表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/21

13.それから

大きな災害、事件の時ほど、冷静に。

デマに注意。

 ()うして()る間に、()け出された者や怪我人や屍躰を(のこ)して少し()つ避難者達は各々の家へと戻つて行つた。其処(そこ)で私も大家と二人、下宿の在つた場所へと戻つた。

 燒け野原を過ぎ、見(おぼ)えの無い場處(ばしょ)で見覺えの有る看板を見つけた。何が幸()したのか其の(あた)りを火は舐め取らずに去つてしまつたやうで、へこんだ鍋窯と()け茶碗、そして節穴の開いた戸板を拾つた。私の部屋にあつた藏書も幾らか掘り出せた。

 瓦礫(ガレキ)(あさ)るうちに、腕も出てきた。

 同じ下宿の男であつた。既に臭ひ(におい)出して()たが、胸にはしつかりと書物を抱()込んで()た。

 大家がぽつりと、家族に聯絡(れんらく)を取らねばと(つぶや)いた。(うなず)いてはみたが、()の有樣では何時聯絡がつくか、とも思つた。

 幸()にも、其処(そこ)から掘り出された屍躰は其れ一つきりであつた。

 他の者も二人、三人と、ようやく生き永らえたと云ふ態(いうてい)で戻つて()たが、(のこ)りはどうしたか、(よう)として知れぬ。逃げ延びて實家(じっか)にでも歸つた(かえった)か、或いは何處かで傷を負うて動けぬのか、其れともあの大火に卷き込まれたか、とうとう判らず仕舞いだ。

 大家は溜息を吐いたが、立て直すには(しばら)く掛かり()うだと言つ()きりであつた。命があつただけでもましだと云ふのに、なかなか(たくま)しい言葉であつた。

 (しか)當然(とうぜん)、寢る所も食べる物もない状態であつたので、生き殘つた(のこった)書生連中も田舎へ戻る者が流石に多かつた。帝都が落ち着いたら戻る者も居よう。一時の別れだと思ひ()かつた。

 私は。

 帝都を離れる氣など、毛頭無かつた。

 幸()にも大家が、私を命の恩人と言つて家族同樣に扱うて()れた。何でも大家の行かう(いこう)として()た所は、折からの強風に煽られた火焔旋風がなだれ込み、さ(なが)ら巨大な火葬場のやうだつたと云ふ(いう)。其処でも大勢燒け死んで、未だ身元の分からぬ骨が積み上げられた(まま)()うだ。

 私達は風雨を避ける()小屋を建て、毎日少しずつ片附けて行つた。

 考へれば寧ろ混亂(こんらん)する。效率が惡からうと構()ず、ひたすら手に(ふれ)たものにだけ集中した。僅かでも使へさ(えそ)うな物が見つかると小躍りさへした。けれど、(かつ)て大事であつた物が出てくると、却つて胸苦しさを(おぼ)えるのであつた。


複数の情報源から情報を得て、複数の角度から検証しよう。

人は、自分の信じたいことを選択して無条件に行け入れてしまいがちだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ