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"第一章 参幕"

読んで下さった方有り難う御座います。


「ここ.....ダンジョンじゃなかったっけ?」

「その筈じゃが.....これはアレじゃな.....」

「.....リゾートハウス? .....宮殿?」

「そして何より...広い」


4人の前に現れたのはとても優雅な光景であった。

ダンジョンとは思えない程の清潔感に溢れ、一生住みたいと思わせる誘惑があちらこちらに散りばめられている。


「ねぇ、お爺ちゃん」

「何じゃ? お爺ちゃんとは懐かしい呼び方じゃのう」

「もう私.....ずっとここで暮らしたい」

「正気を保つんじゃ!! 」

「...海もある。久しぶりに泳ぎたいかも...」

「さすがにダンジョン内だからクラーケンとかが居そうなんだが...」

「クラーケンは居ないけど、ここで泳ぐのは少し難しいわねぇ。なんせここ最下層は...」


ヴェリーナが説明をしようとしたその時、海が突然真っ二つに割れて中から魔獣数百匹が溢れ出て来た。


「ヴェリーナさん!?」

「一定時間ここで戦いが行われないとあんな感じでSランク以上の魔獣がこの最下層のボスとして現れるのよ」

「では、ヴェリーナさんはいつもあの数を相手にここで戦っているのですか?」

「いいえ。私を誰だと思っているの?『フィアーディラプション』」


彼女は指をパチンと弾き、"SS級魔術"を無詠唱で発動し出現した全ての魔獣を炎の渦に閉じ込め、一瞬で滅した。

その光景を僕ら3人は勿論、トリップしていたレニャも驚愕の表情で見ていた。


「.....一瞬。でもそれよりも、SS級魔術を無詠唱であの威力は流石としか...言えない」

「7049というレベルは、僕らが数時間掛けてやっと倒せる魔獣を一呼吸するくらい当然の様に滅してしまうものなのか」

「レベル200くらいあるのにあの程度で数時間もかかっちゃうの?」


ヴェリーナはシアナに近寄り鑑定魔法を発動させる。


「シアナさんだっけ? 貴女もしかして....................あぁ、やっぱり。純血の羊人族じゃないのね...」

「..........はい」

「おや? 嬢ちゃんの両親はどちらも純血の羊人族じゃった筈じゃがのう...?」

「確かに.....前に私の村で勧誘を受けた時に話した通り.....私の父と母は純血の羊人族だと言ったし、間違いじゃないけど..........」

「おそらく...父親が獄毒に侵されていたのね」

「.....はい」

「そうか.....獄毒に侵された種族と交わって生まれた子供は魔力が極端に少ないんじゃったな」

「しかし、今までそんな事は感じでこなかったが...」

「...それはこの魔刻の指輪をしていたから」

「あらっ、その指輪とんでもなく出来が良いじゃない。どれどれ...作者はっと..........成る程」

「ヴェリーナさんのお知り合いの方ですか?」

「知り合いも何も、コレを作ったのはあのヴァルツよ。ヴァルツはパーティを組んでいた頃も私たちの装備を武器から防具、装飾品まで作ってくれていた。しかも全てドワーフの一級鍛冶屋が白旗を上げる程の物なんだから。まぁ、私は武器を扱えないから少し羨ましかったけどね」

「そうだったんだ.....あの人が...」

「シアナもヴァルツに会った事があったのか?」

「この指輪...私が村の近くにある林で魔術の特訓をしていた時に出会った人に作って貰った物なの...」





8年前〜羊人族の住む村【フェービュラー】




村では長閑な時が流れている中、近くにある林で一人黙々と魔術の特訓をする少女がいた。


「.....水の精霊さん.....私に水の加護を降らせよ.....『ヴァプーレクシオ』」


少々の頭上に水が一滴だけ落ちてくる。


「.....全然だめ。こんなんじゃあ、また村の男の子たちに笑われちゃう」

「お嬢ちゃん♪ こんな所に一人でいたら魔獣に食べられちゃうよ?」

「だ..........誰!?」

「お兄さんは別に怪しい人じゃないよ?通りすがりの鍛冶屋だ。それを証明する為にお嬢ちゃんに良い物を作ってあげよう」


男はポケットからひとかけらの鉱石・オリハルコンを取り出し魔法で指輪を象っていく。ものの数秒で指輪は完成し、最後に男は指輪に魔術で外面に文字を掘る。


「よし、これで完成だ。コレを何処の指でもいいから嵌めてみな。この指輪があれば村の男の子たちに笑われずに済むよ」

「ほ.....本当に?」


少女は指輪を恐る恐る右手の人差し指に嵌める。すると指輪は少女の人差し指に大きさが調整され小さく光る。その光は次第に大きくなり少女の全身を包み込む。


「わ.....なんだか暖かい」

「さっきの魔術.....もう一回唱えてみな」

「う...うん。水の精霊さん.....私に水の加護を降らせよ!! 【ヴァプーレクシオ】」


少女の頭上に大きな水の輪っかが現れ水の加護が降り注ぐ。少女は今まで全く出来なかった魔術が完璧な形で発現した事に少々驚いていたが、それはすぐに喜びの表情へと変わっていった。


「...お...お兄さん、ありがとう。この指輪ってずっと使えるの?」

「あぁ、勿論。あ〜でも外す事は出来ないから気をつけてね。効果はお嬢ちゃんが強くなるまでか.....お嬢ちゃんの内にある"呪い"を誰かが解くまでだよ。まぁ、時期が来れば勝手に壊れる魔術を掛けておいたから心配は要らないよ」

「.....本当だ。抜けない」

「じゃあ、お兄さんはここら辺でさよならするよ」

「あ.....あの.....お金」

「お金?.....あ〜、その指輪の代金って事かい? 要らないよ。それはお兄さんからのプレゼントだ。お金の代わりに、もっと魔術の勉強を頑張ると約束してくれるかな?」

「.....うん。頑張って.....冒険者になる」

「ほう、冒険者か。良い仲間を見つけられる様祈っているよ」


男はひらひらと手を振り去って行った。




「.....こんな感じで」

「成る程ね.....」

「それと...去り際に、あの人から『お嬢ちゃんには闇属性以外の全てに適正があるから闇属性だけには触れない方が良い。特に水属性と光属性には誰にも負けない程の力がある』って...言ってくれたから、水と光属性の魔術は得意」

「確かに、嬢ちゃんの水属性と光属性の魔術・魔法には驚かされたわい」

「でもどうして闇属性だけはだめなんでしょうか?」

「触れない方が良いとは...言われたけど、試しにやってみたら...」

「どうだったの?」

「.....何か、バチッて拒絶された様な感じと...不快感が襲ってきた」

「それは適正がないからだけじゃないわよ。貴女の呪いに関係がある」

「そうじゃな。父親が獄毒を受けていたからのう」

「獄毒って、何なの?」

「獄毒っていうのはね、【鬼窟貴族】が作った呪属性魔法『ディリテコラ』による...未だ解呪方法が見つかっていない呪いよ」

「まさか.....ディリテコラを鬼窟貴族が作っておったとはのう。儂らの集落でも何人かは獄毒にやられた者がおったが...」

「獄毒は厄介で闇属性を使えば使う程その使用時に得られる快楽にハマってしまうの。しかもその呪いは子供にも受け継がれてしまうもの」

「...でも私は拒絶された様な感じが...」

「それは光属性に適正があったから。もし適正が無かったらその獄毒の快楽に身を委ねてしまって今頃は廃人と化しているところよ」

「....................」

「獄毒に侵された父親はその呪いで血に"鬼窟貴族の呪い血"というものまで背負わされ、貴女は純血ではなく生まれてしまった。魔術や魔法の才や適正があっても呪いの効果で子供の頃は魔術や魔法を上手く扱えないし、レベルも上がらない。でもその指輪は装備中はそれらを全て無効化してくれる」

「じゃったら、その指輪を大量生産すれば良いのでは?」

「そう簡単にはいかないのよ。その指輪はオリハルコンで出来ているの」

「.....オリハルコン!?.....か」

「オリハルコンは物凄く高価で採掘量はごくごく少数。偽物や質の悪い人工物も多いですからね」

「世に出回っているのは90%超が人工物。天然のオリハルコンはほぼ上流階級貴族や王族が権力とお金にものを言わせてオブジェや何の効果も無いジュエリーにしてしまっているわ」

「.....この指輪って...いくらくらい.....なの?」

「.....それは考えない事ね。って、そんな事より貴女の呪いよ。レベルは100を超えているから外したとしても今の80%くらいの力を発揮出来る。どうする?」

「どうするとは、まさか解呪出来るという事ですか?」

「勿論。私の得意なのは魔術と魔法。一応賢者だからそのくらいは簡単よ」

「模擬試合では、物理攻撃のみで圧倒なさっていた筈ですが...」

「簡単な体術くらいなら出来るってだけ。それにあのゼルドッガはレベル400程度。力の差は歴然よ。.....さて、もう一度聞くわね。呪いを解呪する? 解呪して暫くはまだ呪いの効果が続くし、解呪時に激痛が走るけど覚悟はある?」

「.....どのくらいの...激痛?」

「そうね.....トロルハザードに金棒で殴られた時の約1億倍ってところかしら?」

「..........解呪して下さい」

「え!? 大丈夫!?」

「.....解呪して、皆んなの為にもっと...約に立つなら.....そのくらいは、耐えてみせる」

「良い覚悟ね。それじゃあ.....すぐ始める? それともキールくんとの手合わせを先にしちゃう?」

「いえ、解呪を先にお願いします」

「冗談よ。でも解呪中は他の事に手は回らないからまた魔獣が出たら対処はお願いね」

「は.....はい!!」

「私たちだけであの数倒せるかなぁ」

「大丈夫じゃて。今の儂らなら何とかなるわい」

「解呪には時間がかなり時間が掛かるから2〜3回は繰り返してもらう必要があるかも」

「「「2〜3回!?」」」

「と言っても、一回毎の出現までには時間があるから充分体勢は整えられるわ」

「しかし、妙じゃのう。あぁやってボスが出現して戦いを行なっているならそう何度も出ては来ないと思うのじゃが...」

「それはね...今このダンジョンの最下層において、ボスと認定されているのが私だからよ」

「「「「!?」」」」

「絶対的強者としてこの最下層にかれこれ10年以上住んでるから、ダンジョンボスとして認定されちゃったみたい。だから私が、ダンジョン挑戦者が最下層にいるにも関わらず戦いをしない場合新たなダンジョンボスを決める為あぁして出て来ちゃうってわけよ」

「な、成る程...」

「それじゃあ、宜しくね。さ、私について来てシアナさん」

「は.....はい!」


ヴェリーナはシアナを連れて宮殿へと向かった。

残された3人は気持ちを入れ替え戦いの準備に取り掛かる。


「レオさんは魔術・魔法支援型に切り替えて下さい。僕が先行するからレニャは取りこぼしを頼む」

「オッケー♪」

「承知じゃ。小僧は.....いやキール、無理だけはするでないぞ。それから儂の事はレオで構わんと前から言っておろうが」

「は.....はい。分かっていますよ」

「その敬語も要らんよ」

「は...あぁ、それじゃあ後ろは任せた!!」

「おう!!」


武器を構え数分後、再び海が真っ二つに割れ数百匹の魔獣が溢れ出て来た。




"第一章 参幕" 完

ついつい長くなってしまいがちな今日この頃。

説明ばかりにもなってしまいがちなのも悪い癖。

もう少し読み易くする為頑張ります。


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