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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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番外編 国際野球ワールドカップ 6

「いやー、いい試合だったね!」

「煽りよる……!」



 試合後、勝利の喜びを分かち合うために三くんに話しかけると忌々しそうな眼で私を睨んできた。おかしいな、今日7回3失点の好投手様に声をかけただけなんだけどな!


 日本対アメリカの日米野球国際大会版は日本の勝利で幕を閉じた。今回の米国チームはホントーに調子悪いね。投手もピリッとしない上に打線は一人以外完全沈黙だもん。そのアンジーに1本打たれて三くんとしてはご機嫌斜めだけど、気合が入ったアンジー相手にランナーなしでも1発に抑えたって考えると三くんは頑張ったと思うよ?


 ただ、アンジーをなんとか単打で終わらせた次のバッターに甘い球をスタンドインされちゃったのは良くないけどね。仮にも国際大会に出てくる米国代表の5番を甘く見ちゃ駄目でしょ。抑えられたアンジーがブスっとした顔で三くん見てたじゃん。


 まぁ、それでも要所要所をなんとか〆て三くんは無事に7回までを乗り切り、味方の大量得点もあってしっかりと勝ち星を挙げたんだから及第点以上の活躍と言っていいでしょ。



『うーん。やっぱりチームが負けるのは悔しいなぁ。ねぇアマネ、この後甘いもの食べに行かない? やけ食いしたい気分』

『そのお誘いはひっじょぉに嬉しいんだけど、ごめんアンジー。私次の台湾VSオランダの試合解説があるから』

『なんで選手のアマネが解説してるの?』



 首を傾けたアンジーの言葉に空を見上げる。なんでだろうね。一か月前の私に聞いてほしい。


 あ、そうだ。



『ねね、スイーツの代金は私(伯父さんマネー)が出すからさ。一緒に解説しない?』

『え、良いの?』



 道連れを用意し、更に球場近くのパナマスイーツを食べる。コレだ! と名案を思い付いた私はアンジーを言葉巧みにそそのかして解説相手をゲット! 地元のアナウンサーさんも悪くはないんだけどやっぱり野球を知ってる相手との会話の方が話は弾むし、アンジーは日本で高校生をやりながら北埼玉デッドボールの試合に出場してたから知名度もある。その辺をぶっ刺すためにもこれは良い手なんじゃないかな。


 自画自賛しながらアンジーと一緒に放送席へ移動し、撮影スタッフさんに頭を下げまくってなんとかアンジー用の席と近くの屋台で売っていたというフルーツを使ったスイーツをゲット! これを食べながら実況解説へと臨んだわけだけども。



『あれ、今のストレート。絶好球なのに勿体ない』

『内角低めギリギリのストレートは絶好球とは言わないよ! アンジー!』

『え、でもあのくらいの球速なら打ちゴロじゃないかな。腕を畳んで救い上げればホームランだよ』

『140km/h後半の球はね! コースに投げ分けられると早々打てないんだよアンジー!』



 ここで大誤算。アンジーと私のコンビは軽快に話を続けられるんだけども、アンジーの普通と世間一般の普通が大分ズレてる事が発覚したんだ。いや、アンジーが言う事は正しいんだよ? これこれこういう風にすれば打てるでしょって言ってるだけでそれはね。確かにその通りなんだ。


 ただ、このアンジーの解説を聞いてる野球関係者は多分みんな「それが出来たら苦労しねぇ……!」って青筋浮かべてるだろう。言うは易く行うは難しの見本みたいな発言ばっかりだからね。


 おかしいなぁ。北埼玉デッドボールの試合でアンジーとお話しするときはこんなんじゃなかったんだけど。いや、まぁ強い草野球チームってレベルの北埼玉デッドボールとナショナルチームを一緒にしちゃいけないんだけどさ。


 あ……そっか。多分、ナショナルチームだからだ。北埼玉デッドボールと違ってナショナルチームはプロ級の選手もゴロゴロいるから、その分アンジーの基準が高くなってるんだろうね。きっと。だから「プロならこれくらいできるだろ。自分は出来るし」って感じで口に出てくるんだろう。


 原因が分かってスッキリした! けど原因が分かったからこそ問題の解決なんて無理だってのも分かった! チクショウメェ!


 こ、こうなったらプランBだ。アンジーの天然ハーフ畜生発言はもう止められそうにないからソフトランディングを。超ド正論の「そんなんお前しか出来ない理論」が出てきたら私がなんとかボケてアンジーのキャラを天然毒舌ゆるふわ野球ガールくらいになんとか落ち着けないと!


 なんて固い決意を心に誓いながら試合は進んでいき。



『試合終了! やはり優勝候補のオランダは強かったですねAMACHAN、アンジーさん』

『気づけば試合が終わっていました。この試合中自分が何を言っていたかよく覚えていません、お疲れ様です』

『アマネ、デッボーの試合の時みたいで凄く楽しかったね!』



 キリっとした表情を浮かべたまま手に英語で『ボケて』と書かれたカンペを持った私と、満面の笑みで解説業を楽しんだらしいアンジーのアップでこの試合の実況中継は終了した。アンジーの天然の超天才発言を上手く人間レベルに落とし込みながら実況をグダらせない。我ながら完ぺきなムーヴだったと思う。


 ただ二度としたくない。死ぬほど疲れた。こ、これなら一人で鏡を持ってきて一人二役とかやった方が100倍くらい楽だったよ。


 え、またやりたい? ご、ごめんねぇアンジー。私の胃とか諸々のためにここは涙を呑んで次のオファーをお待ちください。






 祝! 日本ナショナルチームは予選リーグ突破決定である。いやぁ、カナダアメリカに勝ってまさかの伏兵プエルトリコ代表に先発がぼっこぼこに打たれて試合がぶっ壊れるなんて事が無ければ全勝狙えたんだけどね。それでもリーグ2位の成績で予選Aグループ突破である。


 若干心配だったアメリカ代表も全打点の半分をアンジーが打つ4番無双で打点を荒稼ぎしてリーグ4位通過。ギリギリだけど第2ラウンドへと駒を進めてきた。


 ここから先はAグループ上位4チームとBグループ上位4チームによるラウンド2が行われ、更にこの中から上位4チームによって決勝ラウンドが行われることになる。つまりこっから先は総当たり戦になるわけだ。


 こうなってくると、どのチームにケーちゃんをぶつけるかが重要になってくる。三くん? 三くんはアメリカ代表にぶつけてアンジーにリベンジしてもらわないといけないからね。いや、冗談抜きで。アンジー相手だとケーちゃんと三くん以外は燃やされそうだし、ケーちゃんはどのチーム相手でも勝率が高いからね。両リーグ一位のプエルトリコ代表かキューバ代表にぶつけたい所なんだよ。


 その点三くんはアンジーに打たれても気合が入るというちょっとM気質な所があるから(偏見)アメリカ代表相手でも安心して見てられる。あとは打線が頑張れば今大会のアメリカ代表は何とかなるでしょ。多分。


 あと欲張るとしたら、大量得点のバカ試合ばっかりであんまり出番がないから投球チャンスが欲しい所かねぇ。このままじゃ日本代表の1番センター権藤あまねで皆に覚えられちゃいそうだ。先発陣の調子次第では先発に回してもらえないか監督に交渉してみようかな?



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