第8話 放課後の日常
放課後、俺が帰る場所は学生寮ではない。この学園には男女別の学生寮が完備されており、地方からも才能あるものを集めている。学生寮にはもちろん寮費があり、アノール村の住民が入れるほど安くはない。よって、寮費が払えない学生はこの都市テルーズの格安宿に泊まっている。かく言うおれも寮費が払えない学生の1人である。
「あっ、おかえりなさい。ギネラにぃ。」
「ムー走ってはダメと言っているでしょ。」
黄緑色の髪の毛をツインテールにした12歳の娘が走ってくる。彼女はこの宿、風見鶏亭の1人娘ムー=バーディだ。おれは彼女に兄のように慕われている。そして、その後ろからムーを注意しているのがこの宿の女将でムーの母親であるサリー=バーディだ。
「ただいま。ムー、サリーさん。」
「おかえりなさい。ギネラ。もうすぐ夕食時だから準備して降りてきなさい。今日もよろしくね。」
そう。寮費が払えずに格安宿に泊まっている学生の中でも貧乏な学生は住み込みで働いているのだ。おれはこの宿で夕食時に宿の店員として働かせてもらっている。それで朝、夕食、宿代を賄ってもらえる好待遇だ。俺はとりあえず1年間雇ってもらえることになっている。
「ギネラ今日のオススメはオークのステーキだ。今日もよろしく頼むな。」
「はい!了解しました。」
そう言うのはこの宿の亭主でムーの父親、ルッツ=バーディだ。彼は元冒険者であり、今も冒険仲間たちがよくこの宿に通っている。
「ギネラ今日のオススメはなんだ?」
「オークのステーキです。」
「そりゃ最高だ!オークのステーキ1つ頼む。」
「ギネラこっちは3つ頼む。」
「はい。かしこまりました。」
この宿はいつも冒険者たちで騒がしく、彼らに愛されている。そしてそれがまた、警備いらずで安全な宿に繋がっていた。だからこの辺りの住民たちにも愛されている良い宿だ。
「ギネラおつかれ。もう上がっていいわよ。あと着替えたら主人が呼んでいるからもう一回降りてきてもらえるかしら?」
「了解しました。お疲れ様でサリーさん。」
ルッツさんが俺に何の用があるのだろうか?ムーとの距離が近すぎるとかだろうか。それなら覚悟していかないといけないな。
そんなことを考えながら着替えて降りていく。
「ルッツさん、お待たせしました。俺に何のようですか?」
「学園が始まったってことはダンジョン探索があるだろ。いつからだ?」
「明日から早速潜る予定です。」
「そうか。早いな。お前武器を持ってないだろ。とりあえずこれを使え。俺の冒険者時代のお古だけどな。」
そう言ってルッツさんは机の上に鉄の剣を机の上に置く。
「これ。本当にもらっていいんですか?大切な物じゃないんですか?」
「あぁ、大丈夫だ。これは俺が冒険者始めた時に使ってた物だからな。安いし、他に大切な物は残してある。」
「ではありがたく貰わせてもらいます。」
「なになに。ギネラにぃそれ使うの?構えてみてよ!」
ムーに催促されて、鉄剣をもつ。
「まだまだ初々しいな。ダンジョンには気をつけて行けよ。」
「かっこいいよ!ギネラにぃダンジョンいくの?私にも学園の話きかせてよ!」
「今日は遅いからまた今度な。」
「えーー」
ムーは少し不貞腐れていたがもう遅いので上に上がり、明日のダンジョン探索に向けて寝る。
まだ処女作ですがアドバイスやコメント、評価をもらえるとありがたいです。たくさんのコメント待ってます。また、おすすめの作品なども教えていただけるとうれしいです。