わい、戦う
「わい、戦う」
「花楓殿!!」
「耕太郎君!!」
花楓殿のいる部屋へ突入。
先ほど散っていったヤクザの者どもは全員、応援に来た警察官に逮捕された。
日本警察は本当に優秀でかっこいいでござる!
「な、またてめぇ!? どうやってあの量を切り抜けたんだぁ!?!?」
下半身丸出しの男、郷田長龍がわいの姿に驚く。
全身タイツのわい、郷田長龍の下半身に驚く。
「お主恥ずかしくはないのか? 今すぐ自白して、少しでも罪を軽くすることをお勧めするでござる」
「すでにここは包囲されている! 今すぐ罪を認めれば、少しは復帰が早くなるんじゃないか?」
しかし、怒り心頭の長龍はその懐、そもそも懐にはグロテスクなイチモツしかないのだが、車いすに装着されていたピストルを構える(イチモツを構えたわけではない。それは気持ちが悪いだけである)
「うるぅせあああ!! 邪魔しやがって!!」
そのピストルからは銃弾が放たれる。
それがわいではなく、高田殿の右足に命中。
高田殿は鈍い痛みに苦悶する。
「き、貴様なんてことを!! 卑怯でござるぞ!!」
「黙れ黙れ黙れ!! お前のような超人のほうが卑怯だろうがああああ!!」
「こ、耕太郎さん、私のことは構わず、奴を、倒して、彼女を、救ってください……!!」
にじみ出る血を高田殿はハンカチで抑え、応援を呼んでいる。
「いま、今すぐ倒すでござる」
「おおーと動くな豚野郎!! 今この女には俺とこの二人の男の銃口が向いてんだぜ!? 俺達でもてめえに一人ボコされる瞬間は見逃さねえ! さすがのお前も! 頭にくっついた銃口からの弾丸は防げねぇ!! 今すぐここで俺達に謝れ! そしてお前が死ぬ条件を吐け! そしたらこの女は逃がしてやるよ!」
「な、なんだと……」
「十秒だ!! 決心に七秒! 膝をたたんで頭を地面に擦り付けるまでに3秒くれてやる! ほら! とっとと決めなッ!!」
俺は軽く後ずさりをする。
「10」
「耕太郎さん……!」
「9」
いったいどうすれば。
「8」
三人を同時には倒せない、密着した銃口からの銃弾は、防げない。
「7」
静かな空間で、唯時だけは、いつも非情に、誰にだって無慈悲に流れる。ただ、平等に。
「6」
子供の頃からそうだった、時間が過ぎるのは自分のせいではないからと、目の前のものをそのまま受け取り、何かを変えてやろうと努力したことは無かった。
「5!」
いつも一人だった。ほんとは逃げていただけだった。できないことが悔しくて、いくら頑張ってもダメだったから、頑張らなければすべて解決だと、勝手に判断して、そして逃げた。
「4!!」
もう、数十年も、俺は一人だった。
「また、ダメなのか……?」
「決心はついたか!? 3!!」
囁くような声が聞こえる。
「耕太郎さん、僕が左のやつを撃ちます」
「何をこそこそ話してんだァッ!? 2!!」
「な、何を」
「耕太郎さんは一人じゃないです、一緒に、困難を切り抜けましょう」
な、お、俺は、俺は……
「いいのか!? 殺っちまうぞ!? イイィィィチィッ!!」
俺は! 一人じゃなかったのか……。
「残念だよ、豚野郎」
「耕太郎君!」
「撃ちます!」
困難が現れた時、逃げるのではない。 立ち向かうのではない。 だって勝てないから。 でも、二人なら。
俺は高田殿の発砲音と同時に長龍と右の男をぶん殴る。
男たちは宙を舞う。
そよ風が吹くような一瞬の出来事。
俺の世界が変わった、たった10秒ほどの出来事。
気絶した男たちの体が地面に着くころ、静かに舞い上がる埃の中で俺は高田殿のほうへ顔を向ける。
「高田殿、いや、高田さん、本当に、本当に、ありがとうございました!」
そういう俺の頬を涙が伝った。
第9話「わい、戦う」
次回で一応区切りです。
続くかもしれませんし、続かないかもしれません!
明日も夜投稿です! よろしくお願いします!!