第十五話 シロツメグサ
その日レイオンはアキと一緒に野原で寝転がっていた。
だいぶこの家にも慣れたのか、兄弟たちに少しは遠慮はあるものの、やりたいことをやれるだけの実行力は持ち合わせてきた。
「アキ、空が綺麗だな」
レイオンは雲ひとつない晴天の空を眩しそうに眺めた。
「・・・ええ、まぁ」
関心があるのかないのか。
レイオンは苦笑しながら、それでも空を見続けた。
「コンが、明日はカレーが食べたいと言っていましたよ」
レイオンがあまりの気持ちよさに意識が半分飛んでいる時に、突然アキはそう口を開いた。
だから反応が遅れた。
「・・!カレーか。わかった、私もそろそろ食べたくなってきた頃だったんだ。コンはよく私の事をわかってるなぁ」
レイオンのその反応にアキはツッコむことをやめた。
さすがに白い目で見てしまうことは仕方がない。
「で、なんですか。何か話したいことがあるからこんな野原に連れてきたんですか」
「え?ない、ない。なんだいそれ、はは。親はいつでも子と会っていたいんだよ?知らないのかい?」
「あいにく、持ったことがありませんので」
「それにしても、敬語がうまいねぇ。一種の才能だね」
そのレイオンの反応にアキはこいつどうしようもねぇな。と心から思った。
敬語を使うのに、才能もクソもあるか。
確かに孤児街に住んでいた人間が、敬語なんてモノを知っているのはおかしいが。
そよ風がふく。
その風に揺れたシロツメグサの匂いがする。
辺り一面のシロツメグサが、二人を歓迎するようにもう一度風にふかれた。
「!・・お父さん、何やってるんですか」
「え?花冠だよ。アキにとても似合うと思ってつくつてるんだ。アキが、私に心を開いてくれた記念だよ」
なわけあるか。
アキは、起き上がって花冠を作るレイオンを見てため息が出るのをどうにか押し殺した。
心を開いた?
ならどうして、俺は敬語を話している。
まだまだ、警戒をしているからじゃないか。
それもわからないのか。
アキは心の中でレイオンのことを鼻で笑った。
「最初の愛想笑いが消えて、私はとても嬉しいよ。秋は本当にいい子だね。これからも兄弟立ちをよろしく頼むよ」
!そうだった。
俺は最初、何からなんでも楽しいですアピールしていたんだ。ん?どこから、それをしなくなった?
「アキはやっぱり、私の子だね。自分を分かってない鈍感さとか。」
レイオンが楽しそうに、口角を上げて笑った。
なんだか、アキはよくわからなくなってきた。
真剣に花冠を作っている、レイオンや、何年も前からアキがいたようにふるまう兄弟たちも。
「さぁ、できた。ほい。・・・はは。ってかわいすぎるじゃないか。なにか残しておけないのか。もー、本当にアキは可愛いな」
「・・・ありがとうございます。でも、可愛いはやめてください」
「え!?じゃあ、この可愛さを何で表現すればいいんだ?!?!」
あまりにもレイオンが真剣にいうので、アキは吹き出した。
「しらーねよ」
「!!君は確信犯だね。でもかわいー!」
「それだけはやめろ」
余談。シロツメグサは、敷き詰めて使ってたのでツメグサだそうですよ。へぇ。イエス。その反応が貰えてうれしい。




