143.対処法
衝撃。
視界が揺れ、世界が横に流れた。
私の体が吹き飛ばされ、背後の壁に叩き付けられる。
石が砕け、砂埃が舞い上がる。
「―ッたい……!」
左のこめかみ辺りから痛み。
そこから熱いものが流れる感覚。
自動防御装置【ジュラ】試作八式により、私の意思とは無関係に、魔力シールドが展開されていた。
私は理解する。撃たれてジュラが起動したんだ。
弾丸は、完全には防げなかった。
シールドを削り、軌道を逸らし、顔を掠めたのだ。
はらり、と眼帯が外れ、地面に落ちる。
隠していた左眼が、久方振りに外気に晒される。
真紅の視界が開く。
城壁の上。無数の敵兵がレッドアイによって、ハイライトされている。正面でアルステリア本陣と戦闘している敵の防衛部隊。
その中の一人。
こちらを狙っている存在。
硬さは他のネームドを超えるとアルル室長からお墨付きのジュラ試作八式のシールドを持ってしても破られた。
「アイツだ………」
分かる。これはあの銃だ。
固有武器…アヴェンジャー。
私の仇。
父さんと母さんを殺した男。
間違いない。
「……エンドだ」
名前を口にした瞬間。
心臓が、大きく脈打った。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
怒り。
憎しみ。
ずっと奥に沈めていた感情が、浮かび上がる。
……殺す。
だが、今しがた死にかけた。
その事実が思考だけはクリアにする。
怒りに身を任せるだけでは死ぬ。
身体は火照り、脳は冷静にフル回転させる。
その時だった。
ギンッ!!
空気を裂く音。
アヴェンジャーによる二発目。
だが…………
今度は違う。
私は、既に自分の意思で魔力を流し、シールドを張っている。
ジュラ任せじゃない。
私自身のシールド。
ジュラ試作八式は、また魔力を込めなければ使えない。私もそれは集中しなきゃまだ出来ないため、もう頼れない。
だが、私の場合、ジュラによるオートシールドよりも、自身の意思によって張るシールドは強度が違う。
高密度の魔力によるシールドは、空気を切り裂き到達する弾丸がぶつかり、
……弾いた。
弾丸は軌道を逸らし、背後の建物を粉砕する。
すぐに三発目。四発目。
私のシールドは、揺るがない。
もう、アヴェンジャーでも貫けない。
私は仁王立ちしたまま、城壁を観察した。
5発、6発……
「……見つけた」
これだけ撃たれれば軌道も分かる。
城壁の上、スコープ越しに、こちらを見ている男。あれがエンド。
その時。
「り、リリーナ……?」
ショーンさんの声。
振り返ると、口を開いたまま固まっている。
周囲の兵士達も同じだった。
突然撃たれ。
眼帯が外れ。
真紅の瞳を晒し。
それでも立っている私を、理解できないでいる。
私は軽く手を上げて制した。
「……大丈夫」
問題ない。再確認しただけだから。
今は私に近付く方が危ない。
「……あそこに、エンドがいる。全力で潰します」
静かに言う。
感情は、もう暴れていない。
「エンドッ!?」
ショーンさんが驚いている。
私は城壁へ向かって進む。
仇を殺すために。
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side:エンド
俺のアヴェンジャーを超える威力の銃は無い。それは自信を持って言える。
だが、あの野郎のシールドが貫けない。
既に直線距離は700くらい。この距離ならばネームドのシールドだろうと貫ける。
シールドに定評のあるルンドバードのネームド【ガーディアン】であろうと、俺の前には堂々と姿を晒さない。
あの馬鹿げた硬さはなんだ?何故弾ける?
警戒の薄かった初弾さえ逸らされた。
本能から警鐘が鳴り響く。
「ケラー!!何としても奴を殺すぞ!シーランを出せ!!」
無線を取り叫ぶ。
「分かってますッ!もう準備してますッ!」
あのいつも丁寧で落ち着いたケラーの口調にも、余裕はなかった。
既に占領しメラリアの街となったレストデーンだ。出来ることなら、レガシーウェポン【シーラン】を使うことは避けたい。
だが、もう城壁は目前。挟まれたら突破される。
レストデーン防衛戦においてそれは敗北を意味する。
絶対に止めなければならない。
だが……………
そんな事はおまけに過ぎない。
それよりもアイツはここで殺しておかなければならない。
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side:リリーナ
エンドを殺すため、城壁へ向かう。
「私が先頭で突っ込む。全員そこを起点に進んで。止まるなよッ」
ここからは敵の数が多過ぎる。
私が切り開く。
「ショーン、アランは右!オルガ、シア、ハーヴィンは左!なるべく広範囲をカバーして!」
敬称を付ける余裕はない。
私を先頭に槍のように城壁に突き刺さる一撃を見舞う。
その時。
ポンッと軽い音が響く。
この戦場に不釣り合いなほど軽い音。銃声が鳴り響く戦場で、その音は何故か良く響いた。
頭の片隅にあった記憶が掘り起こされる。
レガシーウェポン【シーラン】
ゲームでは特定の場所にランダムに配置される。その武器を手にすることで、バトルロワイヤル戦は有利になれる。
候補地では奪い合いの戦闘が起き、序盤からプレイヤーの数が減る要因となっていた。
しかし、シーランには対処法が存在する。
プロでも油断してたら失敗する方法が。
前世は私も成功率6割くらい。
でも……
今の私なら……
この身体は前世よりも、体力や回復力など、あらゆる面で強化されている。
そのお陰でしっかりと視認できる。
そして理解する。
あぁ、発砲音がこんなに聞こえるのは仕様なんだね。
シーランの弾丸。
円錐状の内部が爆発しようと不安定になりながらも、こちらへと飛んできている。
私はシーランの弾丸をアサルトライフル【カルカロス】で撃つ。
シーランの弾速は遅い。
私達へ到達する前に私の発砲したカルカロスの5.56mmの弾丸が、シーランの100mmはある丸々と太った弾丸にぶつかる。
ドォォォオオン!!
空中で起爆。
閃光がレストデーンの街を照らした。
うん。今の私なら外す気がしないや。
全部、撃ち落としてやる。
「みんなは下を進むように」
「は?リリーナ、お前何をッ!?」
私はそう言って屋根に登る。
こうしないとシーランに撃ち漏らしが出てしまう。
ポンッポンッ!
あ、ほら。またシーランが撃たれる。ピタッと止まって素早くシーランの弾丸へ発砲する。
ダダダッ!ダダダッ!
再び空中で2つの閃光を放つ爆発が発生する。爆発は一定距離まで広がってすぐに収縮する。
あー、あそこは屋根が持ってかれちゃったね。
ポンッポンッポンッ
おー、おー、連射してくるようになった。
ふふふッ……
今の私は外さない。
私は全て撃ち落としながら、屋根を飛び越えて進んでいく。
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