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異世界転霊  作者: 日曜花田
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異変状況

 気配を消し、姿を消して建物の中に入る。

 「お~ 来た来た、やっと来た。」

 あっさりとエビルハンド卿に見つかってしまう。

 流石は動物的な勘の持ち主だ。

 「御久し振りでございます。

 ボルケノバース卿、エビルハンド卿、御招きも無く参上いたしました。

 御無礼を御許し下さい。」

 「あっはっは~ 若ならいつでも歓迎しますよ。

 娘の寝床以外なら。」

 子供相手に言うことじゃないな。

 それにこの歳なら一緒に寝たりお風呂に入っても許されると思うが?

 それよりも、ここには三人の人間、ボルケノバース卿とエビルハンド卿と調査隊の隊長で、名前は・・・ なんだっけ。

 確か玉葱みたいな野菜だったはず。

 いかん、ど忘れした。

 まあいいや、とりあえず玉葱さん(仮)としておこう。

 食べ物が食べられ無いこの身では、食べ物に執着が持てなくて忘れてしまうのだよ、うん。

 決して老化現象では無いと思いたい。

 三人のほかに遺体が二人分、農民の格好では無い、狩人のようだが・・・違う。

 山賊だろうたぶん、山の中に点在する村を襲って・・・いや、襲うぞと脅して生活しているのだろう。

 山賊と判断した根拠に、ボルケノバース卿とエビルハンド卿の態度がある。

 死を悼む様子が無く、死んで清々したといわんばかりだったのだ。

 死体に苦しんだ様子が無く、服に血の跡も無い。

 外傷は・・・ある。

 顔に切り傷があるが、新しいものでは無いと思う。

 「多分ご・・・いや、七十人ぐらい死んでいたと思うが? 」

 「・・・六十七人死んでいました。

 そのうち山賊と思われる者が五十二、女子供が十五人。」

 「若のほうが卿より正確だな。」

 「う~む、まけたかぁ 

 さすが若、御見事。」

 「死因・・・ どうして死んだかは、わかりましたか?」

 「は? なぜそのようなことを? 」

 「この様子だと同士討ちでは無い。

 何らかの理由で短時間に死んでいる。

 彼等を襲った者が我々を襲わない保証は無い。」

 「ここに来ると?」

 「できれば来てほしくない。」

 

 「ところで、彼等の根城は?」

 「北西にある鉱山跡でした。

 あんな場所に鉱山があるとは知りませんでした。」

 「先史文明のものかな?」

 先史文明といっても、魔災の影響で幾度となく文明が滅びている。

 この世界は文明が発達し難いのだ。

 「有望そうか? 」

 「調査中です。」

 ファントムレイス領は貧乏なので、金になるとありがたい。

 「死体だけど、見つけたとき赤くなかった?」

 「・・・? いえ特には・・・」

 確か一酸化炭素中毒で死ぬと、体表面が赤くなることがあるとか、犠牲者が多いから、一酸化炭素中毒なら不自然に赤くなっている者がいたはずだ。

 それに、一酸化炭素中毒は苦しまずに死ぬというから、死体の状況に合っている。

 もうひとつ、二酸化炭素でも苦しむより早く死ぬ場合があるが、その場合の特徴は知らない。

 「毒ガスを出す魔法ってある? 」

 「さぁ 聞いたことはないですな。」

 ボルケノバース卿が言うなら、無いのだろう。

 燃焼により毒ガスとなるもの、不完全燃焼なら一酸化炭素、完全燃焼で二酸化炭素が発生し、どちらも使い方で殺人ガスになる。

 そういえば酸素でもできるが、それは高圧酸素で、この世界ではまだ無理だろう。

 ばい、れぎおん

 「顔の傷は死んだ原因とはかんけいないのか?」

 古い傷のような気がするのだが。

 「この傷かぁ これ死んだ本人がつけたもんだぞ。」

 え、そうなの?

 「なぜそんなことを? 」

 「あ~ 山賊とかには結構いる。

 脅したりするのに、使えるんで自分の顔に傷を付けるんだ。

 どう見てもこれ、戦って付いたもんじゃねえ。」

 子供がマジックで顔に傷を描くのと同じなんだ・・・

 最近の子供もするのだろうか?

 しかし、傷跡からそんな事がわかるとは、エビルハンド卿はただの脳筋では無い。 

 まだ、断定はできない          がこの犯人、毒ガスを作る魔法では無いような気がする。 

 では、外傷も無く六十七人も殺せる魔法とは何か?

 「まさか、人の魂を攻撃する魔法とか?」

 「そんなものがいるとすれば魔族でしょうな。」

 魔族は、実在するかどうかわからない存在だ。

 結局その日、答えはなかった。

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