プロローグ:アグネスの四輪花と、一人の不審者
こちらでは久々の投稿です。疲れた時に読めるギャグを意識しました、よろしくお願いします。
その光景は、後に王立女学院の歴史において『奇跡の調和』と語り継がれることになる。
夕暮れ時の校庭、黄金色の光が降り注ぐ中。
学院の頂点に君臨する四人の令嬢たちが、一人の「少女」を囲んでいた。
「見て、アルベルタ。この夕日さえ、あなたの気高さの前では色褪せて見えるわ」
公爵令嬢エレノアが、心酔しきった瞳で「彼女」の手を取る。
「次に会う時は、その夕日よりも熱い勝負を挑ませてもらうわよ、アルベルタ・グレイ!」
伯爵令嬢シャーロットが、鉄扇を構えて凛々しく宣言する。
「ああ、アルベルタ様……。風が冷たくなってまいりました。わたくしのこのショールで、その華奢な(※がっしりした)お身体を温めて差し上げなくては……!」
男爵令嬢リリーが、今にも泣きそうな過保護な眼差しで歩み寄る。
「ふふ……最高だわ。これこそが、わたくしが追い求めた真実の物語……」
侯爵令嬢イザベラが、恍惚とした表情でその全てをノートに刻みつける。
取り囲む数百人の生徒たちからは、祈りにも似た溜息と、割れんばかりの拍手が巻き起こっていた。
「麗しき姉妹の絆……!」
「アグネスの四輪花に、永遠の祝福を……!」
――だが。
その中心に立つ「彼女」こと、アルバート・グレイの内心は、ただ一つの叫びで埋め尽くされていた。
(…………どうしてこうなったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)
俺は男だ。
見てくれ、このドレスをはち切れんばかりに押し広げる大胸筋を。
聞いてくれ、さっきから裏声を出すのが限界で漏れかけているこの低音を。
俺はただ、没落寸前の実家の商会を救うため、母上の無茶振り一つで、この魔窟に放り込まれただけのしがない商人なんだ。
バレたら終わり。
即座に衛兵に突き出され、グレイ商会は歴史から消える。
そんな崖っぷちで必死に生き延びようとしているだけなのに、なぜか懐かれ、ライバル認定され、儚い存在として守られ、小説の主人公にされている。
おかしい。
この学院の奴ら、誰一人としてまともに俺を見ていない。
(バレろよ!頼むから誰か一人くらい、俺が女装して潜入している不審者だってことに気づいてくれよ!!)
だが、俺の悲痛な叫びは届かない。
周囲の熱狂は加速し、俺をさらなる伝説の深みへと引きずり込んでいく。
これは、女装して女学院に潜入した商人の跡取り息子が、なぜか誰にもバレず、むしろ最高峰の令嬢たちに全方位から囲まれて、物理的にも精神的にも逃げ場を失っていく――そんな理不尽極まりない物語である。
とりあえず10話以上は書き終わっているので、どんどん投稿していきます
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