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第一一話 怪物の心コロ愛ス

 アリュン・ルメニアの『顔』に。


「おれ、じづは、さ。おまえのごと……」



 セリアン・スロヴィの『顔』に。


「私は、ぁ。あなたが好きですぅ、ぁぐ」



 グラン・ガーネットの『顔』に。


「俺も、お前のことが――ぎ、ぐひき」



 サーシャ・セレナイトの『顔』に。


「ミコトには、幸せになって……ほしぃ、から」



 ラウス・エストックの『顔』に。


「あいつの隣に、俺は場違いかもしれねぇが……」



 ヘレンの『顔』に。


「愛する故郷を返して!」



 バーバラ・スピルスの『顔』に。


「フィラム……ユミル……あぐ。私が……守るぅ」



 ユミル・スピルスの『顔』に。


「ばーばぁ、おねえちゃん! ぱぱ、ままぁ……。どこだよ、どこにいるのぉ?」



 シェルア――否、フィラム・スピルスの『顔』に。


「ユミルは……私が、守らなきゃ……」



 漂う残留思念が。

 記憶が。想いが。感情が。未練が。後悔が。絶望が。歓喜が。狂気が。


 畏愛、遺愛、慈愛、恩愛、渇愛、割愛、恵愛、敬愛、兼愛、私愛、自愛、純愛、鍾愛、性愛、惜愛、切愛、専愛、相愛、貪愛、人愛、熱愛、博愛、汎愛、眷愛、最愛、三愛、四愛、至愛、憎愛、他愛、忠愛、寵愛、溺愛、情愛、信愛、深愛、親愛、仁愛、嬖愛、偏愛、盲愛、友愛、隣人愛、同胞愛、家族愛、父性愛、母性愛、兄弟愛、姉妹愛、令愛、恋愛、可愛、同胞愛、狂愛!


 愛が、愛が愛が愛愛愛愛愛愛愛愛愛――――!


 変わる。

『顔』……それは容姿であり、体格であり、感情、記憶、口調、人格、性格だ。


 相手の『顔』がわかれば、それに偽装する。

 残留思念。その元となった人物を読み取れば、その『顔』に偽装する。

 思念の中から、その人物が想いを寄せる『顔』を読み取り、偽装する。


 あらゆる『顔』は、一定に留まることはない。


 彼あるいは彼女は、自己を認識できない。

 メレクという存在が元々、どんな『顔』だったかもわからない。


 自己がないから、偽装『ケムダー』の無属性魔術師となったのか。

 無属性魔術師だったから、自己を喪失していたのか。


 そんなのはどうでもよかった。


 自己が認識できないのは恐怖だ。だからこそかつてのメレクは、他者にそれを求めた。

 誰かに自分を見てほしい。話しかけてほしい。聞いてほしい。触れてほしい。


 憎悪でも悲哀でも、なんでもよかった。

 他者の認識があってこそ、メレクは寄せ集めの自己を保つことができるのだ。


 最終的に、それが『愛』という形に落ち着いたことに、特に理由はない。

 単純にそれが、心地よかった気がしたからに過ぎない。


《求愛者》――愛を求める者。なんと素晴らしい名だろうか。

 なのに世界は、《狂愛者》などと貶める。この愛が偽物であるはずがないのに……!


 メレクは本気で自身の愛を信じていた。愛していて、それが受け入れられるのが当然と考えていた。

 なぜ蔑む。なんでメレクを想ってくれない。どうして愛してくれない。


 メレクを愛さない者は、真実の愛ではないのだ。自分こそが愛そのものであるはずだ。だって、こんなにも愛し焦がれているのだから。

 みんなみんな偽物だ。自分の求める『真実の愛』はどこにある。


 亭主関白め! 薄情者め! 鬼女め! 冷血漢め! 毒婦め!


 メッキを貼り付けているのが自分だということを、メレクは自覚しない。

 自身に切り貼りした愛こそが本物だと信じ、拒絶は浮気だと憤る。


 誰か。


 俺を見て。

 僕を聞いて。

 私に触れて。

 アタシを憶えて。

 オレを奪って。

 わたしを求めて。


 愛して――――!!



 痛む体を引き摺って。

 ウラナ大森林を彷徨って。


 そうして。


 新たな愛を見つけた。



     ◆



「邪晶石ってのは、どー探せばいーんだよ」


 ウラナ大森林を彷徨いながら、ラカは苛立った声音で呟いた。

 ヘレンから、瘴気の結晶体――邪晶石が、この森のどこかにあると教えられた。それを壊さない限り、魔族は増え続けると。


「あの女の話が、真実ならな」


 信用していない口振りのテッドだが、ヘレンの話は真実だろうと考えていた。

 嘘を吐く理由が思い付かない。ラカとテッドを始末したいのなら、彼女なら容易だったのに。


 それに、魔族に対する、あの憎悪。

 魔族の増殖は、ヘレンにとっても不都合なのだ。


「ま、今は信用するしかねーだろ。仮に邪晶石とやらじゃなかったとしても、この異常事態……何か理由があるはずだ」


「手掛かりは今のところ、まったくないけどな。魔獣の発生源に行けば何かわかるかも、っていう推測だけじゃあなぁ」


《無霊の民》である二人は、魔力感知能力が最底辺だ。一応、瘴気も魔力である。

 この世界に生まれた生物として、瘴気への忌避感はあるが、邪晶石の場所などわかるはずがない。


 二人は与り知らぬことだが、このウラナ大森林の魔力には認識阻害が掛かっている。

 それを突破するか、余程接近しない限り、魔力感知に優れていても瘴気の源は感知できないだろう。


 当てもなく森を彷徨い、時に魔獣の群れを避け、木々の上を移動する。

 時間が過ぎていくに連れ、不安と焦燥が強まっていく。


 自分たちだけで見つけられるのだろうか。

 里は大丈夫だろうか。


「……一度、戻ったほうがいいんじゃないか」


 テッドがぽつりと呟いた。


「こんな広い森、僕たちだけで探すなんか無理な話だ。里に戻って、それから人員を募ってからでも……」


「人員って、魔獣と戦える奴がどれだけいるんだよ。防衛を減らすわけにもいかねーし。――今、オレらがやるしかねーんだ」


 魔獣が次の段階へ進化するよりも、早く。

 里が攻め落とされるよりも、早く。


 ラカは拳を握りめ、前方を睨み付けた。


 ――そこに、人影を見つけた。


「え……?」


 見知った顔が、そこにあった。


 会いたかった人が、そこにいた。


 いるはずのない男が、そこに立っていた。


 左肩から右の腰にかけて、切り傷が付けられていたけれど、確かに存在していた。



 オーデ・アーデ・ムレイが、微笑み掛けて、くれていた。



「どー……、いう、ぇ?」


「オーデ、さん……?」


 ラカも、テッドも、思考が停止した。

 呆然と、その壮年を視界に入れる。


 信じられなかった。

 在り得るはずがなかった。


 だって、オーデは……。


 ――上半身のない亡骸。血に汚れた灰色の髪。生気が失せ、濁った灰色の瞳。


 それを、憶えている。

 この目で、ハッキリと見た。彼を、見間違えるはずがない。


 なのに今、目の前に、オーデはいる。ニッコリ、ラカとテッドに微笑み掛けている。

 この異常事態を、忘れてしまいそうになるほどに、二人はそれに魅入られた。


「やぁ」


 その声に、聞き覚えがあった。


「ラカ、やっと会えやしたね。テッド、久しぶりだな」


 ラカには、奴隷時代に身に付いた話し方を。

 テッドには、かつての話し方を。


 わざわざ話し方を別けた意図、そんなものに興味はなかった。どうでもよかった。

 オーデが生きていた。そして、ここまで会いに来てくれた。それで十分だった。


「オーデ!」


「オーデさん!」


 オーデが『両腕』を広げた。迷う理由はなかった。

 二人は歓喜し、オーデに駆け寄る。


 抱き着いたあとは、何を話そうか。

 生きていてよかったと、嬉し涙を流そうか。

 なんで生きていたと教えてくれなかったんだと、照れ隠しでもしようか。


 言葉が浮かんでは消え、結局、何を話していいかわからなくなって。

 ただ、思考が幸福に染まり。


 オーデの『顔』が、幸福に染まり。



 直後だった。


 二人とオーデの間に、何かが着弾した。



 ズドン! と地響き、大地が抉れる。

 砂埃が巻き上がり、その場にいた三人は、咄嗟に腕で顔を庇った。


 砂埃の隙間から、赤黒い肉塊が見えた。

 心臓の鼓動のように脈動する肉体が、ぐちゃぐちゃと粘り、湿った音を立てて蠢く。


 砂埃が、晴れる。


「 ぁ……食べ 、喰っ 、死ぇ 殺 ぅぁ 」


 血色の瞳をした、肉色の獣だった。

 全身が膨張し、今にも弾け飛びそうに見える。


 奇形の顎門には、死体が銜えられていた。異形に化しかけた、人間の死体だった。

 人の背丈を容易く超える怪物が、銜えていた人間を噛み砕く。


 肌が破れ、肉が千切れ、骨が噛み砕かれる。

 見るも悍ましい、化け物の咀嚼。


「 オーデ ごめ 、 だれ ちが  あぁ ! アァ !!」


 怪物の額から、何かが角のように突き出した。

 それは、人間の頭部。血色の瞳、吊り上がった目からは血涙を流している。


 そして。

 白髪混じりの黒髪と、中性的な容姿。


 それに、見覚えがあった。


「  テメ はァ!  ダレ ダ ァ ! ! ! 」


 クロミヤミコトが、オーデへと襲い掛かる。

 膨大な質量を活かした突進に、如何なオーデと言えど、真正面から受け切ることはできない。


 オーデは『両腕』を使い、咆哮を上げ、ミコトの突進を逸らした。ミコトは勢いを止められず、木々を薙ぎ倒しながら制止する。


「待ってくれミコト、そいつはオーデだ!!」


「 チガ……ゥ、 !  イノチ が 別ツツゥ!  オーデ じゃ ナイ ィィィ ァ!」


「オーデじゃないって、どういう……!?」


 その時になって、ようやくラカは気付いた。――奪われたはずのオーデの右腕が、元通りになっている。


「 ニセモノ が !  メッキを 貼り付け だけの、イツワり めがァ !」


 怪物が腕で薙ぎ、脚で払う。その猛攻に、オーデは屈した。

 巨大な拳の一撃をまともに受け、大樹に激突する。


 トドメを刺そうと歩み寄る。そのミコトとオーデの間に、テッドが割り込んだ。両腕を広げ、ミコトの進行を阻止する。


 戸惑うラカと違い、テッドは完全にオーデを信じ切っていた。彼は、オーデに右腕がないことを耳でしか聞いたことがなく、視覚では死体でしか捉えたことがないのだ。


「 ど け  」


「どかない。オーデさんは絶対に、殺させない」


 テッドは一歩も退かなかった。

 額に汗を流し、恐怖しながらも、瞳には決意を宿している。


 テッドとミコトの間には、信頼関係と呼べるものは皆無だ。

 ミコトの認識は知らないが、少なくともテッドは、危険な男だと思っていた。


 もしかしたら、殺されるかもしれない。そう思った。


「 ぐ あぐ  げき あぁぐ えぅ 」


 だがミコトは、一歩も踏み出すことはなかった。

 呻き声を上げるだけで、テッドに襲い掛かろうとはしない。


 ミコトがテッドをどう思っているのか、それはわからない。

 ラカの知り合いか。それとも、仲間だと思っているのか。


 結局ミコトは、ずっと動くことはなかった。

 その間に、オーデがふらりと立ち上がる。重傷を負いながら、その表情は微笑みに満たされている。


 変わらない、貼り付けたような微笑み。

 ゾク、と。テッドの背中に、冷たいものが走った。


「クロミヤの旦那じゃぁないでやすか。どうでやすか? あっしの遺言は」


 遺言、と。

 生きていながら、オーデはそう言った。


「ラカを頼みやすと、そう言いやしたよね?」


「    」


「その同胞愛を、家族愛を、父性愛を! テメーは受け取ったはずだ、オレの愛を!! 信愛があったからこそ、オレは託したんだ!!」


「    」


「ならば愛せよ! 愛せ、愛して愛し愛愛愛愛愛愛愛愛ぁ!!」


 微笑みをやめ、オーデが錯乱して叫ぶ。

 心から想っている人間が、狂乱して愛を懇願する。


 不気味で、気持ち悪くて、不快。

 テッドが思わず後退する。――ミコトとオーデの間に、障害が消え去った。



「 コ ロ ス 」



 殺気が膨れ上がった。

 強烈な殺意の思念が、周囲に広がっていく。


 対し、オーデは先ほどの狂乱は終わり、無表情となっていた。


「あぁ……お前も愛してくれないのか」


 オーデの『顔』が変わる。

 瞳は灰色から黄色へと。歳は若く、一〇代半ばのものへと。


 その『顔』も見覚えがあるものだった。


 最後に彼を見たのは、五年前になる。本来なら、二〇代になっていなければおかしいのに、同い年くらいに見える。

 でも、その容姿は、間違いなく、


「あに、き……!?」


 テッドが驚愕して叫んだ。ラカも同じく、目を見開く。

 新たな『顔』。それは《無霊の民》で、知り合いだった。


 テッド・エイド・ムレイの兄。



 ジェイド・エイド・ムレイ。



「久しぶり、テッド、ラカ」


 そう言って、ジェイドは微笑む。オーデと同じように、両腕を広げ、二人を迎えようとする。

 しかし、ラカとテッドは動かない。偽物だと、わかってしまったのだ。ひどく不気味で、気持ち悪くて、吐き気がする。


「悲しいな、テッド。俺たちは兄弟じゃないか」


 二人の反応を見て、ジェイドは落胆して、肩を落とす。

 次にジェイドが顔を向けたのは、肉塊の怪物。クロミヤミコトを視界に入れた直後、ジェイドの『顔』が変わる。


 一〇代半ばのものから、二〇代のものへ、五年の年月が流れる。


「よくも……」


 ジェイドの表情が、憎悪に染まった。


「よくも俺たちの邪魔を! 使徒様を! 許さない、絶対に許さないぞ、クソニンゲン……!」


 対するミコトは、ジェイドの罵倒を無視して、テッドとラカを見やった。


「……そうか。こいつも、お前らの知り合いだったのか…………」


 怪物は目を伏せた。

 肉塊が崩れていき、べちゃべちゃと溶けた肉が散乱する。


 散らばった肉片の中心に、クロミヤミコトは立っていた。


 赤が変わり、黒い瞳がジェイドを見据える。


「殺す、よくも、俺たちを、殺したなぁァァァッァアア!!」


 ミコトの顔面に、ジェイドの拳が突き刺さった。


「憶えているか、最初に会った時のことを!? ははっ、惨めに泣き叫んで、許しを請うて、最高の反応だったなぁ! 拷問していて、凄まじく楽しかったぞ!! 恨んでいるだろう? 憎んでいるだろう? ――だからッ、俺をォ、憎愛しろォ!!」


 ミコトの首に、ジェイドの指が食い込む。

 強力な握力で、首を絞めているのだ。しかし、ミコトの表情に苦悶はない。表情を変えることもしない、無。


「俺を殺したお前を、俺は憎愛する! お前を甚振った俺を、お前は憎愛しろ! 愛せ、愛せよ、愛してくれぇ!!」


「あい……なんて、知らない」


 ぽつりと、掠れた声で、ミコトが呟く。目を閉じる。

 そして目を見開いたとき、瞳は爛々と、血色の輝きを放っていた。


「――俺は、お前を殺す」


 そして、一個の命が終わり。

『再生』する。


 ――『黒死』が、ジェイドの四肢を殺した。



     ◆



 両足両腕がミイラのように枯れる。カラカラに乾燥し、脆くなった四肢が、ばきばきと崩れていく。


「ぁ……?」


 もがくこともできず、地面を転がるジェイドに、ミコトが跨る。

 ミコトの顎門が、ジェイドの肩に喰らい付いた。


「あぐはっ、ああああああああああああ……っ!?」


 絶叫と共に、ジェイドの『顔』が変わる、変わる、変わる。

 読み取るのは、ミコトの残留思念。クロミヤミコトを怪物足らしめる精神構造が、メレクに新たな『顔』を与える。


「ミコト 死 ない  から、 し ね」


 サーシャの『顔』が、ミコトに我慢を強いる。


「   どうせ生 返る だし、後回 でい しょ」


 レイラ・セレナイトの『顔』が、ミコトに苦痛を強要する。


「無限 命 あ 者より、たっ 一つし ない を優先  の 当然 」


 グラン・ガーネットの『顔』が、ミコトを蹴落とす。


「テメ のせい オーデ 死 だ」


 ラカ・ルカ・ムレイの『顔』が、ミコトを睨み付ける。


「先 言って  れば、無駄死 する   なかった に」


 オーデ・アーデ・ムレイの『顔』が、ミコトのせいだと責め立てる。


 変わる、変わる、変わる。

 ぐちゃぐちゃに、分解し、再構成され、『顔』が移り変わる。


 どこまでも貪欲に、ミコトの反応を、愛を求める。


「尊の ミコトの お前の せい せ いせ い ィ! お前がっ、死ねばぁ、よかったのにィィ!!」


 これこそが愛なのだ。

 真実の愛とは、こういうのを言うのだ。


 愛のためなら、なんだろうと切り捨てられる。

 愛のために、なんであろうと殺し尽くす。


 誰も失いたくないという自愛と、自己本位な自己犠牲。

 周囲の人間の苦しみも理解できず、死と生の境界線を彷徨い、足掻き泣き叫ぶ。


「私は見つけた! やっと俺は見つけた! これこそが愛なのだと、僕は確信した! 素晴らしい、ぼくは感動した! なんて美しく無残で惨いのだろうと、わたしは慈しむ! ああ、これこそが愛なのだ、やっとオレは見つけたんだ!!」


 この人間になりたい。

 真実の愛を手に入れたい。

 クロミヤミコトの自己を、『顔』を手に入れたい。


『顔』が変わる、変わる、変わる。

 白髪混じりの黒髪へ。孤独に苦しむ黒い瞳へ。中性的な顔立ちを、恍惚とした歓喜に歪めて。


 ――クロミヤミコトを理解する。


「嗤え! 嗤え! 嗤え! 死ね! 殺して! 守って! 死んで! 殺されて! 喰って! 奪って! ケキッ、あぎ、あぎひゃ、あぐぐぐげあかかはははあぐうぇ、おうぇぇぇ、あぶぶぶぶっべばばばっばらあふぶかけ――――、…………」




 メレクの死因は、ミコトの顎門ではなかった。

 そもそも、ミコトの意思によるものではない。


 メレクは狂死した。

 クロミヤミコトを理解して、糞尿垂らして泣き叫び、死を謳いながら、嗤って死んでいった。


 クロミヤミコトの『顔』のまま、最後まで自己を手に入れることができないまま、メレクは幸せそうに心の臓を止めた。






偽装魔術『ケムダー』


使い手:メレク(筆者のお気に入り)

分類 :身体干渉系統・無属性。

効力 :残留思念を読み取り、『顔』を変える。


 通常魔術も使える、無属性魔術師の例外。レベルはそのときの『顔』に準拠。

 魔術だけでなく、体術も偽装できるが、体に身に付いた経験値がゼロなので、本人より大きく劣る。


 無属性魔術、神級魔術、使徒の能力は偽装できない。

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