3話 シンラ先生
ーー6歳と3ヶ月。
惨劇まであと、一年六ヶ月。
「やぁユキ、今日は早いね」
「どうも先生」
夕方、俺は自宅から歩いて15分ほどの距離にある格闘家のシンラ先生の元へ来ていた。
「じゃあ今日も昨日のおさらいから行こうか」
「押忍!!」
シンラ先生は昔、王都で魔闘士と呼ばれる魔法を纏って戦う武術士をやっていたらしく。
そのため武術だけでなく魔術にも先生は詳しい。
「よし、そこで蹴りだ」
『ベシッ』
先生に言われて、俺は藁でできたサンドバッグを思いっきり蹴った。
今の感じ結構いい感じだったな。
大人相手だと歯が立たないけど、今なら10歳くらいの子供までなら全然勝てそうだ。
「うん、今の蹴りいい感じだよユキ、何だか最近気迫がいいよね」
「お、押忍」
そりゃ気迫も出るだろうよ、あと一年そこらで家族が殺されるんだからさ。
「何かあるね、この感じは」
「え?」
いやいや察しが良すぎるだろ。
どうするここで来年起こる殺人強盗の話をするか。
あと、一年以上先のことを何て伝えればいいんだ、せめて相手がどうして俺の家を襲ってくるのかさえわかれば、説得力のある事をシンラ先生に言えるのに。
「怪しいな、さっさと吐いちまえよユキ!」
「え、えっとぉ……」
ど、どうする言いたい、めっちゃ言いたい。
だけど信じてもらえなかった時のリスクがやばい。
「口籠りやがって、まぁどうせ好きな子でもできたとかだろ?」
「は、はい!そうです」
あっぶねぇ、良い感じに勘違いしてるよシンラ先生。
「だと思ったよ、俺もユキと同い年くらいの時にさ恋に落ちた事あったなぁ」
「へ、へぇ」
ま、まずいぞこの感じ。
シンラ先生の長話が始まる流れだ。
「その子に振り向いてもらうために、魔闘士目指して、一年頑張って8歳の時はじめて出場した魔闘士の武闘大会で優勝したんだっけ、懐かしいな」
え、ちょっとまて、8歳の時に武闘大会で優勝?
その話、詳しく聞きたいな。
「し、シンラ先生、8歳で優勝してるって言ったけど子供の部とかですか?」
「いや違うよ、大人も出てるちゃんとしたやつだよ」
シンラ先生は当たり前の事のように凄い話をした。
お、大人も出てるだと。
そんなだって子供と大人じゃ力が違いすぎるはずだ。
それなのにどうして。
「ユキ、お前顔に出過ぎ、なんで子供の俺が大人に勝てたのかって顔してるぞ」
「す、すみません」
「まぁいいよ、さっきの続きだけど魔闘士はセンスさえあれば子供でも大人に勝てるぞ」
「え、そうなんですか?」
「おう」
この情報は大きい。
魔闘士になれれば子供の俺でも大人に勝てる、よしこれだ。
これしかない。
「シンラ先生、お願いがあります」
「俺に魔闘士の修行をつけてください」
「ほう、なんだよユキお前も大会出て女の子に振り向いてもらおうってか」
ち、違うけど教えてもらえるならなんでもいいか。
「そ、そうです!」
「よし、それなら教えてやるよ、元この国最強の魔闘士の俺がな!」




