俺は世界を滅ぼした
今日から連載するかもしれないし、しないかもしれない。
現代社会には俺、火威 赤夜のように、異能の力を持つ奴だっているんだよッ!
「震えよ、畏れよ、因果の灼炎。輪廻に抱く、魔の業火、燎原の火よ、咽返る空を、刹那にて、赤く染上げよ。――《獄炎の射手》
そう唱えて、俺は窓の外を見る。逃げ惑う無辜の民、周章狼狽する世界。憂さ晴らしをした、俺にとっては最高の景色だぜ。
「くくくくく……これも今期のアニメが面白くなかったからいけないんだ!」
そう、俺は退屈になったからこの現代社会を火の海にしてやったのさ!はははッ!
「そうだ……け〇のフレンズ2だって、ソードアー〇オンラインだって、と〇る魔術の禁書目録だって! 俺は楽しみにしていたのに!」
――期待外れだったよ!
悔しそうに拳をギリギリと強く握る、火威赤夜。苦虫を噛み潰したように、彼の顔はひどく歪み、その表情からは悲憤慷慨の心象が読み取れた。
「まあ、その代わり、人類にはちょっとばかし罰を受けてもらお~う」
指パッチンをしてさらに状況を悪化させる俺、もうさ、これって職権乱用、オーバーキルってやつだよな。少しはすまないと思ってるZE☆
――この火威の軽挙妄動が、世界の均衡を崩してしまったことを今の彼はまだ知らない……
「いやさ、お兄さ、うちの《超絶魔術師機構》でも死んだ人間は生き返らせることはできないんだからさ、ほどほどにしといてよね……」
呆れ顔で兄に諫言するのは、火威赤音。赤夜の妹である。
「赤音の能力って今更だけど、まるでク〇イジー・ダイヤモンドみたいな能力だな……」
「ちっちっち……自分の傷だって治せるから上位互換だよ」
あーそれもそうか。俺は頷きながら手元のポテトチップスを2枚口に突っ込む。
「甦れ、悠久。還元せし、蒼空の大地、燦然の日輪。その全てを無に帰し、須臾にして復縁の依り代となれ。《超絶魔術師機構》
あれほど凄惨な情景が瞬く間に復元する。それがこの赤音の能力、《超絶魔術師機構》である。
「俺、赤音がいなかったらダメになってたかもしれない……」
「いやいや、お兄はうちがいてもダメだから。DVをした後、彼女に優しくする彼氏みたいな感じに言っても騙されないからね」
――ってかさ、お兄さ、今期はケム〇クサが十一話で面白くなったじゃん。しっかり見てんの?
「赤音よ……終盤で面白くなっても多くの人間がアニメを見ていないんだ」
見ている者だけでその作品を持ち上げるのはでんでん現象っていうんだZE☆
「いやその語尾キモイから。百回死ね」
侮蔑の表情で兄を見る妹、その目には確かな殺意が宿っている。
「赤音よ、可愛い妹から言われる『死ね』は逆に、生きる糧になるんだぜ」
だから俺は、今! 百回生きる権利を得たも同然だ!
「そう言うところがキモイから。きっとキャラクター人気投票で十位にすら入れない言動だよそれ」
――ちなみに赤音は?
「もちろん一位。うちってさ、可愛いからさ。アニメで言えば一人だけ作画に力を入れてもらえる、みたいな?」
「心配しろ、俺たちの非日常はアニメ化しない。もちろんキャラクター人気投票だって行われない」
知ってるよそんなの、赤音はぷくりと頬を膨らませて怒っていることをアピールしてくる。そんな妹もやっぱり可愛くて、やっぱり俺はシスコンなのだと第三者的に俯瞰的に見ても感じる。
「もー。赤音ってば可愛んだから~。そんなことやってたら彼氏ができちゃうZO☆」
「だからキモイんだってその語尾ってかさ、うちにはもう【彼氏】、いるからさ」
わざわざこいつ、【彼氏】をカッコの中に閉じ込めて俺に伝えてきやがった。これはきっと【偽物】だな。俺には分かる。
「は? どうしてそんな大切なこと兄に黙ってんの? ねえ! ねぇってば! 聞いてんの?」
心では嘘だと思っていても、抑えられない気持ちだってあるのだ。俺は過去最大に動揺している。
「……無限の旅路……轟く怨嗟の雷鳴……」
「もうベロちゅーまでやっちゃいましたぁ。残念でしたぁ」
「迅雷であり春雷である、電光石火……」
兄は認めん! 認めんぞ! きちんと紹介して兄のオッケーが出るまでは……
――ってベロちゅー?
「《落雷零落磊落》」
――バチン!
俺の心に電撃が走った。と言うか、本当に辺りは真っ白になって雷が落ちたように、体中を電気が駆け巡っていた。
「どうも、火威兄妹。君たちを滅ぼしに来ました」
……ったく、玄関で雷落とす奴がいるかってーの。
少しでも反響あったら続きを書きます。みんなは今期アニメ、何が好きですか?