9 入学試験
入学試験は今から3日後。試験内容は、簡単な計算と読解力、歴史。そして戦闘と成っていて、戦闘以外は各100点。戦闘は500点の計800点満点と成っている。毎年だいたい500点前後が合格点と成っている。
「わかりました。とりあえず歴史はやっておきます。」
「レイさん他もやっておいた方がいいですよ?」
「大丈夫です。期待していてください。」
余談だが初めてのヤミとルナと俺の夜は騒がしかった。朝起きると裸で3人で寝ていた。しかし、最後まで行っていないことは勿論である。
というわけでやって参りました。入学試験。会場に来たのはいいがすごく混んでいる。
「主人よ、これは流石に混みすぎだ。我々は従者指定の場所に行っておる。」
「レイ、また後でねー。」
と言ってヤミは堂々と、ルナはキョロキョロしながら行ってしまった。さて、俺も行こうかなと思った時騒ぎが起きた。
「貴様邪魔だ!俺を誰だと思っている!クラウド家の長男だぞ!その俺にぶつかっただと!?」
あー。絶対に問題起こすなあいつ。面倒くさいな。あの怒鳴られてる女の子も縮こまって可哀想だしどうしようかな。
「おい!?なんとか言ったらどうなんだ!」
「そんなに怒鳴るなよ。周りの迷惑も考えてほしいな。そこの子も大丈夫?もうすぐ試験が始まっちゃうよ?」
俺がそう言うと、女の子は狼狽し、貴族は明らかに怒っていた。
「え、その、あの、え?え?」
「な、なんだと!?俺を誰だと思ってる。俺は・・・」
「聞こえてたよ。どこぞの貴族だろ?俺には関係ないけどな。」
「馬鹿にするなよ、平民。俺が家の力を使えばお前のことくらいどうとでもできるんだぞ?」
貴族がそんな事を言うと女の子が慌てだしてしまった。俺は女の子にそっと微笑むと少し大人しくなった。心なしか少し顔が赤いような気がする。興奮しすぎたのかな?それは置いておくとして。
「やって見ろよ。」
「・・・・・・なに?」
「できるものならやって見ろよ。俺に仕掛けたらどうなるか教えてやろうか?」
「!?」
そう言って俺は貴族に笑みをこぼした。獰猛な笑みを。それを見た貴族は明らかにさっきまでの勢いが嘘のように萎れた。明らかに顔が青くなっている。
「それじゃあ俺に仕掛ける時は注意してくれよ?君ももう行った方がいい。試験が始まるよ?」
「あ、あの、本当にありがとうございました!」
俺はそっと微笑むとそのまま教室に向かった。
テストが始まった。筆記は問題ない。いや、恋愛小説から抜擢してきたようなピンク色の話は、好きなもの同士なんだな、とは分かったがそれ以外はまるで分からなかった。なんだよ、キスをするときの気持ちって。そんなの分かるわけないだろ?はぁーー。まぁ、その大門以外は、出来た。
次は最後の実技か。これは余裕だな。
「あっ、ヤミ、あそこにレイがいる。ほら、あそこ!」
そんな声が聞こえてきたので見上げるとルナが手を振って、ヤミがお辞儀をしてきた。この訓練場は野球場くらいのサイズがあり、上が観覧席のようになっているようだ。
俺が苦笑いをしていると、声をかけられた。
「あの。」
振り返るとそこにいたのはあの時助けた女の子だった。
「もう大丈夫?」
「は、はい。助けていただいて本当にありがとうございました。」
「いや大丈夫だよ。大したことじゃない。」
「えと、私サーナ タリエって言います。」
「俺はレイ。宜しく。」
「は、はい!」
試験は受付順らしく、俺は結構後に申し込んだ上に、平民だからと言われ、最後になってしまった。試験内容はランダムで選ばれる試験官の王都に存在する最高の騎士団との模擬戦だ。それに二人でペアを組んで戦う。実力はもちろん対応力や判断力などを見るためである。タリエもあの騒ぎのせいで申し込みが最後になったとか。恐らく一緒のペアになる可能性もあるだろう。
それで順場まで一緒に話してた。あの科目のこれは簡単だった、難しかった。戦うのは得意とか、回復が苦手だとか、武器は剣とか。そんな話だ。話しているうちに最初の時の緊張が取れたのか、自然な感じになってきた。そうこうしているうちに俺たちの順番になった。
相手は女教師の格好の上にローブを着ている人だった。
「私は今は教師だが、元王都の最高魔術師騎士団賢者の星で隊長をしていたラフォール ニアだ。こんな格好だが試験官の中でも実力はある方だ。安心して受けてろ。」
俺とタリエはお辞儀をしたら配置についた。配置はタリエが前衛、俺は後衛だ。理由はタリエが魔法をにがてというのもあるが、俺が前衛をすると、すぐ終わってしまうからだ。ちなみに二人のステータスを公開しよう。
【ステータス】
サーナ タリエ
人間
レベル 18
HP 210
MP 80
STR 190
DEF 100
AGL 170
スキル
剣術 Lv4
身体強化 Lv3
【ステータス】
ラフォール ニア
エルフ
レベル 83
HP 450
MP 1000
STR 300
DEF 450
AGL 500
スキル
風魔法 Lv7
氷魔法 Lv7
火魔法 Lv7
柔術 Lv5
無詠唱
サーナのステータスは受験者平均よりちょっと上くらい、先生は自分で言うだけあって試験官の中では、最強だ。さてどうやって勝つかな。やっぱりサーナに見せ場を作らせないといけないし、よし、やるか。
「それでは始めるぞ!『ファイヤーボール』」
先生はスタートと同時にファイヤーボールを打ってきた。
「『ウィンド』『プレッシャー』」
俺は風を作りファイヤーボールを逸らした。さらに飛び出したタリエを押すかのように風を送り加速させる。先生には重力魔法で誰にも気付かれないように先生を押さえつけた。先生が膝をついたところでタリエが先生のところにたどり着き首に剣を添えて終了。
先生は目を見開いて俺を見てきた。俺はにっこり返すと、別の騎士がやってきて試験終了と話した。
結果は明日、この場に紙を張り出すらしい。そして解散になった。
私、サーナ タリエは今日、運命を感じました。学校に着くと人ごみのせいでモタモタしていると上級貴族のクラウドさんに当たってしまったのです。私は怒鳴られて、萎縮していました。そんな中、彼が助けてくれました。私がオドオドしていると安心させるようににっこり彼が微笑んでくれました。正直、その、か、カッコよかったです。そんな彼にお礼を言うと、気にしないでといい、教室に向かってしまった。
筆記試験を終えて訓練場に行くと彼を見つけたので少し話をしました。彼の名前はレイ君というそうです。
しばらく話していると私たちの番になった。先生が元とはいえ、かの有名な賢者の星の隊長らしい。そんな先生が手加減をした攻撃とはいえレイ君は簡単に防いでその上私のアシストまでしてくれた。なぜか先生は片膝をついて驚いた視線をレイ君に送ってる。もしかして、レイ君が何かしたのかな?
そうこうしているうちに試験は終わった。
私は正直今回の試験官の仕事は退屈なものだと思っていた。元とはいえ賢者の星、隊長だった私がする仕事ではないと。
しかし、ふたを開けると化け物がいた。私のファイヤーボールを流したのはまぁ、十分あり得る。だがその後彼が何かの魔法を使ったのは分かった。だが、何かが分からなかった。ただ突然体が重くなったのだ。結果は敗北。完敗だった。
解散になった後、各試験官が自分の担当した子供に点数をつけ始めた。この学校は騎士を目指す子がほとんどだ。そのため、貴族の子や貴族になるために平民が子供を送る子が来る。しかし、少し調べると、彼はギルド登録していると分かった。ペアの子の採点を終え、ギルドに向かった。
通されたのはギルドマスター室。そこでレイというこの事について聞いた。するとギルドマスターはこう言った。
「レイについて言えるのはこれだけ。彼には勝てない。どんな魔物が相手でも、どんな人が相手でも。彼は学校を卒業したら正式にSSSランクになる、ウチの秘蔵の子。」
私は彼の事を知りたいと思った。教師としてではなく、魔術師として。
この時、レイは知らない。未だかつて、実技で満点を取ったことがあるものはいないことを。そして自分がその記録を塗り替えたということを。