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  作者: 口羽龍
第6章 2人の絆
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7

 それから半年の月日が経った。新婚生活の楽しさを、2人はかみしめていた。後は子供ができる事だ。そうすれば、家族はもっと幸せになるのに。栄作も義理の両親も子供が生まれるのを楽しみにしている。一体、いつになったら妊娠がわかるんだろう。誰もが期待し、その日を待っていた。


 栄作は80歳近くになったが、それでもまだまだ現役を続けていた。栄作は生涯現役を貫き通し、大将のまま一生を終えたいと思っていた。いつも作る様子を見ているが、朝早くからの仕込みは昔と変わっていない。その体力はどこにあるんだろう。やはり、香川一のうどん職人としてのプライドが力になっているんだろうか? 望はただただすごいと思っていた。


 ここ最近、望は気になっている事があった。直子が店の前にいるのだ。どうしてだろうか? もう帰った方がいいのに。どうして店の前にいるんだろうか? 従業員はみんな、その理由がわからない。


「どうしたんだろ?」


 望は横を向いた。そこには俊介がいる。俊介も直子が遅くまで店の前にいるのが気になっていた。


「えっ!?」

「直ちゃん、最近なかなか帰らないんだよ」


 俊介は不安そうな表情だ。どうして店の前にいるんだろうか? 何か言いたい事があるように見える。


「そうなんだ」


 望もそれを気にしていた。一体、どうして遅くまで仕事をするんだろうか? わからないな。何か言いたい事でもあるんだろうか?


「なんかあるのかな?」

「うーん、どうだろう」


 俊介は考え込んでしまった。俊介にもその理由がわからない。


「わからん・・・」


 ふと、望は思った。その理由を聞いてみよう。何かわかるかもしれない。


「聞いてみよう」

「そうだね」


 望は決意した。今夜、その理由を聞いてみよう。どんな答えになるかわからないけれど、いい答えだったらいいな。




 その夜、望は自分の部屋にいた。栄作は深夜からの仕込みに備えて、寝ている。自分が大将になったら、それをしなければならないんだ。望はそう思いつつ、夜空を見ていた。夜空を見て、望は思っていた。生後間もなく殺された両親は、ここまで成長した自分をどう思っているんだろうか? 素晴らしいと思っているんだろうか? 天国からエールを送っているんだろうか?


 望は隣にある直子の部屋に向かった。そこには、栄作の妻の部屋だった場所だ。久々にここを自分の部屋とする人が現れて、栄作は嬉しく思っている。今度は生まれてくる子供の部屋を用意しないとと思っているそうだ。


 直子は家族の写真を見ていた。直子は笑みを浮かべている。結婚式で、両親はとても喜んでくれていた。何しろ、香川一の名店である池辺うどんの次の大将候補と結婚できたからだ。そして、その子供にもこの店を継がせたいな。


 望はドアをノックして、直子の部屋に入ってきた。


「ねぇ直ちゃん」


 直子は顔を上げた。そこには望がいる。望は真剣な表情だ。何か言いたい事があるんだろうか?


「どうしたの?」

「なんでなかなか帰らないの?」


 直子は真剣な表情になった。何か重要な事のように見える。望は緊張した。


「知りたい?」

「うん」


 直子は震えている。今まで言おうか迷っていたようだ。それで、店の前にいたようだ。


「私、妊娠したの」


 それを聞いて、望は驚いた。まさか、妊娠していたとは。という事は、もうすぐ僕はパパになるんだな。それは嬉しいな。


「本当?」


 望は喜んだ。まさか、子供が生まれるとは。本当に嬉しいな。きっと、栄作も義理の両親も喜ぶだろうな。


「うん。だけど、お父さんお母さんには6か月になるまで内緒だよ」

「うん」


 2人は決意した。妊娠6か月になるまで内緒にしよう。そして、それが過ぎたら産休に入ろう。


「妊娠したの、嬉しい?」


 直子は笑みを浮かべた。望は嬉しいんだろうか? 新しい家族ができて、パパになるんだよ。


「うん。子供ができるってだけでうれしいよ」

「本当?」


 直子も笑みを浮かべた。直子はママになるのが嬉しいようだ。


「うん。早く孫、父さんや母さんに見せてやりたいな」

「そうだね。大将もきっと喜ぶだろうな」


 望は考えた。きっと栄作も喜ぶだろうな。そして、栄作の作ったうどんを食べて感動して、自分もうどんを作りたいと思ってほしいな。そして、この子がうどん職人になってほしいな。


「そりゃあ喜ぶよ」


 直子も想像していた。子供ができたと知って、栄作がどれだけ喜ぶだろうか?


「どう喜ぶか、楽しみだね」

「うん」


 望は時計を見た。そろそろ寝る時間だ。自分の部屋に戻らないと。


「もう寝ないと。おやすみ」

「おやすみ」


 望は自分の部屋に戻っていった。直子は喜んでいる。きっと両親も喜んでくれるだろうな。孫を早く抱かせたいな。


 部屋に戻ってきた望は上機嫌だ。ついに自分にも子供ができる。きっと、天国の両親も喜んでいるだろうな。


「妊娠、か・・・」


 望は再び星空を見た。きっと両親は、遠い空から望を見守っているだろうな。きっと喜んでいるだろうな。


「きっと天国の父さん母さんも喜ぶだろうな」


 と、望は薫の事を考えた。僕がパパになるという事を知って、薫はどんな反応をするんだろう。きっと喜んでくれるだろうな。


 その頃、直子も薫の事を考えていた。ママになる事を、薫も喜んでくれるだろうな。会いたいだろうな。


「薫さん、喜んでくれるかな?」


 だが、会おうとしても栄作が追い出すだろう。そう考えると、落ち込んでしまう。本当は一緒に働いてほしいのに。栄作が許してくれない。


「薫さん・・・」


 直子は夜空を見て、薫の事を考えた。薫は今頃、東京でどうしているんだろうか?

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