151.ゾンビって何?
side:シア
「おいおい。さっき、リリーナの奴、笑ってたよな?」
ショーンさんが顔を引き攣りながら、話す。
私もそう思った。
「ですね。この状況で凄いです!」
「いや、凄いとかじゃねぇよ?」
ショーンさんはそう言いながら、ゾンビへ発砲する。両手を上げながらこちらに迫ってくるゾンビ達は、私の氷によるこの段差を超えることが出来ず、見上げている。
リリちゃんが言っていた通り、顔が弱点のようで、顔に撃つと動きを止めるようだ。
「なんなんだコイツらは!?
って、おいおい……
嬉々としてぶっ殺してるじゃねぇか。アイツにビビるって感情はないのか?」
遠くで、兵士を助け、危なげなくゾンビを屠るリリちゃん。
遠くからでも分かる……笑っているって。
「リリちゃんは天才ですからね。死者が蘇ろうと驚きません」
「シアはそうだよな……うん。まぁ、アイツがすげぇのは分かるが……
なんでだろな?素直に称賛できねぇのは……」
あはっはっはっ……
リリちゃんの笑い声が聞こえる。
「……嫉妬?」
「違ぇよ!!絶対、戦闘狂なとこだろッ!」
昔から模擬戦大好きなリリちゃんだったけど、再会した頃は、心を殺しているようにも見えた。
今は……心を殺すというより、完全に割り切った感じ?かな?苦しそうな感じが消えた気がする。
今はとにかく、リリちゃんが楽しそうなら良いと思う。
「それがリリちゃんの良いところですよ」
「シアに何を言っても無駄だったか……」
ショーンさんが頭を抱えてしまった。
何故でしょう……
「おーい!ショーンさん、参謀本部のスティーブンさんに連絡してー!!
城壁を封鎖、ゾンビはレストデーンから出さないように!
あと、本部に増援よこせー!って!」
リリちゃんがゾンビ越しに次のことを話してる。
「いや、おい!まずゾンビってなんだよ?」
ショーンさんはまだ言っている。
でもね、リリちゃんがゾンビと言ってるなら、それはゾンビって言うんだよ。
「早くー!!」
「……わーッたよ!
おい、通信兵はいるかッ!?」
ショーンさんがさっきのリリちゃんの話を実行しに行った。それと入れ違いに、デイビッドさんがこちらに近付いてくる。
「シアくん。この氷はシアくんだったね?」
「はいッ!リリちゃんの指示で作りました」
「なるほど……素晴らしい。
して、相談だが、残りの敵を焼き払おうかと思うのだがね。氷の足場はどのくらいの温度なら耐えられるのかい?」
確かに敵は多い。
デイビッドさんの炎なら一網打尽だろう。
「それなら溶けないように生成し続けるのでやっちゃってください」
「ん?そ、そうか。でも、魔力は大丈夫なのかい?まだ敵は残っているぞ?」
「はい、まだ大丈夫です。でも、キツかったら言いますね」
「あぁ、そうしなさい。準備はいいかな?」
「いつでもどうぞ」
私は足場に両手を触れて、魔力を込める。
デイビッドさんの手から放たれた炎が氷の足場に沿って広がる。
やっぱり凄いコントロール。
同じ炎魔導師であるハーヴィンが言っていた。放った後の炎を思うように動かすのは難しいらしい。
確かに私も一度氷を創った後、それを更に動かすのは大変だ。
それをデイビッドさんはまるで生きているかのように動かす。炎の渦がゾンビを根こそぎ喰らう。
「凄い……」
密集していたのもあるけど、一気に片付けてしまった。
「ざっと、こんなものだね…」
デイビッドさんが事も無げに言う。やっぱりネームドは凄いね。
私も早くリリちゃんの役に立ちたいな。
(この子の氷、全然溶けなかったね。それだけの事をしているのに、疲労している様子もない。
ショーンくんの言う通り、実力は殆どネームドレベルだね)
(そうでしょう?)
戻ってきたショーンさんに対して、デイビッドさんがなにかアイコンタクトしていた。
きっと、デイビッドさんはどんなもんだい?とショーンさんに言っているのだろう。
ショーンさん……
仕方ないです。ショーンさんは対個人が強いんですから、対多数はデイビッドさんに軍配が上がります。
大丈夫です。私はショーンさんが強いこと分かってますから。
「お、おい、シア?なんだその微笑みは?」
「え?なんでもないですよ。大丈夫です」
「お前、なんかリリーナに似てきたな……」
「エッ!?本当ですか?やったぁ!」
「……褒めたんじゃねぇよ。
まぁいい、リリーナ。この辺にまだそのゾンビって敵はいるか?」
「よっと。んー、いない……けど、街の方はいるね」
リリちゃんが軽い掛け声と共に、氷の足場の上まで駆け上がる。
ゾンビはここだけじゃないんだね。
やっぱりさっきの紫の煙だよね?それが死体を蘇らせて、生きてる人を襲うようになっちゃうってこと?
ッ!?
……私はそれに思い当たる。
ハンナさんとエマちゃん……
潜入した時に助けてくれた親子。
レストデーンには避難所がある。だけど、市民全員は入れなかった。
溢れたハンナさん達のような人は自宅で怯えて過ごすしかなかったんだ。
助けないとッ!
「リ「よし。街に行くよ、シア」ッ!?うん!」
私が言う前にリリちゃんからそう言われる。
以前と違って、今は私と一緒に行くと言ってくれる。
置いていかれないことが、何よりも嬉しい。
私はクウィントンの時に思い知った。
一緒に行きたいのに、危険なところに1人だけ行かせてしまう悔しさ……
無理に行っても、足手まといにしかならない歯痒さ……
不甲斐ない自分が嫌になった……
大好きな人に危険なことをやってもらうだけの自分に……
リリちゃんの隣に居るには強くなきゃいけない。
「リリーナ、そのゾンビってのはなんなんだ?」
「あー、そっか。まず知らないのか。えーと、死体が蘇るやつで……」
「おう、それは見たまんまだが...
あれをゾンビって言うのか?さっきの煙か?なんで生き返ってんだ?」
「だいたいはウイルスですけど……
そういえば、なんでかは知らないですねー。
強いていえば、仕様ですね。あ、あと噛まれたら感染してしまうんで絶対噛まれたらダメですよ!」
「マジか……接近は万一があるってことか。そりゃ外に出せないな」
あれ?さっきリリちゃん思いっきり接近戦してたよね!?
「街はどう制圧するか、作戦はあるか?」
私が驚いている間にも、ショーンさんがリリちゃんに作戦を聞いている。まずリリちゃんに聞く辺り、なんだかんだ言いながら信頼しているよね。
「まずは包囲して逃がさないことですね。城壁もヤバいですよね?」
「あぁ、ヤバい量がいるらしい」
「んー、じゃあ本隊は城壁に合流しましょうか。あの空の感じゾンビはレストデーン付近だけだと思いますが、ここで封じ込めないとヤバいですよ?」
「だな。だが、街中はどうする?民間人もいるぞ?」
「そこは少数精鋭ってことで。倒すだけなら余裕です」
あ、そっか……
レッドアイに映るのは敵。レーダーに映るのは味方兵士。
民間人は目視以外の方法がない。
リリちゃんは知らない。民間人がまだ沢山街中にいることを……
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