《黒海海戦、中盤 その二》
出撃したエレーナ中尉は周囲で行われている戦闘は無視して、イングランド軍艦隊が前進していく様子を静かに観察し始める。
そんなエレーナ機の隣に二機のロシア軍マシンアーマノイドが現れ、エレーナ機を守るように行動し始めたころ、イングランド軍艦隊はロシア軍艦隊の最後方を突破しようという段階になっていた。
するとその状況を確認したエレーナ中尉は、頃合い良しと判断して、彼女のネオヒューマン能力を発動させていく。
「……もうすぐ我らが艦隊が突破されるか……まあ作戦通りなのだが……む」
「中尉殿! 護衛いたします!」
「私も! 中尉殿をお守りしますよ!」
「すまない、よろしく頼む」
「いえいえ、お気になさらず!」
「そうです! この作戦の成功は中尉殿にかかっているのですから……」
「……ああ、そうだな……む!」
「おお、イングランド艦隊め、我らの艦隊を突破しましたな」
「ええ。それがこちらの狙いだとも知らずに……」
「うむ。さてそれではいくぞ。ネオヒューマン能力、発動! 超極低温!」
エレーナ中尉が彼女のネオヒューマン能力、超極低温を発動させた直後、イングランド軍艦隊周囲の海だけが完全に凍結し、イングランド艦隊はまったく身動きができなくなってしまう。
こうしてイングランド艦隊がその無防備な姿をさらけ出したところに、それまで巧妙に擬態させて隠されていたロシア軍の地上砲台やロシア陸軍の砲兵部隊、さらにはロシア空軍や再編成されたスペツナズまでもが現れ、身動きのできなくなったイングランド艦隊に襲い掛かっていった。
この事態にケインは、すぐになにが起きたのか? と部下に尋ねていったのである。
「……む!? 艦の前進が止まった? どういうことか!? 私はまだ、停止命令は出していない! なぜなんの報告もなく停止させたのか!?」
「閣下! 海が、海が、氷漬けになりました!!」
「……なに? 海が、氷漬けに……何者の仕業か!?」
「わ、わかりません! なんの情報も上がってきていないので……!」
「……むう、MI6め、まともに任務を行っているのか……? 敵軍将兵の最新情報を送ってきていないとは……」
「か、閣下! MI6への不満を口にするのは……!?」
「彼らに聞かれているかもしれない、だろう? 良いのだよ、聞かれるように言っているのだから」
「は、はあ……むっ!?」
「どうした? 今度はなにが起こったか?」
「ロ、ロシア軍の地上砲台が、我々に砲門を向けてきています! それだけではありません! ロシアの陸軍、空軍、それにあれは……スペツナズか!? ス、スペツナズもこちらに向けてきて接近しています!!」
「……むう……」
部下の報告を聞いたケインは、わずかに表情を歪めていった。
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