エピローグ
初めましてです。小説自体初心者で駄目なところも多いですが、楽しんでいただけたら光栄です(誤字脱字ありかも笑)なんだこれは。と思うところもあるかもしれませんが、成長できるように頑張るので温かい目で見守ってください!
頭の中で焼き付くようにくっきりとした映像流れる。
「お前ならきっとヒーローになれるさ。」
「ほんとう?」
「ああ、今を逃げずに戦っていればきっと自分の信じた"それ"になれる。」
視点が変わる。
「――君はそのまま真っ直ぐな方がいい。変わらないでいいんだよ。」
また視点が変わる。
だがこれは前の2つとは違い、映像の縁を黒い何かがなぞり、映像もノイズが走っていて、いびつだ。
誰かが嗚咽を漏らすようなか細い声で言う。
「わたし………私は幸せだったよ。だってこんな世界で初めて生きたいとおもえたんだもん。ありがとう―――」
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薄暗く、深い。そんな深淵のような地下で少年は呆然と立ち尽くしていた。
周りには椅子が八つ、等間隔に円をつくって置かれていて、白色の光が椅子の輪郭をなぞるように縁を彩っていた。
七人が座っていたのが辛うじて見える。その円をコンパスで描いたとしたら針に位置するだろう場所に白髪の男が立っていて何やら少年に語りかけている。
「その左手はあらゆる世界をつなぐ、希少なものだろう。だから、是非僕たちにそれの研究をさせてほしい。駄目かな志穏君?」
少年、志穏は自分の左手を見る。手のひらに碧色の五芒星が刻まれていた。痛々しく見えるが、まったく痛みは感じない。
その白髪の男はにやりと笑いながらどうかな?とせかす。
黙って聞いていた志穏は反論に転じようかと動くがそれより先に少女が反論した。
「あなた達の玩具にはさせない。ましてや実験なんて、志穏の世界になにをするつもり?」
「なんのことかな。その世界と友好関係を築きたいだけなのになぁ。そんな勘ぐられると流石に傷つくよ。」
その男は彼女に微笑む。その笑顔はどこか腹黒い人間像を思い起こさせ、頬の上にある鋭利な切り傷は偽物のようにも見えた。
「彼の人生を政府が干渉する権利なんてないわ。」
「普通の人間なら、そうかもね。けど彼は普通ではない。」
どことなく裁判のような雰囲気で話し合いは進んでいる。俺は悪い事なんてしてないのだが。と志穏は苛立ちを露わにした。
どうして、いつもこんな目に逢うのだ。自分の不幸さを改めて呪い始める。
自らを呪うとは即ち諦めであった。自分が不幸な人間だ。そう自己暗示することによって、今の自分を肯定し、希望を捨てることなのだ。
志穏は腹を括り、どんなことを言い渡されても、覚悟は決めて受け入れるつもりだった。
しかし、椅子に座った七人に含まれる少女とその横に立つ黒髪の青年の二人は必死に志穏のことを今なお擁護している。俺の事なんて見捨ててしまえ。彼らには助けてもらっている感謝の裏腹、そんな風にも思ってしまう。
「志穏君はどう思うかな?断ってもこの先政府の了承がない限りこの世界で自由に生きる事なんて不可能だと思うよ。」
補足で付け足すように男は言う、黙って、俺たちに従え。簡単に訳すとそういう事なのだろう。
そう言われていると気付くと恐怖が全身を駆け巡る感触がした。
勝手な解釈にも関わらず、なぜ口に発してもいない言葉が頭の中で響き、威圧感をもたせるのか分からない。
だが、改めて実感した。自分の生死が今ここで問われていることに。
諦めた。なんて言っておきながら死の覚悟なんてできていなかった。
怖い怖い怖い怖いコワイコワイコワイコワイこわい。
目の前に迫る死に際し、顔が引き攣れ、激しい頭痛でクラッとよろける。ちきしょう、俺があんなもん見つけなければ。
黒髪の青年は大丈夫か?と肩を貸す。だが、なんだか力を借りてばかりだと申し訳なく思えてすぐにありがとう、大丈夫だ。と肩を引き戻した。
少女は志穏とは対照的に熱を入れて、口論を展開していた。そして、志穏に向かって言う。
「志穏あなたは死にたくないでしょ?この世界で生きていきたいでしょ?なら私たちに着いてきて!」
その声は先ほどまでとは明らかに異なる力強さを持っていた。地下でその声が反響し、あまりの迫力にど肝を抜かれた。
すこしの間黙るが、やはりまだ志穏は死にたくなかった。
「あぁまだ死にたくないな。」
その言葉を聞くと黒髪青年が場を制したように勢いづき、意見する。
「だとさ、そうなら本人の意見を尊重すべきだ。」
少し間が空く。
「以上、あなた達に首を突っ込む権利はない!」
少女は白髪青年にとどめを差すように言い放った。威風堂々としたその少女の姿からは百戦錬磨と言うに相応しい雰囲気を感じる。……強すぎる。
力を抜いた少女はどうだ?と眼光鋭く誰かの反論が来ないかと見回す。
反論する人間は一人も現れず、この地下に静寂が広がる。
これは彼女の勝ちだろう。と何もしていない志穏が笑みをこぼす。ほんとのところ情けない気持ちでいっぱいだが。
白髪の青年は志穏を睨み付け、鋭い視線をむける。志穏は身震いした。二人の言葉を聞いて気にでも触れたのだろうか。それとも、二人任せにしていた志穏を呆れたのか。だが、もとの笑顔に戻りそっかー。と開き直るようなテンションで言う。
「確かに、二人の意見も一利はあるね。個人の人生だ、一人一人のことをとやかく言う権利はないかもねぇ。」
白髪の青年の瞳は志穏の姿など映していなかった。おそらく、彼一人では役立たずなのだと悟ったのだろう。だから、あの二人をどう言いくるめるか。そのことだけしか考えていないように見えた。
「あなた達に頼ることはない。私は彼が自分の世界に帰るまでこの世界での生活を手伝うだけ。直に帰る時は来るでしょうし、その時まで居候させる。すべて三人でなんとかするし問題ないはずよ。」
姿は美少女だが、凛とした立ち振る舞いと同時に安易に触れれば棘が刺さる鋭さ、それはまさしく薔薇だ。流石はあの椅子に座る8人に選ばれることはあると感心してしまう。
志穏がそう感服している時、白髪の青年はそうだこうしよう。と提案した。
その瞬間、邪悪に包まれた雰囲気がなだれ込み、流れが変わったきがした。
二人もそれに気付いたのか瞳の色を変えた。
その提案とやらを絶対に聞いてはならない。そんな本能的な直感が働いたがもう何もかも遅かった。
賽は投げられた。そんなことわざがふと浮かんだのはその言葉を聞いてからだ。
「ゲームをしないか。志穏君」






