【☆<√R>第71話(最終話):もっといい店にしようね!】
日曜日の朝。俺はカフェ・ド・ひなたに出勤した。
今朝は早く目が覚めたせいで、いつもよりも30分も早い。
だからと言って別に早く出勤する必要もないんだけど、早く出勤すればその分、浜風さんと長く居られる。
──なんてことを思いついてしまった。
アホだ俺。なに色ボケてんだか。
自分がこんなふうになるなんて思ってもみなかった。
だけど彼女に会いたい、少しでも長い時間関わっていたい。そんな気持ちが抑えられない。
──ああ、これが恋ってやつなんだな、きっと。ようやく俺にも、人を好きになる気持ちってのが理解できた。
自転車を飛ばして店の前まで来たけど、まだ昨日のキスが頭から離れない。
ヤバい。頭がアホになってる。こんなことじゃダメだ。これから仕事なんだからしっかりしなきゃ。
両手で頬をパチンパチンと叩いて、気合を入れてから店の扉を開いた。
「おはよっ!」
「え?」
まだ親父以外は誰も来ていないと思い込んでいたから、店の中に浜風さんがいて驚いた。
「おはよう。浜風さん早いね」
「うん。早く来ちゃったよ」
「そっか。ありがとう。仕事熱心だね」
「んっと、そうじゃなくて……」
「ん?」
天真爛漫ガールが珍しくもじもじしている。
どうしたんだろ?
「雄飛君に早く会いたくてさ。気が焦っちゃったのさ」
──あ。俺と一緒だ。嬉しい。
「ありがとう。俺も今朝は早く目が覚めてさ。早く浜風さんに会いたくて、早く来た」
「マジ? あたしに会いたくて、珍しく早く来るなんて、嬉しいよ」
「珍しくは余計だろ。……まあその通りなんだけどさ。情けない」
「ああっ、ごめん! 悪気はなかったんだ」
「いや、今後はもっと店長としての意識をもって、ちゃんとするよ。ありがとう」
「うん。お互いにね。一緒にがんばろ!」
満面の笑みを浮かべる可愛い彼女。
早く来たおかげで、こんな笑顔を独占できる。
親父はキッチンで仕込みをやってるし、このホールには二人きり。
他の二人が出勤してくるまで、あと15分はある。まだゆっくり過ごせるな。
よーし、たくさん話をしよう。
「あのさ浜風さん……」
「おはようございます!」
突然扉が開いて、京乃さんと神ヶ崎が入ってきた。
ちょっと待って! いきなり計算外の展開。
「お、おはよう」
「早いですね、雄飛さん。鈴ちゃんに早く会いたかったからですよね」
「あいや、えっと……」
鋭いよ京乃さん。鋭すぎるよ。
「うふふ。がんばってくださいね雄飛さん。おめでとうございます!」
「あ、ありがとう」
「鈴ちゃんもおめでとう!」
「うん、ありがとーっ!!」
俺は今回浜風さんを選んだ。京乃さんからしたら、俺は憎らしい相手かもしれない。
少なくとも俺の顔を見たら、とても辛い思いをするに違いない。
できればあまり話したくないだろう。なのにこうやって明るく、今までどおり接してくれている。
「実はですね。最初に大きな声で祝福したら、吹っ切れていいよって涼香ちゃんがアドバイスしてくれたんですよ。やってみたらそのとおりでした」
京乃さんが目を向けると、神ヶ崎は黙ってうなずいた。
「ですからホント、これからもよろしくお願いします」
丁寧に頭を下げる京乃さん。俺も心をこめてお辞儀をした。
「ありがとう。カフェ・ド・ひなたをもっといい店にするためには、京乃さんの力が必要不可欠だ。これからもよろしくお願いします」
「はい。みんなで協力して、いい店にしましょう!」
笑顔を浮かべる京乃さん。
浜風さんも神ヶ崎も深くうなずいた。
「じゃあ着替えに行きます」
そう言い残して、京乃さんは神ヶ崎と一緒に奥の更衣室へと消えていった。
ホントにありがたい。
そうだよな。店づくりも浜風さんとのお付き合いも、まさにこれからだ。
どちらもしっかり頑張らなきゃならない。いや、頑張りたい。
そんな気持ちに包まれた。
こんな気持ちになれるのは、みんなのおかげだ。
俺は三人の後姿を眺めながら、心から感謝を述べた。
京乃さんありがとう。
神ヶ崎もありがとう。
──そして浜風さんありがとう。大好きだよ。
√Rを最後までお読みいただきありがとうございます。
浜風鈴々のルートはいかがでしたでしょうか。
天真爛漫ガールを応援いただいた皆様、ありがとうございます!
本当に感謝です。
皆様にとって、応援したいヒロインは雅、鈴々のどちらだったでしょうか?
涼香を応援してくださっている読者様もいらっしゃいましたね。
それと「ハーレムエンドも見たい」とおっしゃってくださる読者様も。(笑)
申し訳ありませんが当初の予定通り、一旦√Mと√Rの二つのエンドで締めさせていただきます。
皆様の応援のおかげで、初チャレンジとなるマルチエンディングを書き上げることができました。誠にありがとうございます。
それではまた次回作でお会いしましょう。
2026.3 波瀾 紡




