第3話 後編
勝ち誇った様子のマイナルは、拾ったサイコロをナキに手渡す。
「ションベンは無条件負けが常識だけど、今回は厳密に決めてなかったね。特別にやり直していいよ」
「……わかった」
ナキは慎重にサイコロを放る。
サイコロは奇妙な動きでまたもやテーブルから落下した。
大げさに肩をすくめたマイナルは宣言する。
「こいつはさすがに言い逃れできないねぇ。あたしの勝ちだ」
「…………」
ナキは無言でシャツを脱ぐ。
その途端、野次馬は怒声に近い声を飛ばした。
「男の裸なんて興味ねえぞ!」
「マイナルを脱がせろ!」
そのまま両者は二戦目に突入する。
しかし、またもやサイコロを落としたナキが敗北した。
三回戦、四回戦も同様の結果となる。
あっという間にナキの衣服は下半身を隠す下着だけとなり、その姿をマイナルが嘲笑う。
「ははは、情けない姿だねぇ」
「ナキ……」
ライアンは心配そうにナキを見る。
ナキは真剣な眼差しでサイコロとナキの手元を凝視していた。
余裕の態度のマイナルはナキの腕に触れて問う。
「脱ぐものがなくなったら義手と義足を外すかい?」
「不要な心配だ。俺はもう負けない」
「大した自信だね。何を根拠に言ってるんだか」
嘲るマイナルがサイコロを投げる。
今回は3のゾロ目だった。
「イマイチだけど、ションベン小僧には負けないね」
サイコロを握ったナキが立ち上がり、マイナルの顔を見つめる。
マイナルは首を傾げて見つめ返した。
「なんだい」
「己の勝利を疑っていないな。よほどスキルに自信があるようだ」
「!?」
刹那、マイナルが目を見開く。
彼女が何かを言う前に、ナキは素早くサイコロを投げた。
マイナルが慌ててテーブルに手をかざす。
「くっ……!」
サイコロは不自然な挙動で転がってテーブルから落ちそうになる。
しかし、テーブルの端をなぞるようにスピンし、最終的に6と4で止まった。
野次馬達が顔を見合わせる。
「6と4だから合計は10!」
「マイナルは乗算でも9……」
「つまり勇者の勝ちだァッ!」
予想外の結果に室内が歓声に包まれる。
マイナルはテーブルに手をついて動揺していた。
「ど、どうして……」
「お前が【風魔術】のスキルで俺のサイコロを落としていたのはすぐに気付いた。だから何度か観察して風の流れを読むことにした」
ナキは冷静に語る。
マイナルは顔を歪めて黙っていた。
「風の強さ、角度は常に一定だった。自分の出目を風で操作しない点から、連発できないことも予想できた。だから最後の一投は、風を受ける前提で強い回転をかけて、テーブルから落ちることを防いだわけだ」
「で、でもションベンは避けられても、出目までは操れないはずだよ!」
「承知の上だ。俺の目的は、勝負を五分五分に持ち込むことだった。出目は運に任せた」
平然と述べるナキに、マイナルは呆気に取られる。
それから彼女は愉快そうに笑った。
「ふふ、ギャンブラーらしくなったね」
マイナルが豪快に上半身の服を脱ぎ捨てた。
野次馬達がどよめき喜ぶ。
周囲からの視線に晒されながらも、マイナルは堂々とナキを指差した。
「上等だよ! 次こそあたしが勝つ!」
「やってみろ」
ナキも怯むことなく応じるのであった。




