"第一章 肆幕"
まだひと幕ずつの終わらせ方が微妙ですが、読んで頂けると幸いです。
キール、レニャ、レオが湧き出る魔獣との戦いの最中...ヴェリーナとシアナは宮殿内にある巨大魔法陣の描かれた広間へと来ていた。
「シアナさんは魔法陣の中心に立ってくれるかしら?」
「はい...」
シアナは緊張した面持ちで魔法陣の中心に立つ。ヴェリーナはシアナが中心に立ったのを確認すると陣の周りを詠唱しながらゆっくりと歩いていく。
「..........詠唱中にすみません。解呪には...どれだけ時間が掛かる.....のですか?」
するとシアナの頭の中へ念話でヴェリーナから応答がある。
《そうね...今はまだ準備段階だからこの詠唱の後、70時間といったところかしらね》
「!?.....わ、分かり...ました」
《さっき話した激痛なら詠唱後の20時間後くらいから始まるからまだ身構えなくても、って身構えたところで何も意味は無いけどね。あと、キールくんたちが心配でも彼らに強化魔法とか防御魔法は使わないでね。解呪魔法と干渉を起こして多分...貴女、死んじゃうから》
「..........はい」
約2時間後...一方のキールたち3人は5回目の戦闘に苦戦していた。
「キール...私もう、腕...上がらない」
「レニャは下がっていてくれ.....(マズいな...レオもMPが切れ始めている。もうMP回復薬も無くなった.....どうする!? .....こんな所で死ぬ訳にはいかないのに!!」
「キールや...すまぬ。儂もそろそろ.....限界じゃ」
「レオ!?」
ドサッとレオはうつ伏せに倒れる。レニャの方を見ると彼女も気絶していた。しかし魔獣たちは勢いを更に増して突進して来る。キールは大剣を地面に刺し凭れ掛かり立っているのがやっとだ。魔獣たちが眼前にまで迫って来てキールは死を覚悟したその時!? キールの身体を光が包む。
「これは...光属性の強化魔法『ルミエルネス』!? しかしシアナは解呪中.....いや、そんな事考えてる暇は無い!! うおおおおおおおおおおお!! 『ミルブレイク・リュミエール!!』」
キールの渾身の奥義が炸裂する。魔獣たちを千の光が襲う。
「「「「「ギグラァァァァァァァ」」」」」
魔獣たちは断末魔の叫び声を上げ、息絶える。ギリギリの勝利に安堵したのかキールはその場に倒れ込む。
「ははは...もう立てないや。シアナ...まだ、掛かるのかな?」
「.....ダメ、というのは無理よね」
ヴェリーナは魔法陣の中心で倒れ込む少女を呆れた顔で見ていた。
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《どうしたの、ヴァルツ? お腹痛い?》
《いや...そんなんじゃないよ》
ヴァルツはふと異変を感じた方を険しい顔で見ていると隣りで転がって遊んでいた焔竜に心配されてしまった。
ヴァルツは自分作った作品が砕ける音を感じ、少し涙した。砕けた理由が死であると感じてしまったが故である。
《泣いてるの? やっぱり何処かケガしたの?》
《違うよ、イフェルカ》
イフェルカとは焔竜の名である。ずっと焔竜と呼ぶのは忍びないので適当にヴァルツが名付けた。焔竜は素直に喜び気に入ってくれた様で、安心したヴァルツだった。
《だったらボクに戦いを教えてよ》
《まだイフェルカは人化を上手く扱えないだろ? 先ずは人化からだよ。それに身体が成長したとは言え、年齢的にはまだまだ子供だ。戦いはもっと大人になってからな》
《う〜〜〜〜〜ん、えい!》
ポン....ポンッとヒトの子供の姿に一時的に変身し直ぐにまた竜へと戻ってしまう。やはりまだ人化は難しい様だ。
《ほらな、すぐ解けてしまう。それに身体はそのままの大きさで人化しちゃうんじゃ、町にすら入られないぞ》
《む〜〜〜〜〜〜〜〜〜》
《でも念話は自然に出来ているんだ。魔力操作は上手いもんだぞ....................(ん? どういう事だ。オリハルコンの息吹がまだ残っている?)》
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「光属性の強化魔法.....キールくんたちに危機が迫っていると感じた瞬間に発動させるなんて。自分の命より仲間の命か.....ヴァルツ以外にそんなヒト見た事無かったわ。って、あら? 呪い血が消えてる?」
倒れているシアナの右手人差し指に嵌められいた指輪は砂と化していた。が、彼女の身体から鬼窟貴族の呪い血は跡形も無く消え去っており、代わりにオリハルコンの持っていた輝きがシアナの全身を覆っていた。
「..........これはまさか、輝神化? でも神人族以外での発現は不可能な筈...?」
「...............ん。あ...あれ? 私、生きてる?」
「シアナさん...身体は何とも無いかしら?」
「は...はい。それに何だか身体が前より数万倍軽いです」
シアナはゆっくり立ち上がると自らの力の高鳴りを感じ、無詠唱にて光属性SSS級魔法を静かに発動する。
「『オールリザレクトレイン』」
「.....また湧いて出て来たか。2人は勿論、僕ももう戦える力は残っていない...え!?」
キール、レニャ、レオを囲む様に上空から優しい光の雨が降り注ぐ。
「.............ん、こ...これって、シアナの究極魔法...まだまだ使いこなすには数年は掛かるって言ってたのに」
「あぁ、しかしこれは話に聞いていた通りの魔法だ。全身から力が漲ってくる!!」
「ホッホッホ!! 儂もまだまだ戦えるわい!!」
「ジジイには負けないぞ〜!!」
「まだまだ孫には負けんわい!!!」
「良し! これなら後10日くらいは戦い続けられる! 行くぞ、2人とも!!」
「おう!!」「お〜!!」
倒れていた2人も瞬時に起き上がるや否や、シアナの究極魔法『オールリザレクトレイン』によって全回復し、全ての能力が強化された3人は湧き出る魔獣たちに突っ込み、バッタバッタと薙ぎ倒して行った。
「.....今まで一度も成功...しなかった究極魔法.....何だか、自然に唱えられた...」
「それはね、貴女に才能があっただけでなくオリハルコンに貴女の努力を認められた証なのよ」
「オリハルコン...に?」
「元来.....オリハルコンに認められるのは神人族以外にはあり得ない筈なんだけど、貴女のその仲間を命を懸けて守るという愛に感服したのでは無いかしら」
「.....オリハルコンが...私を」
「しかもその『輝神化』というのは呪い血を解呪するだけでは無く、潜在能力を開花させたり、状態異常等の効果を打ち消す力も持っているの。今貴女が究極魔法を自然に唱えられたのも輝神化によるものが大きいでしょうね」
「この...輝神化、というのは...いつまで続くもの...なんですか?」
「一生よ。オリハルコンに認められている間はね」
「私、オリハルコンに恥じない様...頑張ります」
「そうこなくちゃね。じゃあ、3人の元へ向かう? それとも少し休憩してからにする? 私は少し休みたいけど...」
「私は.....勿論、行きます!!」
"第一章 肆幕" 完




