百三十八段 ざまあねえなあ
次で最終回になります。
「よし、わかった、殺そう」
「……畜生……」
「……もう嫌……」
「嫌だ……嫌だ。嫌だあああああああああああああ……ぁ……」
ビレントがあまりにもうるさいので舌も奪ってやった。これでもうまともには喋れまい。そうだな、そんなに死にたくないならこいつから先に殺してやろう。
というわけでスキル構成から《マインドキャスト》を外した。声を出すことによって、俺にとどめを刺されているっていうのを少しでも実感してもらいたいからだ。
「死ねビレント!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!」
ビレントの体中の骨を徐々にずらしていく際、あえて連続ではなく少し間隔を空けた。少しでも長く苦しみを味わえるように、俺の声が聞こえるように……。
「……あっ、えっ、あっ、おっ、うっ……」
正直噴き出しそうだった。ビレントのやつが苦しそうに呻きつつ体をくねらせる姿、最高に面白い。こいつのギャグとしては最高傑作だな。遠目に見たらきっと踊ってるようにしか見えないだろうが……。
って、もう死んでる……。今通り過ぎていったカニ型モンスターみたいに泡を吹いて、ざまあねえなあ。
「さあ、糞ルファス。次はお前だ」
「……助けてください……シギルさん……頼みます……お願いします……」
「……」
これがあの帝王ルファスなのか……って、こいつも小便漏らしちゃってるんだな。くっせえ。それに加えて涙、鼻水、涎をダラダラと垂れ流しながらひたすら命乞いとは。まるで今までとは別人だ。
「よし、助け……るわけないだろ。お前は内臓の位置を滅茶苦茶にしてやる。死ねルファス!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!《微小転移》!」
「あぎっ、もがっ、べべっ、みぎゃっ、ぼごおぉおっ!」
……何言ってるんだこいつ。気でも狂ったのかと思ってたら噴水のように血を盛大に噴き出したあと、すっかり喋らなくなってしまった。砂浜という大きなベンチで大の字に寝そべり、真っ青な空を見上げながら昇天できるなんて贅沢だなあ……。
「ふう。エルジェ。ビレントとルファスは死んだぞ。次はお前の番だ……」
「……助けて……お願い……。シギルさん、あたしまだ死にたくないの……」
「……はあ」
この期に及んでまだ命乞いか……。
「もうビレントもルファスも逝ったんだからお前も逝けよエルジェ。あいつらもあの世で待ってるぞ?」
「……嫌だ……やっぱり死ぬのは怖いよ……。助けて……」
「……」
さて、どういう風に料理してやろうか……。そういやこいつ、俺をしつこく汚物扱いしやがったよな。
「そんなに助かりたいならとりあえずこれを飲め。そしたら考えてやる」
「……え……?」
「いいから口を開けろ!」
「は、はい!」
エルジェの口に小便をかけてやる。
「ごくごくっ……ぼええぇ! なにごれぇっ!」
「喜べ、お前が散々汚物扱いしてきた俺の小便だ」
「おげえええぇっ!」
しかも俺は今、息子を丸出しにしているぞ。お前らがどうしても見たかったものだろう。あ、もう二人とも死んでるしこいつは眼球そのものがないのか。
「がほっ、げほぉっ……ひぐぅ……うごごごおぉぉ……」
すぐに全部吐き出しやがったが、即座に《微小転移》で俺の小便をエルジェの胃の中に戻してやる。
「……うぇっ……?」
「吐いてもまた胃袋の中に入れてやるぞ。ゲロや砂とセットでな」
「……おぐぇ……」
とうとう汚物をぶちまけながら気絶してしまった。ついでに全裸にして、さらに周りからアソコがよく見えるように仰向けにしておいてやる。おまけに両手両足を根本から綺麗にもぎとってやった。もちろんほぼ同時にほかの個所を傷口に移植させることによる止血も忘れない。
あっさり死なれたら困るからな。こいつはもっと苦しめて殺さないといけない……。というわけで、カニ型モンスターを叩いてアクティブにしてエルジェのほうまで誘き寄せてやった。生きたまま食われる地獄を味わってもらおうってわけだ。こいつは弱いが魔法が効かないからな。
「――おいグリフ、全部終わったから行くぞ」
「……は、はいであります! ……うぇっぷ……」
グリフのやつ、すっかり青ざめて吐きそうになってるな。
「おいおい、これ以上ビーチを汚すなよ。吐いたら砂ごとお前の胃の中に収めるぞ」
「……がっ、我慢するでありますっ……」
グリフ、汗ダラダラでよく耐えてるな。相当我慢強い。ルファスたちとずっと一緒にいることで精神力を鍛えられたんだろう。転送部屋に到着してまもなく、エルジェの痛々しい悲鳴が聞こえてきた……。