令嬢剣舞
女の子が両手の木剣を振り回そうとしている。
夜の月明かりの中で
ゼロアより二~三歳年上だろうか?
彼女の腕に違和感を感じる。
無理をしているのはわかっていたが、それとは別に何か良くない感じがする。
「止めるんだ!!」
その声に振り向く少女。
いけない、ただ見ているだけのつもりだったのに、つい声をかけてしまった。
「おのれ! 化物!!」
木剣を振り回して斬りかかってくる。
実体化を解いて斬るに任せる。
この五年で出来るようになったことの一つが、この実体化の操作で、もう一つは外見の変化で、全身の色を変えられるようになったことだ。
裸は恥ずかしいので、服を着た姿になっている。 ちなみに白のレオタード。
今のところそれが精一杯。
「何なのだ……貴様……」
ぜいぜいと息を荒くしている女の子。
「申し遅れました。 わたくしゼロアと申します。」
厄介な事にならないように家名は言わない。
「魔災の影響で魂にて飛び回る術を得ました半端者にございます。」
深々と昔TVで見た執事のような御辞儀をする。
生まれることなく死んだ息子の父親の幽霊だと言って理解してもらえるとは思えないので、適当にごまかす。
「御嬢様が身体の魔力強化をなさろうとしていたのを拝見させていただきましたが・・・ 」
「まて まて まて まてっ!
貴様が何を言ってるのかわからぬ。
わかる言葉で話すのだっ!」
・・・しまった、相手はまだ小さな女の子なのだ。
まず、目線の合う位置へ行く。
「あのね、お嬢ちゃんが剣のおけいこを・・・」
あれ、なぜか急にうつむいた?
眼だけでこっちを見る、鋭くて怖い眼だ。
「こっ… こどもあつかいするなっ!」
うわ~ めんどくせ~
女の子ってこんな歳からこんな面倒な生き物だったっけ?
それでもきちんと伝えないと後悔する。
「おじょうさんの魔力強化だけど肩で止まってる、いや、完全に肩で止まってるならまだいい、骨や筋肉には伝わらないのに皮膚・・・皮だけに伝わってるから、火傷したみたいになってる。
これ以上すると、皮膚が壊死・・・黒くなって腐って腕ごと駄目になっちゃう。」
彼女の魔力はとても高い、ゼロアのように肉体を爆裂させてしまうほどではないが、一般人の数倍・・・そうだ、ゼロアの六日目ぐらい有る。
生体防御という言葉を聞いた事がある。
「おそらくだが、高い魔力が伝わって腕が壊れるのを防ぐために肩より先に魔力が伝わらなくなっているのだと思う。」
「バカなっ!」
「方法は幾つか有る。何を求めているかによって答えが違ってくるけど。」
「方法?
どんな答えがあるのだ?」
「えっと、とにかくまず、強くなりたいんだよね?」
「あたりまえだ!
あたしのとうさまはつよいのだ!
さいきょーだ!
二つの剣を自在にして踊るように闘う神速だぞ!」
「神速? エビルハンド卿か。
八傑の第六位だが懐に入られたら勝てる者無しとか・・・」
「とうさまを知っているのか?」
「名前だけは、有名だし。」
「そーだ とうさまはつよいのだ!」
「それでリノス・・・こほん」
思わず『ちゃん』付けで呼びそうになった。
「リノスさんは・・・」
リノスさんは殺気を放って木剣をこちらに向けている。
やべっ 『ちゃん』付けで呼びそうになったのがバレてる?
子供扱いされたと怒っているのか?
「なぜあたしの名を知っている。
あたしは名乗ってないぞ!」
え?!
「エビルハンド卿には息子が三人娘が一人だったはず、御嬢様がエビルハンド卿の御嬢様なら名前はたしかリノスさんだったはず。
まさか・・・」
私はまたやってしまったのか?
「あの・・・ まさか息子さんとか?」
斬られました。
痛く無いけど。
睨んでます。
怒ってます。
精神体だからだろうか? 斬られるより睨まれるほうが効く。
「あの、話を戻すね。」
「ほっ ほぉおぉおおおおっ!!!」
怖いです。
「御父上のようになりたいの? それとも御父上より強くなりたいの?」




