クエストがない
「申し訳ありませんが今紹介できるクエストはこんなもんですね」
ギルドの依頼は子供のお使いレベルの採集クエストか、あまりファリアにはやらせたくない狩猟クエストしかなかった。
「もう魔物もいませんから、ここも冒険者ギルドから普通の役場に鞍替えが決まりましたよ」
一応、冒険者ギルドの窓口は残るがメインは自治都市の管理になるらしい。
最盛期は24時間受付がやっていて、飲食店なども併設されていたのを思うと淋しい気がする。
平和なのはいいことなんだけど、ランク上げが出来ないのは問題だ。
「隣町なんか依頼がなさすぎてギルドが閉鎖しちゃって道具屋のおじさんにギルド業務を委託しているくらいですよ」
受付さんはうちなんて仕事があるだけましだけどと愚痴る。
魔王を倒した後安全になったおかげでファリアの村のように周辺の廃村に普通の人が戻ってきたが、当時この辺りを根城にしていた冒険者は上級冒険者はかりだったのでほとんどが魔王軍の残党がいる地域に移ってしまっていた。
少し前まではギルドの依頼も家屋の修繕や田畑の手伝いが中心となっていたが、最近はそれも落ち着いている。
「街道の整備も終わったし、最近は旅商人の荷物ばっかチェックしてます。職人も半分くらい入れ替わったし…」
「まぁ、俺はしばらくここにいる予定だからこれからもよろしく頼みます」
挨拶をすると俺は箱庭に戻った。
***
「ルトくーん温泉が出なくなっちゃったよ」
箱庭に戻るやいなやジョニーが駆け寄ってきた。
「温泉ですか?ちょっと待ってて下さい」
俺は地下から魔剣を持って来て別荘の前に思いきり刺した。
「ダンジョンだな。この場所元々町があり、それが今は地中に埋まっている。そこでパイプが破損しておるようだ」
「ダンジョン!?」
「今は入り口は無いから入れないし修繕のみであればカナリアでも可能だろう」
「そこに魔物は?」
「魔王軍の残党が残っている。転移陣からしか入れない隠れプラントがあったようだ。下層は魔王とは関係ない天然モノの魔物もいるな」
天然モノの魔物となると代表はドラゴンだ。
他にもゴブリンなど種類も数も少ない。
竜の力は圧倒的すぎるのでできれば戦いたくない。
「たしか私有地のダンジョンは隠しダンジョン申請が出来たはずだ。上手く利用すればランクアップに使えるかもね」
「入り口は作れそうか?カナリアを呼んでくる」
俺たちはカナリアにダンジョンの入り口を作ってもらうと、入口に結界を張って
ギルドに向かった。
「私有地にダンジョンが見つかったので隠しダンジョン申請をお願いします。所有者は俺で代理人はジョニーです」
「かしこまりました。登録にあたり訪問と拝見が必要ですが大丈夫でしょうか?」
俺たちもまだ全然入ってないのでわからない事を伝えると、ギルド側でもちゃんと用心棒を連れていくから大丈夫との事だった。
登録料は銀貨10枚。他にギルド側のパーティの雇用費が本来はかかるのだが、今回はサービスしてくれるそうだ。
「私と奥さんが同伴しますので、無料でいいですよ。冒険者ギルドの仕事も最後になるかも知れませんし…」
保険料や登記手数料料や口止め料など銀貨10枚分の内訳を貰い、奥さんとの予定が合ったのでこのまま探索という流れになった。
受付さんは中性的な声と外見でずっと性別がわからなかったが男だったのか…
自治区で探索に必要な物を買いそろえた頃、受付さんたちも準備が出来たようで、ギルド入り口前でスタンバっていた。
「紹介します。うちの奥さんです」
「はじめまして、いつも夫が世話になっています」
紹介されたのは身の丈2m近いハーフリザードマンだった。
ハーフなので髪の毛があるなど基本的には人に近い外見だけど、頬から首筋にかけて鱗に覆われていて目も完全に爬虫類の目だ。
この体格でなければ扱えないであろう大剣とビキニアーマーを装備している。
「かっこいい奥方だね」
予想外の姿にジョニーが思わず感想を漏らす。
「物凄く強いけど、結構可愛いところも多いんですよ?」
受付さんは160cmくらいと小柄でマッピングセット一式を背負い、服も罠師用の一般的な軽装なのでものすごい凸凹コンビだ。
正直女性コンビにしか見えないけど、夫って言ってるから普通の夫婦なのだろう。
とりあえず今日は現地でカナリアとミューゼルも加わり潜る予定だ。




