第006話 恐るべきレンリート家
祝賀パーティーでは元アデール王国の主だった者達で言うと東部ブラン侯爵派閥と南部サルマトール侯爵派閥に西部ベルピュート辺境伯派閥と言った者達が参加していた。
「ビアンカ姫様。お久し振りでございます」
南部サルマトール侯爵派でアルタード伯爵家の令嬢マーブルは父親と共にレンリート王家に挨拶に来ていた。
父親がマーブルを連れて来たのはサルマトール侯爵の意向だ。戦争では他の主要派閥と違い領地に引き籠もって活躍が出来無かった為、学院でアイリスの先輩として交流があったマーブルに声が掛かった。
アイリスがビアンカやリアースレイ精霊王国に非常に大事にされている事はサルマトール侯爵も誘拐騒ぎの時に見知っていたのだ。――因みにビアンカのお姉様呼びはマーブルがアイリスにお姉様呼びさせていた事から始まっている。
「ええ、久しぶりねマーブル。元気そうで良かったわ」
「まあ私は南部に引き込もって居ただけですから」
「アイリスちゃんには会ったのかしら?」
「いえ、王族の方々に囲まれている様なので」
そう言ってアイリスの居る方を見るとメメントリア王国の王族、タヒュロス王国の王族と公爵家、それにカントラス王国の王族がお祝いに来ていてアイリスはその中心で囲まれていた。
「凄いですね。あっという間に我が国を制圧して、他国との国交までしてしまうなんて」
「――そうね」
主に王族の女性達に囲まれているアイリスにジト目を向けて答えるビアンカ。
ドラゴンにユニコーン、リアースレイ精霊王国からの大巫女扱いと訳の分からない騒動を次々と引き起こすアイリスに比べればこんなパーティーなんてお遊びの様なものだ。
ビアンカがいきなり王族の姫として祭り上げられても自信を喪失させる事も驕り高ぶる事もなく堂々としている様は、本人の預かり知らぬ所で周囲に王女としての資格ありと一目置かれる事となっていたのだが。
パーティーに参加させられると聞いてちょっと憂鬱だったけど知ってる人達が囲んで来てくれたので安心してお菓子を食べられる。参加して良かったな。
「アイリスちゃんも来てたのね。――良かったわ」
「もぐ、ん、――マリアンヌ様?」
アイリスにタヒュロス王国公爵家のマリアンヌ様が話し掛けて来た。後ろに女の人達が付いて来ている。母親の……『ユリアンヌなのじゃ』も一緒だ。
タヒュロス王国はレンリート王国が建国されて正式にリアースレイ精霊王国と国交を結ぶ事になった。それによって飛空挺が往来する様になり今回はそれに乗ってレンリート王国の建国パーティーに参加していたのだ。
「実はアイリスちゃんの美容魔法の評判が良すぎてね? 無理が無い範囲で良いからまたお願いしたいのよ」
「ん」コクリ
俺を見てホッとした様に話すマリアンヌ様。どうやら王族の人達からもお願いされていて困っている様だ。そこまで評判になるモノなのかね。
気まずそうに頼み込んでくるけどマリアンヌ様にはアデール王国のビアンカお姉様のお屋敷で何度も美容魔法を掛けているしビアンカお姉様とも仲良しだったからな。お金にもなるし良いだろう。
『またコヤツは勝手に……、怒られても知らんのじゃ』ボソッ
メメントリア王国のスカーレット姫様はマリアンヌ様と同じくアデール王国でビアンカお姉様の同級生で、ビアンカお姉様のお屋敷で何度も会っている。
メメントリア王国で妹さんやお母さんの治療もしてあげたし、割と仲が良いと思う。
「アイリスちゃん久しぶりね。元気にしていたかしら?」
「ん、……元気」
「おっ、お姉様。私もアイリスちゃんに挨拶したいですわ」
そう言って此方に歩み寄って来るのはスカーレット姫の妹のコクリコット姫だ。難病に掛かっていたけど俺が治したんだよな。すっかり元気になった様だ。
『ネネェも治したなのー!』
『む、リリィもなのじゃ』
うん、そうだね。
王様と王妃様も来ていて、レンリート家への挨拶を終えてから俺の所に挨拶に来た。
揃って頭を下げられても「んっ」としか言えないよ?
『それはどうなのじゃ?』
『もうちょっと頑張るなのー』
カントラス王国からは王妃様と4人のお姫様と1人王子様が来ていた。見知っているのはビアンカお姉様と同年代くらいお姫様と5、6歳くらいのお姫様。後は王子様だね。
『第2王女アルトレイシアと5、6歳くらいのが第4王女マドレイシアじゃの。王子の方は第3王子のレグラントスなのじゃ』
お姫様はお城のパーティーでお菓子をくれたんだよな。
『お主の記憶そこだけ?』
「私ダンス頑張ってるの。今ならもっと踊れるから後で踊りましょ?」
「……ん」コクリ
マドレイシア様がやる気だ。そう言えばダンス踊ったっけ。ぼんやり覚えてるよ??
どうやら城での俺とのダンスが不服だったらしい。俺の所為かな?
『心無い者達が笑い者にしようとしとったからの』
俺のダンスも笑われてたのかな?
『……他の者等からは微笑ましいモノを見る様に見られておったのじゃ』
まあ、マドレイシア様は5歳くらいだしなぁ。
『いやお主も同じ様に見られておったぞ?』
何で5歳のマドレイシア様と同じ様に見られるんだよ。
「ふふっ、君と踊る為に僕も随分マドレイシアの相手をしたからね。是非とも相手をしてやって欲しい。――ついでに僕ともね?」
キラッとしたウインクを飛ばしてくる王子様。相変わらず無駄にキラキラしてるな。妹思いなのは良いけど何で俺とも踊りたがるかね?
『妹をダシに寄って来ただけだと思うがの』
『主を女の子と思って口説いてたなのー』
意味が分からん。所詮精霊か、節穴共め。
それにしてもやっぱり皆んな美容魔法が好きなんだよな。お菓子を食べていると次々と女の人が話し掛けて来て美容魔法の話しをしてくる。流石にマドレイシア姫には早いと思うんだけどね?
「女の子に囲まれて楽しそうね? アイリスちゃん?」
「もぐもぐ、――ビアンカお姉様」
ビアンカお姉様が来てくれた。これで周りの人の対処は任せて良いよね? やっとお菓子に集中出来る!
「――お菓子の食べ過ぎよ? 今日はここまでにしましょうね?」
「んひぇ!?」驚愕
相変わらず皮肉も通じず笑顔を向けてくるアイリスに、ビアンカは無慈悲な一言を放つのだった。
そんな様子を遠目で見ながらレンリート王国で北部に男爵位を得た元近衛大隊長官ガルーダと元暗部の長官ワイデは今後の展望について話していた。
「一時的にでも治安が乱れるかと思ったが、それどころか皆が明るく前向きになっている様だ」
「あっという間に周辺諸国と国交を結んだからな。民にもそれで当分戦争が起きないだろうと伝わっているのだ」
「だがレンリート家本国の人間が来ていないのは気掛かりじゃないか?」
「フォーシュレーグ王国じゃ辺境伯に陞爵されて長男に引き継がせ、次男は第3王女と婚約して伯爵位と隣りの領地を得るそうだ。向こうでの地位を磐石にしつつ此方での権力の掌握を進めているんだろ」
「全てはレンリート家の掌か、恐ろしいモノだな」
「ああ、――実に頼もしい」
2人共旧アデール王国の愚かな王家が無くなる事を喜んでいた。
そして新たな自国の王家が政略に長け、民心を得る事も忘れないでいる。この王家なら民を蔑ろにはしないだろうと乾杯をしていた。
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