表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転霊  作者: 日曜花田
6/64

魔災情報

 ゼロアが五歳になった。

 ロアと言うのはゼロアの愛称だった。

 ゼロア・カー・ゴスト・ファントムレイス

 それが生まれ変わった息子の名前で、何と大公家の長男だった。

 つい最近知った。

 大公家は三つ有ってファントムレイス家の他にブラッドハンド家とプライストベーム家が有り御三家と呼ばれている。

 大公家というのは王国を三分して統治し、税収をしているが、大公家には直轄領が無いうえに独自の戦力も持っていない。

 配下が所有している武士団への命令権はあるが、直接報酬を払っていないうえに直接税金を徴収している相手となるので、立場は微妙である。

 百三十二年前に反乱があり、それを治めた功により大公位を賜り、配下の主だった者も侯爵、伯爵、子爵、男爵などに取り立てられている。

 だからこそ大公家は反乱予備軍として扱われている側面が存在する。

 そしてこの世界では反乱が起きる条件として魔災がある。

 魔災というのは、不定期に起こる自然災害である。

 現象としては獅子座流星群や牡牛座流星群などと同じように空に流星が流れるだけなのだが、その時に『ソーマ』と呼ばれる魔法物質が大気中に撒き散らされる。

 『天散る夜に魔が満ちる』

 吟遊詩人が歌う一節で、最も有名なものだ。

 この時撒き散らされた『ソーマ』によって生物に変化が起こる。

 虫や鼠・小鳥などは大量死したり、逆に大量発生したりする事がある。

 また、大量の『ソーマ』を吸収する事で魔力を使用する事の出来る『魔獣』の活動が活発化したり、新たに魔獣が生まれたりする。

 三千年前にはファイアーアントの大陸蹂躙が、一万年以上前には伝説にのみ残る大崩壊が伝えられている。

 その様な文明崩壊までには至らなくても街や村が滅びるのは珍しくもない。

 それを防ぐことを建前としているのが貴族であり、そのための戦力として王家には騎士団、他の土地持ち貴族には武士団を戦力として保有している。

 その場合戦力として魔法が有効であり、強力な魔導能力を持つ者を血筋に取り込むのは貴族の本能みたいなものだが、その場合魔災というのは痛し痒しとなることがある。

 もともと魔力の低い者は高くなるだけだが元々高い者の場合、異常や障害となることがある。

 ゼロアがその一例である。

 魔力物質である『ソーマ』が身体に溜まりすぎて破裂してしまう自壊型の症状。

 逆に、元々魔力の低い者は、高くなった魔力を用いて犯罪者となる場合がある。

 百三十二年前の反乱も、それが原因である。

 人類の場合、胎児の時が最も『ソーマ』を吸収し易く、肉体に影響が出やすい。

 だが、実際に魔法を意識的に使えるようになるのは五~八歳で、犯罪者として組織的に行動するのは、さらに数年後となる。

 魔獣の中にも成長に数年掛かるものもいる。

 魔災が人類と文明にとって天敵として存在し、貴族がその防波堤となっているのだが、歴史的に幾度もその防波堤は決壊している。

 ゼロアも貴族である以上、いずれは魔災と闘う事になるのだろうか?

 五年前の魔災は小動物の大量死と、家畜の異常化が確認されただけだという。

 これは深刻な兆候だと言われている。

 本当に危険な生物が成長していたり、高い魔法能力を持った集団が暴徒化したりする可能性が、見えない所で進行しているかもしれないのだ。

 私も、ゼロアに出来るだけの事はした。

 十日毎に『ソーマ』を吸収して人生を与えてきただけではない。

 私がこの世界の言葉と文字を学んで教えた。

 普段は三十メートル(だんだん移動範囲が延びた)だが、十日に一度の物質化したときは十五キロメートルほど移動する事が出来るのだ。

 出来る限りの情報を集めた、物陰に隠れて言葉を学び、書斎に入っては文字と知識を得た。

 最も、言葉は乳母やその子供が教えてくれた、なにしろ私は普段発声が出来ず、なぜか実体化している間はゼロアは昏睡状態なのだ。

 それでも、土蔵の床に文字を書いて知識を伝えた、それも実体化している時にしか出来なかったのだが・・・

 そして今日も知識と情報を得る為に街へと飛んでいた。

 実体化の苦痛には三十回位で慣れた。

 夜遅くなのに女の子が一人で剣を振り回していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ