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01 おもえば入学式1

こんな小学校の担任になったオレはもう終わりかもしれない


01 おもえば入学式1


桜というのは、いまいち理解できない。


日本人として悲しいもんだが、オレには情緒とかなんとか風流な言葉はなく、春一番に吹き荒られながら、桜をみて楽しむというブルーシートの群生には理解しかねる。

花より団子だとかいう言葉もあるが、オレは酒を呑むにもツマミを食うにも屋外で吹き曝されるより、居酒屋かなんかでいただいた方が快適だと思う。しかも、極め付けには花粉症。


いつもながら、わけがわからない季節の到来は、つまり始まりを意味していた。


視線をあげれば、淡いピンクの並木道に目に痛い黄色の列が形成されている。


今日は入学式。


なんだかんだと教師をはじめて何度も到来した春だが、待つ入学式が風情のこころもないオレをなんとなく引き締めるのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーー




「…はい、じゃあ今日は自己紹介タイムにするぞ。今日からみんなは同じクラスの仲間だ。仲良くするんだぞー!

ということで出欠とりまーす」


つつがなく長ったらしい入学式も終わり、オレは新一年生をピク民よろしく引き連れて、新しい教室にきていた。学生のころから思ってたんだが、なんで校長の話って無駄に長いんだろうな。

一年生、誰も聞いてねえだろ。


まあ、気を取り直してチョークを持つ。久々の一年の担任だ。ざわめくクラスに静かにしろと席につかせる。 それでもそわそわしちまうのは仕方ないだろう。

まだこのクラスはマシだな。

一応は席についてる。

座れといったら机に座りだす馬鹿がいないだけマシだ、たぶん。


背中に視線を感じながら黒板をつつく。


「ちなみにオレは伊達だ。あ、ちなみに政宗じゃないからな。って、ごめんな。みんな知らないか」


言いかけてすぐに謝罪をする。

ほんの冗談だってのに…冷たい視線が正面にもう座った黒髪ロングの無表情に向けられた。

耐えられない。オレには耐えられねえ。


なにいってんだ、こいつ。


と、目が明確に語っている。なんだって6歳の子供があんなに冷たい視線を送れるんだ。

戦々恐々としながら、クラス表を手に名前を呼びだすオレだった。



ーーーーーーーーーーーーーーー



「七番、桑尾(くわお) 優華(ゆうか)さん」


ついにこのときがやって来た。さっきオレに絶対零度の視線を手向けたやつの番がやってきたのだ。

内心のビクビクを億尾にもださないよう最大限注意をしながら名前を読みあげる。


ふむ。


優華か。さっきの視線といい、優しいイメージ は全く浮かばないが、華はある。サラサラの黒髪に大きな目。日本美人ではなく、将来はアジア系の美人になりそうな顔立ちをしている。


「……」


それが無表情で見つめてくるのだから怖い。これだけみていて、気づかなかったのか、それとも応える気がないのか。

いずれにせよ、返事がないので再度呼びかける。


「……桑尾さん!」


すると、どうだ。


無表情だった目に心底驚いたという感情を籠めて口を開いた。


「えー!ななばんなんですか、わたし」


そこか!!?


そこなのか!?思わずこけそうになるのを堪え、思わずツッコミそうになるのを堪え、桑尾に視線を向ける。


「七番だ」

「……はぁ」


返ってきたのは気のない返事だ。この際、後ろで少子化だなんだと喚いているのは気のせいということにしていいだろう。

気を取りなおして、クラス表に視線を戻す。


しばらく名前を読んでいると、桑尾と目が合うことが多くなった。

その目は明らかに何かを訴えている。


「……どうした、桑尾」


先程のこともある。少々遠慮しながら尋ねると、桑尾は席から立ち上がった。


「みんな平等とかいいながら、番号つけるってどうなんですか、一年間ななばんてなんて」


なぜそんな自信満々に言うんだ。


「名前だけじゃだめなんですか」



……。

いろいろ言いたいこともツッコミたいこともあるが今はひとまず言っておこう。


ーーーーそーゆー制度なんだよ!!



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