登校
翌日は登校日だったので、私たちは早く寝床についた。私のベットと、ルコのベットの間にはフワフワの布団が敷かれ、そこに、キアがいた。彼女は、思いのほか私よりも早く寝てしまった。護衛としてそれはどうなのだろうと思ったが、少し、私がトイレで立ち上がると、キアが目を開けたことで、彼女は、プロなのだと恐れ入った。
彼女は、寝巻が無いと言っていたので、私のものを貸していた。そして、着替える時、ルコも彼女の見事な尻尾を見て、物珍しそうに遠くから触りたそうに眺めていた。私から、キアにルコにもその黒くて美しい尻尾を触らせてあげてとお願いすると、ルコが最初は首を左右にブンブン振っていたが、キアがルコの前にお尻を突き出して左右にその尻尾を優雅に振ると、ルコはその魅力的な尻尾に負けて、恐る恐る触れていた。そこからルコとキアとの間にあったぎこちなさも軽減され角が取れるように滑らかな関係になっていた。
私は、それで無事にキアをここに迎え入れることができたと思った。突然でルコには申し訳なかったが、私はどうやら、護衛をつけないわけには周りが許さないようで、けれど一緒にお泊りできるお友達が増えたのは単純に嬉しかった。
三人で話しているとあっという間に時間が過ぎていった。私たちは、ほどなくして眠りについた。
そして、夜が明けた。
***
翌朝、私たちは、一通りの身支度を整えると、女子寮を出て、校舎へと向かった。
私が眠っていた間に、夏休みはとっくに明けており、九月も後半に差し掛かっていたようで、また、みんなに会えるのが楽しみと同時に心配をかけたことを謝らなければと、複雑な気持ちもあった。
ルコは許してくれたが、他のオルキナや、アガットはどうだろうか?彼女たちは、私のあのレースを見てどのように感じたのだろうか?そう考えると、教室へ赴く足取りは少しだけ鈍いものになった。
秋の空は夏の空に比べて高く感じ、それでいてどこまでも澄んでいた。
登校する周り女子生徒たちは、すでに季節に合わせて、丈の長い冬用のスカートを履いている人たちが大半だった。ルコもそのひとりで、キアはもとから長いスカートしか履いているところをみたところがない。
ただ、そのなかには、この肌寒い季節を認めないかのように、まだ夏用のスカートの女子生徒たちもいた。夏用のスカートは、どちらかというと冬用の丈の長いスカートよりも女子たちには人気があった。あと男子にも。そのため女子の中には、年中、夏用の短いスカートを履く者までいた。ただ、そう言う女子は、たいていお高いストッキングを履いて寒さ対策はしているのだが、それでも、寒いものは寒い。決してマネできるものではないのだ。
ただ、私はというと、そこら辺のオシャレを完璧におさえていた。夏用のスカートの下に体操服の長ズボンを履くという可愛さと防寒を同時に満たす完璧な制服の着こなしに、私は満面の笑みで勝利を確信する。
しかし、登校していると、周りの女子たちが私を見て、ひそひそと話しては小さく笑っていた。
欲張ったのがいけなかった。どちらの派閥にも入らなかった私は浮いてしまったようだった。
「ねえ、ルコ、この格好可愛いくないのかな?」
私は隣を歩いていたルコに尋ねた。
「え、とっても可愛いと思うよ」
ルコは、私のとっさの質問にも間を置かず間髪入れずに答えた。
「そうだよね…」
ルコがそう言うのなら何も問題ないと、私は、堂々と寮から校舎への通学路を歩いた。
女子寮から校舎に入るのは、各学年の教室がある東館が一番近かった。私たちは、寮から歩いて十分程度かけて校舎前についた。
「ごめん、少しだけ外すけどいい?」
校舎に入る前に、キアが言った。
「いいけど、何か用事?」
「ちょっと、職員室に用があるから、先にクラスに行ってて」
キアはひとり東館の一階の入り口から、校舎の中庭に抜けて、そこから右に曲がって本館を目指して歩いていった。
「何かあったのかな?」
ルコが言った。
「さあ?」
キアのその行動の真意は読めなかったが、とりあえず私たちも二階にあった自分たちのクラスの、二年朱雀組の扉を開けるのだった。




