一つの強くなる方法
「大丈夫か? アタシが逃げた後になんかとんでもないデカブツ見えたが。」
帰って早々リスタに詰められた。詰められたというより心配って感じだが。
「あー、それなら大丈夫だ。もう討伐済みだからな。」
「すごいな! 誰が討伐したんだ?」
「あーそれならここにいるアートが……」
「あーー!!! 何も聞こえません! あとヒカルさん! ちょっとこっちに来てください!!」
「おーなんだなんだそんなに捲し立てて。まぁ分かった。アタシはここで待ってるからな〜。」
「あの。私はリスタさんの前ではひ弱で、まだ何が出来るのか不明なんです。それなのに私があんなデカブツを単独討伐したと知られてしまっては、あなただけに伝えた意味がないんですよ。分かりますか?」
「あーもう分かった分かった。すまんすまん。」
「今後は二度と同じことをしないように。」
「はいはい。分かりましたよっと。」
アートがこんなにイライラしてるの初めて見たな。と言ってもまだ出会って1日も経っていないのだが。というか俺がこのゲームの世界に来てからまだ1週間も経ってないんだよな。そう考えると長いな。多分これがRPGだったらここまでストーリーを進めるのに1時間もかからないんだろうな。
ヒカルは悩んでいた。寝床問題はアートの家に泊まらせてもらえることになったから解決したのだが、ヒカルの中にある根本的な問題は解決していない。それは"どう強くなるか"だ。
ヒカルの中では二択に絞れている。それは“拳"を強くするかそれともヒカルにしかないセーブロードの有用な使い方を知るべきなのか。という感じになっている。
「なぁ、アート。俺ってどう強くなれば良いと思う?」
「急になんですか。お風呂上がりって私の安らぎの時間なんですけど。」
「あぁ、すまない。別に後でいいんだ。」
「…………いいですよ。話してください。」
「俺はな、リスタのために強くならなきゃいけないんだ。」
ヒカルは自分の中にしまって隠してた事実を全てぶちまけた。アートは表情こそあまり変えなかったが、ヒカルの話をしっかり聞いていた。
「すいません、それって私がいてもどうにもならないんでしょうか。」
「あぁ、多分どうにもならん。あの時そんな……リスタさん……どうしてあなたが! って聞こえてな。その後に仲間が増えることは分かってた、多分それがお前なんだろう。」
「私にしては中々人間性がありますね。まぁそれはそうとして、光さんが強くなる方法ですよね?」
「そうだ。それが本題だ。俺の中だと"拳"を強くするかセーブロードを鍛えるかなんだが。」
「まぁその二つが安定でしょうね。試しに拳とやらを見せてください。」
「あぁ分かった。」
ロックフロッグを倒した時を思い出せ。あの全能感。俺がこの世の全てみたいな感じのあの全能感。
ヒカルの腕から拳の能力が発現した。アートはそれをまじまじと見つめている。アートは中々の美人だ。ヒカルだって一人の高校生だ。少しの恥じらいを覚えていた。
「ど、どうだ? 2回目にしてはいいもんだと思うんだが。」
「はい、分かりました。私には光さんのセーブロードとやらの力が理解できていないので拳の方を鍛えることにしましょう。」
まぁ正直セーブロードで強くなるってどうやればいいんだかってなってるからな、俺。
「まず"拳"という属性について理解しましょうか。拳というのは比較的自由な属性です。光さんのように腕を2倍にすることも出来ますが、私が今まで見てきた拳の人はこぶしを肥大化させて討伐を行っていました。」
「ほうほう。つまり、俺にもまだ能力を増やす余地があるってことか?」
「まぁそうなりますね。あなたの想像力が持つ限りは。それで強くなるために手っ取り早いやつを思いつきました。」
少し間が空いて、アートは無抑揚に俺に伝えた。
「ロフォス様の伝記を読み漁りましょう。ロフォス様の力をそのままパクるんです。」




