第002話 幕間 グランツ、魂の叫び
「「「「「レンリート! レンリート! レンリート! レンリート! レンリート!」」」」」
「「「「「新国王陛下ばんざーい! ばんざーい!! ばんざーーい!!!」」」」」
レンリート・ウル・グランツは王都民の大歓声を受け白目になりそうになりながら妻のエウレカと共にアデール王国の王都へ、大軍の護衛を引き連れて入って行った。
なお大軍はパレードをさせる為に王都前で待ち構えていたレンリート伯爵領軍である。――当然シャルロッテの差配だ。
「こっそり入られたらパレードにならないわよ」
「いやパレード自体を望んでないんだよ!?」
レンリート夫妻は旧アデール王国王都で民衆から新国王として手厚い歓迎を受けて王城へ入って行った。既にグランツは長旅以外の疲れで疲れ切っていた。
因みにシャルロッテはレンリート伯爵領と旧アデール王国の領境から飛空挺を使ってグランツ達を連れて来ようとしたのだが、カントラス王国の商工ギルドでアイリスが居ない事が理由で飛空挺の使用を断られていた。
(まあグランツが旧アデール王国を治めればリアースレイ精霊王国の再進出を検討すると約束してくれたし、最低限仕事は出来たと言えるけど)
やはりアイリスが居ないともどかしい。今はビアンカとフォシュレーグ王国に戻っているけど何とか呼び戻したいと改めて考えるシャルロッテだった。
「この国の名前はレンリート王国で良いかしら?」
「俺の話し聞いてる!? って言うかいきなりブッ込んで来たなシャルロッテ!!」
「国名は早く決めて欲しいのよ」
「いや先ず国を興す事を望んでねえんだよ!? 自国(フォシュレーグ王国)と揉めるだろ!!」
「何を今更、その為のエミリアーナ姫でしょ? 上手く使いなさいよ」
「不敬が過ぎるだろぉおおおおお!!?」
「貴方も国王でしょ」
「まだなってねえわ! て言うかなるつもりもねえわ!!」
「既にカントラス王国との同盟の話しも進んでるし、メメントリア王国、タヒュロス王国との同盟案も作ってあるのよ。貴方はフォシュレーグ王国の高位貴族だからフォシュレーグ王国との関係も友好的になると思われているの」
「思った以上に話しが進んでる!!?」
「民衆の歓迎はそう言った周辺諸国との関係改善によって平和が築かれる事への期待なのよ」
「期待が重い! て言うか俺が断ったらどうする気だったんだよ!?」
「断らせないわよ。と言うか断れないでしょう? もし断れば周辺諸国と泥沼の戦争、旧アデール王国領の削りあいになるわよ? 貴方も最前線で巻き込まれるのよ?」
「なっ、何でだよ!?」
「はぁ、……アデール王国は政治も軍もバラバラなのよ? そんな領地を放っておいたらアデール王国の残党にカントラス王国、そしてフォシュレーグ王国が進軍するでしょうね」
それは分かる。支配者の居ない領地なんて放っておけば敵対勢力の手に渡るし、何より自分のモノにしたいと考えるのが普通の王侯貴族と言うモノだ。
「泥沼になってくれば周辺の中小国家も動いてきて更に混沌化するでしょうね。――その際領境にある貴方の領地も矢面に立たされるのはのではないかしら?」
そこにルードルシア教王国ラージヒルド商業王国が加わって一体どれだけの血が流れて、どれだけの時間を掛けて、どれだけの領地を国が得るのでしょうね?
(楽しそうに言いやがって。だが自国自領の事を考えれば確かに息子達の事もある。――これは受けるしか無いのか?)
「それにしてもカントラス王国とは良く同盟を進めたわね。上手く行くのかしら?」
俺が重責に胃を痛めているとエウレカが口を挟んできた。
確かに、カントラス王国はフォシュレーグ王国と同規模の王国だ。アデール王国が実質フォシュレーグ王国に吸収される(様に見える)のをただ指を咥えているとも思えん。
「当初はカントラス王国の重鎮達もカントラス王国内の教王国商業王国の連中も猛反発したらしいですね。――でもアデール王国の内乱を先導したのがその教王国商業王国である事が暴露されて流れが変わったの」
ルードルシア教王国ラージヒルド商業王国は否定していたが、ラージヒルド商業王国が飛空挺を奪ったのをアデール王国の愚王が宣伝していたのだ。それがカントラス王国の耳にも入ったのが決定打となった。
他国を戦乱に巻き込んで弱らせ、支援と称して国を乗っ取る気かと国民の多くから批判が出る事になったそうだ。そしてルードルシア教王国ラージヒルド商業王国の声が小さくなった隙に同盟の話しを押し進めたのだ。
――まあどうせその噂の出元はシャルロッテだろうがな。
「……しかし死んでも他国を混乱させるとか、流石は愚王と呼ばれるだけあるな。あの突撃姫と並び称されるだけはあるんだな」
「…………貴女」
「ふふっ、エミリアーナ姫の耳に届かなければ良いですね?」
「――っ! シャルロッテ言うなよ! 絶対だからな!? フリじゃないぞ!!」
思わずボヤいてしまったが、他国の愚王より先の迷宮の事とか間近に迷惑を掛けられた突撃姫ことエミリアーナ姫の方が俺にとっては災害だ。――出来ればもう関わりたくない。
――愚王はもう死んでるしな。
そして国名はレンリート王国となった。これからの様々な軋轢を考えると本当に胃が痛い。
だがエウレカはご機嫌だ。リアースレイ精霊王国と国交が出来れば化粧品に宝飾品、様々な物が直接取り引きで手に入る様になるのだ。
その上アイリスを囲い込めば美容の魔法も受けられるのだからそれも当然だろう。
今も何時アイリスをコチラに呼ぶのかシャルロッテに詰め寄っている。俺には出来ない所業だ。
「まだビアンカお嬢様の護衛期間中ですから、一時的に呼ぶ事は出来るでしょうが、……定住して貰う方が良いんですよね」
「そうよね! 一緒に住むのも良いわよね!? 城に幾らでも部屋なんて余っているんだし!」
「あの子の機嫌を損ねてはなりません。ビアンカお嬢様には心を許しているそうなので、ソチラから色々と話しを聞いて外堀を埋める様に注意深く懐に入れるのが良いでしょうね」
エウレカは楽しそうに、シャルロッテも実に楽しそうに話してるが俺は全く楽しくない。
あの謎生物とシャルロッテが組む事になるんだぞ? エウレカもビアンカもシャルロッテ側だし味方がいねえぞ!? 俺の胃が破壊される地獄の未来しか見えないんだよ!!
(何故こんな事に! シャルロッテめ! 俺は国なんて起こさずに平穏に生きたかったんだぞぉおおおおお!!!?)
レンリート・ウル・グランツ、魂の叫びであった。
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