたセルジュも復活し、国王の死が公表された。<ユクレシア>は半年間の喪に服し、新王セルジュが即位した。

セルジュ25歳の時である。

テラスから民衆がセルジュの即位を祝っている姿をシューナッツが眺めていた。


「……ユースティスが即位した歳と同じか……」


シューナッツは自分を処刑し、即位したユースティスを思い出す。セルジュと同じ歳で即位し、15年に渡り国を治め、40年の人生に幕を閉じた。セルジュには長生きしてもらいたいシューナッツ。ユースティスの二の舞にはなってほしくないのだ。









セルジュの即位の様子を空から眺める男女がいた。


「     ?」

「あれは新しい国王が即位したんだ」

「      」

「そうだな。新しい国王がちゃんと政治をするやつだと良いな」


それだけ話すとすぐに消えてしまった。その姿を見ているものは誰もいなかった。






セルジュの治世は40年に渡り、歳を理由に引退。子供に引き継がれた政治は途絶えることなく民を優先した物だった。それはユースティスにより築かれた基礎を壊されたくなかったセルジュが子供達に伝えていったお陰だろう。ユースティスは歴史的に殺戮王として語られ、セルジュは賢王として名を残した。




アルステット伝記  完結

アルスティト伝記 完結です。


ハイスピード連載でしたが……無事に終了です。

話的にはユースティスの即位から崩御までを最初ゆっくり、最後ざっくり書かせていただきました。

書き忘れや捕捉は番外編なるものを書ければと思っています。


登録してくださった皆様。

評価していて頂いた皆様。

お読みくださいました皆様。

本当にありがとうございます。


お読みくださりありがとうございました。




2011年8月12日 完結 神泉 苑



修正による総差し替え

2011年8月14日 総差替 神泉 苑

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