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FPSゲーマーの転生先なんて決まってる!~ストーリーモードなんて覚えてる訳ない~  作者: 栗飯


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152.拡大



side:アッシュ



僕たちはレストデーン城壁の仮拠点へと向かっていた。

まさか、メラリア司令本部を数時間で壊滅させるとは想定していなかったので、城壁付近に仮拠点を設営してもらっていのだ。


僕はスティーブンさんと明日の予定を確認する。


明日には掃討戦を行いながら、レストデーンを完全に取り戻すことになるだろう。

それも…


「リリーナがいればゲリラ戦も怖くないです」


「そうだね。伏兵が意味をなさないんだ。ゲリラ戦で注意すべきは罠関係だね。メラリア軍にそこまでの猶予があったとは思えないけど、注意する分にはいいだろう。

正直、今回の戦闘、メラリア軍の指揮官には同情するよ。私もこんな理不尽な相手の指揮は取りなくないね。

あ、でもアッシュはそれをやってたのかな?」


「……学生時代は毎日演習してましたからね。

でも、あの頃のリリーナは常時発動ではなかった………

のに、勝てませんでしたね。ハハッ」


僕は懐かしく思い返す。


……あれ?


笑いながら撃ってくるリリーナ。

ニコニコしながら、「じゃあね」と引き金を引くリリーナ。

遠くで笑い声が聞こえる思ったら、次の瞬間にはリリーナに殺されてた。


楽しそうに笑いながら撃ってくるリリーナばかりが脳裏を過ぎる。

……今とあんまり変わらないかも知れないな。


「彼女に能力がなかったら、参謀本部入りしそうだね」


「リリーナは現場がいいって言いそうですけどね」


勝敗は決したレストデーン。僕たちは和やかに作戦を、立てていた。


城壁に着くと、何やら騒がしい。

活気に満ちた喧騒とは違う。これは戸惑い?

皆の視線が固定されていたため、僕もつられて振り返る。


「……煙?」


視線の先。

街の奥……司令本部より南側の方向から、紫紺の煙が空へ昇っていた。怪しい緑の閃光が迸っている。


「なんだあれ?……」


呟いた瞬間だった。

紫紺の煙が地上を馳けてきた。


咄嗟に息を止め、両目を瞑る。

毒ガス?

だが、今のところ痛みはない。


気付けば風の勢いも止み、静寂に包まれていた。


恐る恐る片目を開ける。最悪、片目の犠牲で済むように。

しかし、そこには先程と同じ街並み。仲間達。隣にはスティーブンさんがいた。


「今のは?」

スティーブンさんが呟く。

僕よりも、いや、この場で最も知っていると思われたスティーブンさんが知らないという事実。


「メラリアの新兵器でしょうか?」


「……いえ、だとしたら既に異常があってもおかしくありません」


「失敗したのでしょうか?」


「…断定はできません。先程、立ち上がっていた紫紺の煙が消えています。司令本部に残ったトニー団長へ連絡を。向こうで何かあったかもしれません」


スティーブンさんが冷静に分析を初めている。

僕も焦るな。

不測の自体、焦ったらダメだ。


これだけの規模の事象。ただ事じゃない。


「……レガシーアイテムが絡んでいる?」


「私も同じ予想です…」


僕の思い付きの呟きに、スティーブンさんが同意する。



ドン!!!


空に炎の花が打ち上がる。


「ッ!?」


目が見開かれる。

夜空に咲く巨大な炎。それを見て、スティーブンさんが静かに口を開いた。


「……デイビッドさんですね」


低く落ち着いた声で、炎の合図を見上げている。


「何の合図?」


その時だった。

僕らに駆けよる足音。


スティーブン(ウルフ)様ッ!!」


伝令兵が飛び込んできた。

息が上がり、顔は蒼白だった。


「どうしました?」


兵士は震える声で報告する。


「死体が……動いています!!」


一瞬、沈黙が落ちた。


「……は?」


伝令は叫ぶように続けた。


「死体です!!戦死したメラリア兵が……立ち上がって兵士を襲っています!!しかも、安置所から死んだはずの仲間も、正気を失って動き出してます!」


僕らの周囲にいた兵士たち空気が凍りつく。

あまりの出来事に僕の思考は一瞬停止してしまう。

だが、スティーブンさんは早かった。


「原因は分かりませんが、先程の煙が死体を変質させた可能性が高い」


スティーブンさんは顎に手を当てながら、淡々と分析する。

まるで、想定内の出来事のように。


「味方の死体も動き出して暴れているのですね?」

「は、はいッ!」


「……総員、城壁を上がります!急いで!城門は閉じてください」


スティーブンは即座に命令を出した。


「レストデーンを封鎖します」


「はっ!」


スティーブンさんの冷静な指示に兵士達が一斉に動く。



「ァァァァ゛…」

本当に、動いている。

弾丸を何発も受けているのに倒れない。

動く死体はアルステリア軍の軍服をきている。

味方であったろう彼の瞳に生気はなく、紫色に光る。

一目で正常ではないと悟る見た目であった。


踏み出せなくなった味方をかき分け、僕は最前列に出る。

僕は参謀本部の所属だ。

彼等よりも、別部署である僕が殺る。まだパニック状態の彼等の負荷を僕が受け取る。


襲いかかって来る右手を、左手で払いながら掴んで下に引っ張る。

その紫に光る眼光は体勢を崩しても尚、僕を見てくる。

その眼前に僕は銃口を突き付ける。


「すみません……」

ドンッ!


眉間に一発。


目の光が消えた……


先程、崩した姿勢からそのまま崩れ落ちるように、再び死者へと戻る。


「アァァア゛…」

まだ他にもいる……

敵は2体


僕はナイフを取り出して、左手に逆手で持つ。

右手はハンドガン【オヴィ】。


左手を支えに構え、顔を狙う。

血痕を見る限り、既に銃弾を腹部に受け、死んでいたはず。

ならば、先程と同じように、眉間に撃ち込む。


ドンッ!


倒れた………

一発で倒れた。

道中、メラリア兵を倒す際は、腹部に大量に撃ち込んでいたにも関わらずだ。


……頭は確実。


もう一体の敵が襲ってくる。

僕は掴んできた腕をオヴィのグリップで叩き、弾く。

そこで開いた脇腹に左手のナイフを突き刺して、心臓を貫く。


「ァァア゛」


それでもコイツは動きは止まらなかった。

ナイフを刺したまま、骨に引っ掛けて無理やりうつ伏せに倒す。

そして、後頭部を撃ち抜いた。

今度こそ、沈黙する敵……


なるほど。


「弱点は頭。心臓は意味が無い、遭遇したら頭を狙うようにしてください」


僕はわかった情報を共有する。


「……アッシュさんって、強いんスね」

一緒にいた通信兵さんが驚いている。

いや、周りのみんなもか……


「参謀本部の人って頭が良い人ってイメージで、勝手に動けないんだと思ってました。すんませんッ」


「いや、謝らなくていいですよ。

僕だって、実技はクラスじゃ下から数えた方が早かったんですから……」


そう答えると、みんな更に驚いた顔をする。そんなに凄かったか?

リリーナなんて僕がナイフを一振する間に、2度は振るし、シアなんて、一振で2人持っていく。


スティーブンさんが割り込む。

「いや、彼は狂気の世代ですからね?

アッシュが……彼の世代がおかしいので気にしないでください。

私は普通に弱いので助けてくださいね」


「君が……」

「あぁ、これが狂気の世代か……」

「うへぇー。道理で見たことある顔だ……」


兵士たちは急に納得したように、すげぇな。とかマジで強ぇんだな。

などと口々に感想をこぼしている。


その呼び名は知ってるけど、いつの間にかそんな認知になっていたんだね。

【狂気の世代】と呼ばれる、僕らのクラス。


リリーナがバグっているから隠れているけど、シアやカンナは間違いなく天才だと思う。

2人とも能力をものにして高みへと駆け上がっていく。

リリーナがいない間、今度は2人が噂にもなっていたし。

ただ、彼女達が強いだけ……


そんな彼女達に追いつきたくて頑張っていただけなんだ。

上を知っている僕らは自分達が強いとは思えなかった。


リリーナが戻ってきてから、異常さに更に噂に磨きがかかっているようだから流石だよ。

リリーナは。



………ん?あれ?

さっき……

気になって振り返る。


「あ!?えっと……赤猿先輩!?」

「ワイリーだよ!!」


リリーナと一緒に帰ってきたという先輩が第3師団の兵士に紛れていた。


「ったく...こっちからしたら、お前らの世代は全員おかしいんだからな!」


「そ、そうなんですか?でも、比べたら……」


「アイツと比べるのは辞めとけって!ありゃ、異常値だ。敵には同情するね」


「フフッ」

口調は雑だが、リリーナを信頼していることが伝わってくる。

リリーナが褒められているようで、僕は思わず笑ってしまった。


「そうですね。この事態もなんとかなる気がしてきました」



そのまま僕を先頭に、城壁を駆け上がる。

城壁の上から、僕は街の外を見た。


そして。


「……あ」


思わず声が漏れた。

城壁の外。

今朝まで戦場だった平野。


そこには、無数の死体が転がっている。


アルステリア兵。

メラリア兵。


砲撃で吹き飛び、

銃撃で倒れ、放置された死体。


両軍の死者を合わせれば如何程だろうか。



「……」


背筋に冷たいものが走る。

平野のあちこちで、死体が動き始めていた。

腕が上がる。

ゆっくりと起き上がる。

濁った紫の目。


「……こりゃ、ちょっと、アイツでも簡単にゃ行かねぇな」


ワイリーさんが呟いた。

死体が立つ。


一体。

十体。

百体。


倒れている死体が、次々と立ち上がっている。


その数は優に千は超えている。

ゾンビの群れは、レストデーン城壁へ向かってきていた。

既に日は沈み、いつもならば月夜に照らされているはずのレストデーンの空。

しかし、紫紺の煙が上空を覆い、緑の稲妻が迸る異様な状況となっている。


「…………」


城壁の上の兵士達が言葉を失う。こんな状況じゃ無理もない。

スティーブンさんが静かに言った。


「…このレストデーンの地には古い伝承があります」


「伝承?

この件が何か知ってるんですか?」


スティーブンさんは何か知っているようだ。

しかし、その表情には驚きも垣間見える。スティーブンさん自身も信じていなかったもの。


「おそらく、あれはゾンビ……

気をつけてください。あれに噛まれたら感染します」



感染……?

この物量で??


「これはもう戦争ではありません」


スティーブンさんは城壁の外を、死の軍勢を見下ろす。


「災害です。ここで食い止めなければ、アルステリア全土に広がります」


ゾンビの群れが、城壁へと押し寄せていた。



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― 新着の感想 ―
生きてるメラニア兵をわざと噛まさせてから放逐すれば、いずれリリーナが敵地を襲う時になって感染者を◯してからから効いてくる。エンドの浅はかな逆襲に対する強烈なカウンターとなってメラニア本国を襲うことでし…
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