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六話 温室で二人だけのティータイムを ①

ユリウス殿下から頂いたのは温室のスペアキーと小さな花束… それからお茶へのお誘いで。


「いかがいたしますか? セシリア様」


兵士から受け取った女官が困惑した顔で問いかける。私は少し考えてから、あの温室は珍しい草花ばかりだったことを思い出し、あの草花を眺めているだけでも慰めになるだろうと考えて…


そもそもここには人質として来ているのだから、断る権利などあるわけもないのだけれど。形ばかりでも喜ぶ振りをしていた方が政治的には具合がいいはずだから。


「では、喜んでお受けしますと伝えてください」


「畏まりました。殿下もお喜びになりますわ。セシリア様のことは気にかけておいででしたもの」


女官の思わぬ言葉に驚くけれど、言葉にできない。明るい日の光の下が似合う大国の皇太子… 豪奢なシャンデリアの輝きにも全く劣らない美貌の人で。あまたの淑女たちが彼の褥に呼ばれる日を待ち焦がれているはず。


私は…? もし本当に呼ばれたら…?


当たり前にソーリス・オルトス帝国全土の女達から恨まれ、妬まれるだろう。望んでいるかどうかも分からないのに…


「愚かしい事ね。ユリウス殿下だって好ましく思う方の幾人かはいらっしゃるわ。いずれ妾にするでしょう。私はただ正妃の座に座っているだけ」


そう呟いて、グランドハープを弾くのを再開した。この時間だけは寛いでいられる。ぼんやりとした将来への不安や、ユリウス殿下への例えがたい気持ちを忘れていられるから。


「セシリア様、お邪魔して申し訳ございません! 早速、ユリウス殿下からお茶のお誘いですわ」


「…お話の早いことね。まるで準備していたみたい」


女官の焦った言葉に思わず皮肉が漏れる。女官はそんな私の皮肉など聞こえていなかったかのようにドレスやアクセサリーの準備を指示し始めていた。その様を眺めながら待っている間にグランドハープでも弾いていようかと思っていたところ…


「やあ、邪魔するよ。セシリア姫、お迎えに参りましたよ」


ドアが乱暴に開いてユリウス殿下が姿を現した。傍には幼馴染だというアロイス様が控えている。


よほど気を抜いているんだろう。くつろいだ開襟のシャツに黒に近い紫色の皇太子の略装を着ているだけで、剣も腰にいていない。


「ユリウス殿下! セシリア様をお待ちくださるのが礼儀のはずです。お控えくださいませ」


「そのはずだったんだけれどね。ちょうど仕事で近くまで来ていたから都合がいいと思ったまでさ。おとなしく待つのは苦手でね」


ウィンクを決めながら女官達を見下ろして告げる様は、明るく自由の一言に尽きる。その背景に絶大なる権力があるとしても…


「かまいませんよ。ここはユリウス殿下のプライベートな領域なのですから。では、せっかくお迎えに来てくださったのですから参りましょう」


グランドハープの前に置かれていた椅子から立ち上がり、差し出された手にそっと手を重ねる。こんな時、笑うこともできないのが少しもどかしかった。ヴェスペル王国の命運は彼の手に握られているというのに。


剣を扱い慣れた武骨な手に……


「申し訳ございません。非礼が過ぎると俺は止めたのですが…」


戸惑う女官達を制して、白い開襟シャツと紺色の略装を着たアロイス様が私に歩み寄り、礼儀正しく一礼して告げた。その顔は渋くて非礼を理解していることが伺い知れた。


「いいえ、このような慎ましい姿で申し訳ないとは存じますが」


「そんなくだらないことはどうだっていいんだよ。豪華なドレスもアクセサリーもいらないさ。この見事な黒髪があれば、あなたは十分に美しい」


冗談めかした口調で言うと、私の髪をそっと梳きながら楽しげな様子で笑う。


その言葉はどういう意味なのだろうと考えたけれど、あまり考えこみすぎてもいけないし、あまり意味もなさそうなので誉め言葉と受け取ることにして、エスコートされるままプライベートな領域を出て、温室まで向かう。

お待たせいたしました( ^^) _旦~~ ここからようやくラブ成分を醸し出せるかもしれないです。

セシリア姫のキャラも固まってきましたし… この子、難易度高いですね( ゜д゜)ウム

全年齢向けの限界に挑戦することになりそうです(-ω-;) R17.9… どうすればいいかな。最後までお付き合いくだされば幸いです。感想くだされば、もっと幸いです。

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