1 転生前
俺、高山 黎の人生は不幸の連続だった。
家にいる時は、パシリのごとくあれ買って来いと言ってきたり、買って来るのが遅ければ殴られる。学校にいる時は机にマジックで落書きされたり、物を隠されたりとしている。なんだその程度と思う奴もいるかもしれないがこれが案外辛い。教師も何故かスルーをする。学校が終わればバイトに行く。そこでも他の奴に比べてこき使われる。さすがにバイト代を誤魔化したりしないが。
そんな俺にも幸運な事が一つだけあった。それは土、日以外毎日通っている剣術道場だ。剣術道場と言ってもあくまで剣術の習得を主軸としているだけで、後は無手もやる。何故かこの平和な時代で人殺しの技術を教えている。子曰く、
「今が平和な時代だからといって、これから先もそうとは限らない。もしかしたら明日にはその身に危険が迫るかもしれない。成長期は最大の伸び代だ。それを無駄にするのはもったいない。」
らしい。
それはさておき、俺はこの道場に通っている時だけは楽しかった。門下生はこの道場が特殊ということもあり俺一人しかいない。よって、俺はマンツーマンでしごかれている。別に俺がMというわけではない。強くなるのが楽しいのだ。
最初はただの気まぐれだった。初回無料体験という形で一度来ただけ。そこで俺は魅せられたのだ、その技の美しさに。
それから俺はバイトを始めた。それが終わり次第、稼いだお金で道場に入門した。バイトはこき使われようが止めなかった。親には図書室で勉強しているといった。バレたらバイト代を巻き上げられると思ったからだ。
俺には才能があるらしい。そう言われて俺は余計に嬉しくなった。
通い始めて2年半が経った。俺は師匠と闘っても勝てるくらいになった頃、
「黎、免許皆伝だ。」
そう、免許皆伝を言い渡された。この時ほど嬉しく思ったときはない。
「今まで本当にお世話になりました。」
「これからも鍛錬を忘れるなよ。」
こうして僕の道場生活の幕が閉じた。
だが、この後に最悪なことがあった。
俺は師匠に認められて浮かれていた。信号が赤の状態だったので待っていると、女子高生と男子高校生が、言い争いをしていた。ききみみをたてていると、
「おれと付き合ってくれ。」「イヤだ。」「何でだ?」「他に好きな人がいるから。」
などと聞こえる。男がキレて女を突き飛ばした。そして運の悪いことにトラックが突っ込んできた。俺は、全力で走り女子高生を引っ張る。多少の傷は我慢してほしい。だが、そのせいで俺はトラックにはねられた。
「大丈夫ですか!?今すぐ救急車を呼びますから!」
その言葉を最後に俺は意識を手放した。
「おい!お前ら来たぞ!」
「ここに来たということは、あの時の?」
「多分そうでしょうね。」
「こいつには申し訳ないと思っている。」
「そうね、私たちがこの子の運命を奪ってしまったようなものだものね。忙しかったとはいえ、てきとうに生命を造ってしまったからこんなことに。」
「そんなことを言っても仕方がない。この者には、記憶を引き継がせた状態で、ここではない地球へ転生させる。そして詫びを兼ね、我々神がこの小僧に力を与える。異論はないな?」
「当然でしょ。」「当たり前だ。」「勿論です。」 「当然の結果だ。」
この場に集まった全ての神が賛成した。
「まず、ワシからだ。ワシは此奴に完全鑑定と完全偽装をやる。」
「無難ですね。私からは全魔法適正と、MP、INT大補正を。」
「俺は一応武神だから、武術系統のスキルをやろうと思ったが、こいつにはかなりのレベルだぜ。特に剣術は。だから代わりにHPとSTR更に剣術の代わりにAGLに大補正だ。」
「私は、レベルアップ速度2倍と容姿を少々。後は、身につけたスキルをそのまま。」
「最後に俺か?そうだな。殺した奴の力を得るなんてどうだ?名前はそうだな、フォースイーターだ。」
「よし、では送るぞ。」
このようにして俺のスキルが決まり転生が行われた。