↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶と再開の物語  作者: 京風な魚
生の七欠片
PR
20/20

一つの昔話

 俺には兄がいた。今でも尊敬してるよ。そんな兄貴には夢があった。医者。になることだったんだ。この上なく立派な夢だと思う。もちろん俺も応援してたさ。だが事件は突然だったんだ。




「それじゃ、行ってくる! アニキ、今日の受験頑張れよな!」


「おう、任せとけ。すぐにヒカルが自慢できるようなアニキになってやるからな。」



その日は受験が終わったら待ち合わせしてたんだ。もちろん俺の奢りだ。1日頑張ったアニキに労いって思ってな。


「それじゃ、お疲れ様!! かんぱ〜い!」


「かんぱ〜い。いやぁ疲れたね。覚悟はしてたけど、まさかこんなに疲れるとは。」


「それでもアニキはやり遂げたんだろ? 最高じゃんか!」


「あぁ、そうだ。俺はやり遂げた。やり遂げたんだよ!」


そう言うと、アニキはコーラを一気飲みした。俺はこれ以上コーラを美味そうに飲む人間を知らない。ずっとこんな日々が続くんだろうな。と、勝手に思っていた。


「よし、それじゃ帰って祈祷でも捧げるとするか」


「アニキなら受かってるって。大丈夫だよ。」


「そうだといいんだが。」


そんなこんなで帰り道を歩いてた。そしたら前から自転車がこっちに突っ込んできてな。アニキは轢かれたよ。俺を庇ったせいで。





「アニキ! 大丈夫か?」


「ん? あぁ、大丈夫だ。痛みはもうねぇよ。すぐ治るさ。」


 アニキは指をやられてた。包帯がぐるぐる巻きになっていて、正直痛々しかった。

だが、その頃の俺は安心していたところもあった。入院できたってことは治してもらえるってことだ。そんな甘い考えをいつまでも持っていた。




 だが、その日はついぞ訪れなかった。アニキの指は不自由になってしまった。

 アニキが家に帰った時、家の壁には合格通知書が貼ってあった。当然だ。家族が医者になれるんだぞ。喜ばない方がおかしい。だが、アニキはその紙を力が入らない指でくしゃっとして、そのままゴミ箱に投げた。アニキは医者の夢を諦めた。俺のせいで。





「まぁ、こんなところだ。それがあったから諦めるやつを2度と見たくなかったんだ。分かってる。身勝手だよな。」


「いや、ヒカル。私は君のことを身勝手だなんて思わないさ。むしろ誇りに思う。」


 こいつは俺の話を聞いていたのか。俺に誇れる要素なんて無いんだ。分かるだろ。俺のせいでアニキは生きる目的を失った。全部俺のせいなんだよ。


「分かってんのか? アニキが夢を諦めたのは俺のせいなんだよ! どこに誇れる要素があるってんだよ。一回言ってみろよ!」


「話を聞いてくれ。ヒカル。」


「全部俺のせいなんだよ。俺の…俺の!」


そう言った瞬間、頬に鋭い痛みが走った。前を向くと、ダストが体を震わせていた。


「一回話を聞いてくれ。ヒカル。確かに、私の言葉選びが悪かった。それは謝ろう。だが、一つ聞かせてくれ。ヒカルのお兄さんは君のことを恨んだか? 君のことを殺してやると考えたことがあったか?」


 退院の次の日の朝、アニキは俺を出迎えに来てくれた。別に、体育祭だとか文化祭があったわけじゃない。ただ、いつも通りの学校だ。それなのに。


「行ってらっしゃい。怪我、するなよ。」


と心配してくれた。俺はそのアニキの顔が眩しすぎて、直視できなかったんだ。だが、今なら分かる。その顔は、きっと。いつもと変わらない笑顔だったんだ。


 なぜだか急にダストを見る目のピントがぼやけてきた。それどころか、頬に温い水が伝ってくる。俺はそれを拭いて、ダストに言い放った。


「一つって……お前二個聞いてんじゃねぇか。

ありがとな。」


「いやいや、当然のことをしたまでだ。」


そう言い放ったダストの顔は、あの頃の笑顔に似ていた。

ヒカルの過去はどうでしたか?

良かったら感想お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。