第三乃宿
宿場町というのは子供にとって退屈な場所だ。
色街へ行くのはゼロアにはまだ早い。
地球の宿場町には土産物だの、ナントカ饅頭とか古いゲームとかあるが、ここにはそんなものはない。
だいたい女子供が旅すること自体ほとんど無いのだ。
冒険者の皆さんは一人を残して色街へ、色街といっても宿場にあるのは風呂屋である。
人一人が寝転がれる形と大きさの風呂桶、木製か石製で底が斜めになっているのは湯の量を節約するためだろう。
そこに寝転がると、湯女と呼ばれる女性従業員が全身を洗ってくれるのだ。
旅で疲れた身も心(性欲)も・・・
ただ、不思議な事がある。
色街では動く金も大きいはずなのに、それを守る戦力が無い。
皇帝直轄地だからだろうか?
帝都からここまで途中馬を宿場ごとに替えても二日間、行軍となればもっとかかる。
皇帝の紋章にそれほどの力があるのだろうか?
皇帝直轄地で大公家の者が暴力沙汰を起こす訳にはいかないので、一列に並べて銅銭を配っている。
子供達が『おめぐみを~ 』と言って集まって来たのだ。
捨て子などというのは珍しくもない。
この世界には家族計画という概念は存在しないし、乳幼児死亡率も高い。
デキたらとにかく産んで、食糧難になれば売ったり捨てたり、で、捨てられた子供の内女であれば湯女になることも出来るし、男なら農家の収穫を手伝ったりする。
但し運の良い者は・・・
冬の寒さで凍死したり、夏の暑さで熱死したりするのは珍しくない。
この世界には人権思想など無いので、奴隷となって過酷な状況で死んでいく者、中でも鉱山奴隷や漁猟奴隷は死亡率の高い悲惨な労働環境だ。
おもらいさんの中に、特に汚くみすぼらしい子供がいた。
既に貰った子が、こちらに近づくのを邪魔している。
こんな所にもイジメってあるんだな。
いや、もしかしてこの子供達、殆どが湯女の子供ではなかろうか?
だとしたら外から来た子を迫害するのは、彼等としては当然という感覚かもしれない。
日本人の判官贔屓で、何となく・・・
今の私には実体化していなくても『ソーマ』を感知する能力がある。
実体化しているほうが感度と知覚範囲は、はるかに広いが、このぐらいの距離なら問題ない。
あの子供の『ソーマ』は・・・
魔災の子であることは間違いない。
かなり強力な魔力を感じるが、破綻してはいない。
魔力を魔法として安定した出力で使用できるのが魔法使いである。
あの子供はそれが出来ているのだろうか?
出来ていなければおかしい。
あれだけの魔力だ、これまでに何らかの方法で放出していなければ自壊しているだろう。
とにかく、あの子供は野放しにしてはいけない。
私は、今使える唯一の手札『一言伝』を使った。




