134.私の使い方
私とオルガさんがレストデーンに到着したのは、奪還作戦の開始から五日目だった。
まだ朝靄の掛かるレストデーンは遠くから見ただけでも、傷だらけだった。
瓦礫。
焦げ跡。
崩れた岩。
オルガさんと共にアルステリア軍レストデーン奪還作戦の司令部となっている天幕へ。
まずは状況を確認しないと。
中には、
第3師団団長トニー・ミラーさん。
参謀本部から来ているスティーブン・ウルフさんとアッシュが机に開かれた地図を囲んでいる。
しかし、いつもこのメンバーだな。私はやりやすくていいけどね。
「おぉ!オルガ殿!っと、リリーナ、殿。ネームド就任おめでとさんだな!」
私に気付いたトニーさんが声を掛けてくれる。
「ありがとうございます!無職、無事卒業しました!」
私はピシッと敬礼を返す。その節はお世話になりました。
「ふふッ、その服とてもよく似合っていますよ。おめでとうございます」
ウルフさんも祝ってくれる。
そうなのだ。私はネームドの衣装を身に纏っている。アルステリア軍を鼓舞する意味でも、やっぱりこの服で戦闘らしい。まぁ、思いの外動きやすいけどね。
ちなみにスカートの下は短パンを履いた。
「ありがとうございます」
「リリーならすぐになると思ってた」
アッシュは座ったまま腕を組んで、ウンウンと頷いている。
なんかちらほらと感じるのだが、私の同級生たちの反応だけ方向が違う。
期待が大き過ぎる気がする。
私をなんだと思っているんだ。
「アッシュも早く追い付いて来いよぉー」
首に手を回して、ゲシゲシと軽くパンチする。
「え゛ッ!?………そっか。俺も満足してられないってことか」
なんか、凄く考え始めてしまった。どしたん?
「ヴ、ヴウンッ」
咳払いが一つ。
派手な真っ赤の服。
「ようやく、私の番かな!?
さぁ!自己紹介と行こうか、新ネームドくん!
私が炎!帝!デイビット・ジャクソンだ。
歓迎しよう!
我らが高みへ良くぞ到達したな」
大きく手を広げ、歓迎をアピールしている。
「あー、リリーナ・ランドルフです。よろしくお願いします」
この人、性格はゲームのままなのか……
確かにイケおじだよ?そうだけどさー。何年経っても落ち着いてはいないようだ。
「そうじゃない。そうじゃないんだ、リリーナ・ランドルフ!
ちゃんとネームドになったからには、皇帝陛下より賜った名前を名乗るものだよ!?
さぁ、練習だ」
イケメンだが、残念な性格と言われるわけだ。
ゲームだとオモロいからいいと思ってたけど、こう、直接話すとこっちが冷静になるかも……
「デイビット、それは後にしてくれ。今は情報共有が先だ」
トニーさんが炎帝を制してくれる。めっちゃ有り難い。
「むぅ、そうか…では、また今度としようか」
ウインクする【炎帝】こと、デイビットさんはどこまでもブレない。意外と聞き分けの良いナルシストなのだろうか?
あれ?聞き分けの良いナルシストってなんだろう?
「と言うわけで正面は既に硬直状態だ」
第3師団団長のトニーさんが説明してくれる。
「はっはっ!この私を抑えるとは、流石ガイアだ!
それにあの狙撃も中々にやる。
きっとネームドに違いない!ガイアと共にこの私に魔力を消耗させるとはな!」
デイビットさん私達は適当に流していたが、デイビットさんを狙った牽制射撃が本当にネームド……
しかも、エンドだとはこの時誰も考えていなかった。
「まぁ…だから、デイビットは長距離狙撃を何度か受けているんだ。そのせいで、シールドを要求される。魔力消費が激しいんだ」
「……だから、これ以上攻めきれない、んですね」
「そういうことだ」
思案顔のオルガさんにトニーさんが同意する。
「敵は既に炎帝の魔力切れを狙ってる素振りがあります。初弾以外はシールドで耐えていますが、気を抜けない状態です」
「はっはっは!私なら全く問題ない!」
ウルフさんの説明に対する炎帝の反応には誰も反応しない。
ここではそれが最適解なのかな?
さらに、悪い報告が続く。
「ショーン達、別働隊は戦闘二日目から、連絡が途絶えてる」
胸が、きゅっと締め付けられる。
シア達がいないことは私も気付いていた。でも、意図的に目を逸らしていた。
無事……だよね?
「だが、諜報部隊の耳のいいやつの情報だと、レストデーン内でまだ捜索が続いているらしい」
「ッ!?ってことは!?」
「あぁ、おそらくまだ隠れているんだろう。しかも、聞こえてくる情報では、人質が解放され、敵ネームド【スペクター】まで死んだらしい」
「おぉ!それはすごい!」
オルガさんも思わずといった反応をする。
スペクターかぁ……
そういえば能力も口調もウザくて嫌いだったなぁー。壁抜け結構厄介なんだよね。ゲームは回数制限あったけど、ここだと魔力次第なのかな!?
とりあえず、スペクターを警戒しなくてもいいのは楽だね。
ショーンさん?シアかな?あ、アランさんもいるのか!とにかくナイスだよ。
「ショーン達が隠れてる場所も検討が付いている。
レストデーンには元々アルステリアの軍施設が隠されているんだ。ここだな」
地図を指すトニーさんの指先。この地形は見覚えがあった。
「ここの地下道から離脱する予定だったんだが、そこがデイビットとガイアの戦闘の余波で崩落してしまった」
「ガイアは土魔導師だからな。全部ガイアのせいだろう。今度こそ奴を屠ってくれよう」
「つまり、その偽装軍施設に隠れてる可能性が高いってことね。こっちから、土魔導師で掘り進めないの?」
オルガさんがもっともな質問をぶつける。
「やってはいますが、作業も見つかる訳には行きません。
大々的には出来ません。それに塹壕にも土魔導師が必要です。正面の戦闘もプレッシャーをかけ続けなければ、ショーンさん達、潜入部隊の捜索に人員が割かれてしまいます。
あと1週間はかかる見込みです」
答えたのはウルフさん。
土魔導師が不足しているようだ。
「……だったら、私が内部に入って援護するよ。
私なら行ける」
オルガさんが言う。
「確かにお前さんなら行けるかも知れないが……」
トニーさんが悩んでいる。
オルガさんの能力はネームド【消失】の名前の通りだ。
文字通り、消える。透明化の能力だ。
姿が全く見えない。たまにある、目を凝らせばなんかいるのが分かるタイプの透明ではない。
本当に姿が見えないんだ。
強いて言えば当たり判定と、音があることが弱点かな。
待ちに徹されるとマジでわかんないやつだ。
確かにオルガさんならレストデーン内部へ侵入できるだろう。
「ならッ!」
アッシュが声を上げる。みんなが注目する中、アッシュは冷静に話し始める。
「リリーナも連れて行って下さい」
「ッ!?私?」
「そうだよ、リリー。リリーなら正面戦闘にも一石投じれると思う。
でも、リリーにはレストデーン内部で暴れてもらった方が戦果が高いと思う。なんせ、ノードでも同じようなことしてるからね」
「ほうほう」
確かに、あの城壁正面からいくより良いね。私としても敵陣に行っちゃった方が楽かな。
「だが、どうやって入る?奴らの監視は強くなっている。オルガ殿さえ簡単じゃないだろう?」
トニーさんが難しい顔をして首を捻る。
確かに……私は消えれない。
「ッ!?まさか?いや、可能なのか??」
ウルフさんが何かに気付いた。
……なんだろう。参謀本部の2人だけが何か思い当たっている。
「オルガさん。貴方の能力、自身より質量の小さい物なら消せますよね?」
「えぇ、服や銃も消さなきゃだからね。
……えッ!?」
「はい。オルガさんは小柄な方なので、これまでそんな選択肢なんてなかったかもしれません。
でも、実際はオルガさんよりもっと小さい人なら行けますよね?」
アッシュの言葉に、ゆっくりと私に皆の視線が集まる。
………………ふ、複雑。
でも、確かに、オルガさんの方が身長があった。
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